平山とユキコの老夫婦の話である。

でも、妻・ユキコはもういない。

平山はひとりで思い出す。

子供の頃のことやユキコさんとの生活や会話を...

 

平山夫婦は12才の年の差がある。

妻のユキコの方が年上である。

東京郊外の坂の上にある戸建て住宅を買って長年住んでいる。

二人はよく話をする。

昔のこと、今のこと、年老いていく自分たちの将来のこと。

他愛のない日常のこと、ここに深く残ること。

そして平山は誰に語るわけでもなくいろんなことを思い出す。

子供の頃のことや両親や学生時代の先生のこと...

それはちゃんとした事実に基づいた記憶か、自分で無意識に捏造したものか、

自分でもわからないが、平山は断片的に、時には詳細に昔のことを思い出す。

 

 

懐かしいような切ないような...

そんな気分にさせられた。

青臭いと思いながらも「人生って?」と考えてしまう。

長いのか短いのかわからない人間の一生。

年老いて思うのは、改ざんされた思い出と本当の思い出の入り混じった

あやふやな思い出なのかもしれない。

あの時はこうだった(たぶん...)あの時の会話はこうだった(と、思う...)

あの人はこう言った(だったような...)というふうに。

改ざんされた思い出は時には優しく、時には厳しく、

現在の自分に詰め寄ってくる。

しかし思い出が事実であれどうであれ、私たちは思い出なしでは生きていくのに寂しすぎる。

我が家も平山夫婦のように子供はなく夫婦二人だけだ。

年老いて体も自由に動かなくなった時、どんな思い出話を夫婦でするのだろうと思う。

少し不安であり、少し楽しみでもある。

 

とても良い本だった。

じっくり人生を考えることができる。

誰にでもやってくる自分の人生の終末のための...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-- 絲和 --

 

 

 

 

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