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「大野病院事件」
癒着胎盤を剥離して、
女性が死亡。
医師が刑事裁判にかけられる。
※福島地方裁判所平成20年8月20日判決
(判例時報2295号6頁)
前回の記事
107.裁判所判断:出血について
⬜︎ 胎盤剥離開始後の出血は、
子宮内壁の
胎盤剥離部が大部分
と認定。
⬜︎ 出血量についての認定
① 胎盤の剥離中に出血量が増加した。
② 胎盤の剥離完了時、
総出血量は、
2555mlを超えていない。
③ 胎盤を剥離した後、
出血が続き、
遅くとも、
午後3時までに、
総出血量が5000mlに達した。
④ 一方、午後2時55分に、
総出血量が5000mlに達していた
とまでは認められない。
108.死因についての争い
⬜︎ 検察官の主張
出血性ショックでの失血死
⬜︎ 弁護人(被告人側)の主張
出血性ショックでの失血死とは、
確定できない。
「羊水塞栓」や「産科DIC」で、
死亡した可能性もある。
(失血が直接の死因ではない)
109.鑑定医の結果
⬜︎ 鑑定の結果、
直接的な死亡原因は、
胎盤剥離から子宮摘出までの大量出血で、
ショック状態に陥って、
心室細動で心停止に至った
とされる。
⬜︎ 用意した輸血の使用後は、
輸血がないまま1万mlの出血あり、
血圧は低く・脈拍は高い状態が、
1時間半以上も続いた。
⬜︎ 追加注文した輸血を投与後、
一時的には回復したが、
15分後にまた悪化。
⬜︎ さらにそこから1時間、
血圧は低く・脈拍は高い状態が続き、
午後6時過ぎ、
心室頻拍、心室細動に陥った。
⬜︎ 循環血液量の絶対量の不足が、
長時間、続いたことは明らか。
⬜︎ 末梢に十分な酸素が供給されなくなり、
ショック状態から回復できず、
大量出血が原因で、
心室細動を起こして死亡した。
110.Y医師本人が書いた記録
⬜︎ 鑑定だけでなく、
Y医師本人も、
「死亡診断書に出血性ショック」
と記載している。
⬜︎ また、医師記録にも、
「癒着胎盤の剥離部からの大量出血」
「出血性ショックの急性輸血輸液から低体温になり、心不全が起こった」
と記載している。
111.麻酔科のE医師の証言
⬜︎ 麻酔科のE医師は、
「出血が持続して、
パンピング(輸液を押し入れる事)をしても、
血圧が上がらなかったので、
出血性ショックと考えられる」
と裁判で証言した。
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