病室に慌ただしく患者さんが運ばれてきた。
年配の奥様、どうやら転んで大腿骨を骨折してしまったらしい。
(てっきりひとつの病室に同じ乳がん患者が集められるのかと思っていたけど、そんなことはなかった)
大腿骨骨折。おおごとだ。快復まで数カ月かかるとかなんとか。
入院中のQOLもかなり低そうなことがうかがえる。身動きとれず歩けもせず、寝返りうつのも人の手を借りないと難しい。
ただでさえ気分転換の材料が少ない入院生活、リハビリが始まるまでの数日だって寝たきりはかなりきついだろうなと今は思う。自由に動ける身でも退屈は退屈だしね。入院前はこういう気持ちや状況も想像することができなかったなあ……。
さてここで、大部屋に入るにあたり、想定してなかった事柄がひとつある。
それは「寝たきりの患者さんのトイレ問題」だ。
以下、シモの話。
救急で入院してきた奥様、幸いなことに意識はしっかりある。
ふと奥様が言った。「トイレに行きたい」、と。
看護師さんは言う。「尿カテーテルさしてるから大丈夫よ」。
しかし奥様がしたいのは大のほう。でも身動きできないので当然、おむつでしてもらうことになる。
おむつを替えるのは、わたしのベッドからカーテンを2枚隔てたベッド上だ。
なるほど、これが大部屋というものか。とわたしは思った。
食事前だろうが食事中だろうが関係なく、近距離でとりかえられるおむつ。これは仕方のないことだ。ここは病院であり、誰の身にも起こりうることであり、いわゆる「お互い様」というやつだ。
それが嫌なら個室に入ればいいわけだし。
なんというか、実際に体験してみなければわからなかったリアルがここにあった。これぞ大部屋の醍醐味。
……しかし奥様。
なかなか出なくてつらい気持ちはわかる。急におむつ使えとか言われても困るよね。
でもね、ようやく催して嬉しかったのはいいけど、実況中継まではしなくてええんや!
どんくらい出たとか、具体的な分量とかそういう情報は結構です! お通じ良好でなによりです!
うああああぁ……! 個室に入りたい……!(今更)