冷たい風が頬を刺す。
吐き出した白い息がその寒さを物語っていた。
今日はクリスマス。
いつものような喧騒にまみれた夜とは打って変わって、
静寂に包まれた街は、雪化粧によってその景色を変えていた。
駅前広場の中心に置かれた大きなクリスマスツリー。
美しいイルミネーションに彩られたそれを、私は静かに見つめていた。
3年前、初めて彼と見に訪れた時のことを思い出しながら。
私に初めてできた恋人。不器用な人だったけれど、まっすぐで、
とても素敵な人だった。
「来年も再来年も、また一緒にこのツリーを見に来よう。」
なんて、笑って言ってくれたっけ。
だけど、それは叶わぬ約束となった。
彼はもう、隣には居ない。
実家へ帰省するために乗った飛行機で、事故に遭ったのだ。
それからというもの、私はひとりでこのツリーを見に来ている。
大きなツリーを見つめて、瞳を輝かせていた彼の横顔を思い出しながら。
突如、強い風があたりに吹き上がる。
積もっていた雪を巻き上げながら、ツリーを揺らす。
寒さに思わず体が震えた。
そんな私を、暖かい何かが包み込んでくれた。
刹那、3年前にも同じことがあったのを思い出す。
寒くて震えていた私を、彼はそっと抱きしめてくれた。
あぁ、彼が来てくれている。
私との約束を守るために。
私の瞳には涙が溢れていた。
瞳を濡らした涙が、ツリーのイルミネーションをより一層輝かせ、
これまでのどんな日々よりも、特別な夜を彩っていた。
濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。

「」→少年の人形
『』→少女の人形



「僕たちは双子」
『私たちは人形』
「僕たちは動く」
『私たちは考える』
「僕たちは殺す」
『私たちは殺しあう』
「僕たちはそノために作らレた」
『私たチはそのタめに買われた』
「殺シ、殺され、殺サれ、殺シ」
『治し、治サれ、治サレ、治す』
「永遠二、意味もナクただ殺シアウ」
『永遠に、意味モナクタダ治しあう』
「主がソウ望むかラ」
『主がそう作ッタカラ』
「僕たチハ双子」
『私タチは人形』
「僕たちハ殺す」
『私タちは殺しアう』

「『命がないのに、コロシアウ』」


私には好きな人がいる。
小学校、中学校、そして高校とずっと一緒にいる幼馴染。
誰にでも優しくて、面白くて、スポーツ万能で、かっこよくて・・・
彼は気付いてないだろうけど、昔からずっと好きだった。
何年も何年も、片思いのまま。
家が近所だから、毎日一緒に学校に行って、毎日一緒に帰って。
たまに寄り道しては、二人で馬鹿みたいに笑って。
一緒に遊びに行った事も、帰り道の夕焼けも、
私にとっては、どれもかけがえのない大切な思い出。
告白だけはどうしてもできなかった。
勇気が出なかったのもある、でもそれ以上に、
この関係がいつまでも続くのなら、それでもいいと諦めていた。

ある時、彼から相談を受けた。
好きな人がいる、と。
いつかは、いつかは来るとわかっていたけれど、
こうやって直面すると、胸が苦しい。
まさか相談されるとは思っていなかった。
相談してくれたということは、相手は私じゃないんだろうな。
痛む心を押さえつけながら、彼の相談に乗る。
「大丈夫、君みたいな素敵な人ならきっと相手もOKしてくれるよ!」
笑顔を崩さず、自分の気持ちを押し殺して。
正直今すぐにでも泣きだしてしまいたかった。
「私は君が好き、ずっとずっと昔から。」
そういってしまえればどれだけ楽だったろうか。
そんなこと言えるわけもない、そんな勇気私にはない。
私はただ、笑顔の仮面を被って、道化を演じる。
彼の役に立てるなら、それでもいい。

あぁ、でも、今までみたいに一緒には帰れないんだろうな。
寄り道したり、夕焼けの中を二人で歩いたり、
もう、できなくなっちゃうんだな。
寂しい、悲しい、悔しい。
それでも彼が幸せなら、私はあなたを諦めよう。
さようなら大好きだった人。私の最初で最後の、片思い。

・・・え?君が好きなのは、私・・・?
ずっとずっと好きだったけど、言えなくて悩んでた?
いつまでも言えずにいるのが苦しくて、お前に相談して勇気でたから告白したぁ!?
はあああああああああああああ!!!???
え!?な、え!?ちょっ・・・あの・・・!
うううううう・・・・!!
私も・・・
私もずっと好きでしたっっっ!!!!

