『トスカーナの贋作』という映画を観た。
大事なタイトルをシールで隠してしまうというこの店の店員の奔放な生き方は、僕もそのうちに見習いたいと思った。
それはともかく・・・
何とも不思議な映画で、会ったばかりの二人がいつの間にか15年連れ添った夫婦を演じているような、それが段々本気になって言い争うような、やっぱりそれぞれの役を演じているような、言いたいことが有るような無いような、よく分からないような、スッと腑に落ちるような映画でした。
ジェームズ役の俳優が渋くて、「いいなあ、イギリスの舞台俳優かなんかかしら」と思いながら観ていたが、あとでメイキング映像を見るとこのウィリアム・シメルという人はどうやらオペラ歌手で、映画で演じるのは初めてだったらしい。
映画の手法や演技に随分戸惑っていたと語っていたが、いやいやどうしてカッコよかったですよ。
そこへいくと主演女優のジュリエット・ビノシュの堂々たる演技は、上手すぎてむしろ擦れて見えるくらいだったかな。
まあそうは言っても、ここぞという時の輝きは流石。
なにしろさっき変換したら「ジュリエット・美の主」と出たくらいだ。
繰り返しますがなかなか掴みどころの有るような無いような映画でした。
監督の狙い通りなのか失敗なのか、それも分からない。
してみるとタイトルも思わせぶりなだけで、実はトスカーナでもジムカーナでも明日晴れるカーナでも何でもよかったのかもしれない(原題はただCopie Conformeだし)。
タイトルの上からシールを貼った店員も、実はそのあたりを心得たインテリなのかもしれない。