谷川俊太郎著『風穴をあける』
短いエッセイや追悼文などを集めた本。
この国で生きていれば、このかたの作品は自然と目にしたり耳にしたりしている。
それでも時々本として手にしたくなる。
それなら表芸の詩を読めばいいと思うのだが、どうも詩集というものに手が伸びない。
それでエッセイや対談といった読み物に「逃げる」。
表題になっている「風穴をあける」はごく短いエッセイだった。
しかし詩に対する谷川さんの考え方が端的にあらわされていて、最も印象に残った。
その中でも特に好きなところ。
「よく詩は作者の自己表現だとか、メッセージだとか言われるけれど、そういう一面もたしかにあるけれど、ぼくはどちらかと言うと詩を、言葉を組み合わせてていねいに造られた工芸品のように考えるほうが好きだ。詩はまず第一に美しい一個の物なんだ」
心がスーッと吸い寄せられるようだ。
こうしてエッセイに逃げても面白いからついまた逃げたくなる。
でも詩も読んでみたくなるね。
読みたくなるといえば、たまに藤沢周平を読みたくなる。
『初つばめ』
期待を裏切らない。
父親用に借りた本。
中村伸郎著『永くもがなの酒びたり』
一連の小津作品で一段とファンになった中村伸郎のエッセイ集。
タイトルそのままの父は、心地よいシンパシーを感じたようだ。
僕も読んだが面白かった。
小津映画に出ていたころの端正なルックスも好きだが、こういう姿もいい。
僕は多分こういう風貌の役者が好きなんだな。
知的で、つまりユーモアと憂いを含んでいて、ひょろりと瘦せていて。
有島一郎とか益田喜頓とか。
父のためのもう1冊。
小沢昭一の、その名も『道楽三昧』
贔屓の二枚目力士・鯱の里とのエピソードなど、これも軽くて面白い本だった。
芝居もいいなあ。
来週も道楽三昧のこころだあ。