8.



昔は業績の良い会社で何より魅力的な会社だったのに···
俺は目の前にいる会長をジッと見つめながら会長が社長だった頃を思い出していた
会長が社長から退いてから経営がおかしくなってしまったのか···時代の流れに対応出来なかったのか···
この会社を買収する計画であると聞いて俺は正直驚いた
この会社を買収して解体するとかなりの利益になるのは確か
この買収話にドンヘは大喜びしている
万が一救済する会社や他に買収する会社が名乗り出たら大変だから早く進めた方がいいと鼻息が荒い
救済してくれる会社を模索していると情報も入っている
このパーティーに来た理由···それは会長に模索も手遅れだと通達する為だった
「会長···弊社は御社の借用証書を金融機関から買い取らせて頂きました
支払いが一度でも滞った場合は御社を買収させて頂く予定です」
俺を見つめる会長の表情は苦虫を噛み潰したよう
「チョン社長···もう少し時間を頂けないだろうか」
「時間?···あっても状況は何も変わらないですよ」
俺は事実を告げる
「チョン社長の会社に買収されると言う事は···」
そう言ってから会長は言葉を切り俺を見つめる
「残念ですが···」
会長にそう言うと俺を見つめ首を左右に振っている
「君のお父様ならまた違う選択をしてくれたかも知れないね
チョン社長···貴方はお父様と違って冷徹だ」
「どうも」
俺は会長を見つめ微笑みながら軽く会釈する
「会社もバラバラにして沢山の従業員を路頭に迷わせて楽しいか?···君は」
眼光鋭い視線で俺を見つめながらそう言うと会長は部下を連れてシウォンとチャンミンの方へと歩いて行く
会長は二人に声を掛けるとチャンミンに顔を近づけて話し始めた
チャンミンは笑顔で対応している
その様子を見つめながら俺もチャンミンのいる場所へ向かった
「モモ···お待たせ」
会長と話していたチャンミンに声を掛けるとチャンミンが俺を見つめ微笑む
「では会長···ごきげんよう···シウォンさん楽しい時間を有難う」
そう言って挨拶したチャンミンは俺の隣に立つ
「シウォン···モモのお相手ありがとう」
シウォンに声を掛けると険しい表情で俺を見つめた
「祖父から聞きましたよ···」
その言葉に対して俺は何も答えない
「解体しないで存続の道を考える事は出来ないんでしょうか」
そう言うシウォンを俺は見つめる
「お言葉だがシウォン···こうなってしまう前に何とか出来たはずだ
そのチャンスはきっとあったハズ
だがあらゆる策を講じたがダメだった···だから今こうして俺と話している
俺にどうこう言うのはお門違いで経営陣を責めるべきだろ
立て直せる会社であれば俺より先に別の会社が動いたと思うしね」
シウォンにそう言うとチャンミンを見つめた
「行こうか」
俺とシウォンの会話を静かに聞いていたチャンミンはシウォンに会釈し俺の隣を黙って歩く
ふと俺の手に指が触れチャンミンを見つめると指を絡めてきた
俺はチャンミンに微笑むと絡まる指にキュッと力を入れた
ホテルに戻るまでの車中はとても静か
お互い車窓から夜景を見つめていたがその間お互いの指は絡めたままだった
「お帰りなさいませ」
支配人のミノがロビーで俺たちに声を掛けてきた
「ただいま」
俺は支配人に言う
「モモ様···パーティーはいかがでしたか?」
支配人は隣のチャンミンにも声を掛ける
「見たことのない世界で···普段食べれない高級食材の食べ物もあってめちゃくちゃ食べて来た」
そうチャンミンが話すと支配人は笑いながらウンウンと頷いている
「それは良かったですね」
「そう···とても優雅な気分になれたの···ユノに感謝」
さっきまで静かだったチャンミンは目をキラキラ輝かせながら支配人と話し俺を見て微笑んだ
「チョン社長もモモ様もお疲れになられたでしょう···ゆっくりお休みくださいませ」
「こちらこそ今日は無理言ってしまった···ありがとうミノ支配人」
支配人と話しているとテミンが来て俺とチャンミンをエレベーターへと案内してくれた

「ふぅ~···」
部屋へ着くとチャンミンはハイヒールを脱ぎソファに座って脚をマッサージし始めた
「疲れたよな···お疲れ様」
向かいのソファに座りネクタイを緩めながらチャンミンを見つめる
「買ったばかりの靴で馴れてなかったからね」
苦笑いしながらチャンミンは話す
「チャンミン···シャワーして疲れ取って来たら?」
チャンミンは足の裏のツボを押したりクルクル足首を回しながら首を振っている
「僕は後でいいからユノ入って」
そう言って俺を見つめ微笑んだ
「じゃあお先」
シャワーを浴び戻って来るとパーティーで疲れたんだろう
ソファに身体を預け頭がコクリコクリと動いているチャンミンが見える
「チャンミン···」
少し身体を揺すると閉じていた眼が薄らと開く
「あ···ユノ」
ゆっくり身体を起こして眠そうな顔して俺を見つめる
「ごめん···やっぱり先に入って貰ったら良かったな」
「大丈夫だよ···入ってくるね」
ふにゃっと笑うとチャンミンはユラユラしながらバスルームへと向かう
俺は千鳥足的なチャンミンの後ろ姿をクスッと笑いながら見つめていた





次回の9話ですがBL表現あります
ご無理な方はご遠慮くださいね💦
念のため限定記事にしますのでお読みになる場合はアメンバー申請お願いします
お話の感想頂けましたら承認させて頂きます🐰

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村