「君は声だけの存在」

『あなたは画面の向こう側の存在』

「顔も名前も」

『年齢も職業も』

「何も知らない人」

『何もわからない人』

「だけど君はそこにいて、僕を癒してくれる」

『だけどあなたはそこにいて、私を励ましてくれる』

「君の声を聞いていると、いやなことを忘れられる」

『あなたの声を聴いていると、また明日も頑張れる』

「君の声が聴けない日は、なぜかとても気分が沈んでいた」

『あなたの声が聴けない日は、なぜかとても寂しかった』

「この気持ちが何なのか、僕は気づいていた」

『この感情が何なのか、私はわかっていた』

「僕は」

『私は』

「君に」

『あなたに』

「『確かに恋をした。』」

これまでの人生、他人というものには一切興味が持てなかった。
意味もなく群れ、動物のように騒ぎ散らす醜い馬鹿共。
その程度の認識でしかなかった。
恋愛となれば尚のこと。愛というものが私には到底理解できなかった。
戯れに言い寄ってきた女と付き合ってみたこともあった。
自分勝手で、面倒くさい、何が楽しくて付き合いたいなどと抜かしているのか。
あんなもの足枷でしかない。

だが、大学に入って出会った女性が、私の人生を変えてくれたのだ。
同じ学部の先輩で、綺麗な黒い長髪に、凛とした佇まいの、他の下等な
人間とは違う、とても素敵な女性。
それは天使の気まぐれか、はたまた悪魔の囁きか。
いや、そのどちらでもないだろう。
まさに、一目惚れだった。
私以外の誰の目にも触れさせたくない、私以外の物にはさせない!
・・・あぁ、これが、これこそが。
「愛」か・・・!!

それからのことは君たちもよく知っているだろう?
彼女は私の初めての「コレクション」だ。
その後13件の殺人もすべて私がやった。
彼女たちはいい作品だったろう。
当然だ!この私が選んだコレクションなのだからな。
私は私の「愛」を見つけたのだ。
彼女らを私だけの物にする。独占欲。それこそが私の「愛」だよ。
それを見つけることができただけでも、素晴らしい人生だったよ。
さて、警官諸君。私の死刑執行はいつかね?
 

小さい頃は、私は空が飛べると信じていた。
鳥のように、飛行機のように、大空に翼をはためかせ、
何者にも縛られずに、誰よりも自由に。
いつからか、そんなものは幻想だと思い知らされ、そして記憶の彼方に
消えてしまった。
親からは出来損ないと罵られ、友人だと思っていた人たちからは、
気持ち悪い、お前なんか友達じゃないと嘲笑われ、
私はなんで、この世界に居続けているのだろうと、そう考えるようになるのも
不思議ではなかった。
深呼吸をし、空を見上げる。
ふと、小さい頃に空を飛べると信じていたことを思い出した。
こんな時に・・・いや、もしかしたら。
そんなことを考えながら、手すりに手をかけ、その向こう側へ。
どこまでも見渡せる、今まで私の見ていた世界は本当に狭かったんだ。
そう思えるほどの広大な景色。
この世界を、鳥のように、飛行機のように、自由に飛び回れたらな。
小さい頃の思いを胸に、一歩踏み出した。
世界は反転し、空を見下ろしながらアスファルトへ向かって上っていく。
そこに鳥のような自由はなく、ただただ無力に引っ張られてゆく。
なぁんだ、わかってたけど、やっぱりそうか。
私は。
翼なんか持っていなかった。

「やぁ、いらっしゃい。君は・・・初めましてのお客さんだね。
ここは『希望の光』を売る店。人生という長い旅路の途中、耐え難い困難に
遭遇しながらも、決して生きることを諦めなかった・・・
そんな強き心を持つ人の前に、この店は現れる。
上を見たまえ。僕(私)たちの頭上に星空の如く輝く無数の光。
これが『希望の光』だ。慎重に選びたまえ、光は無数にあれど、
君を導く星はたった一つだ。
僕(私)に選べと?何を言っているんだ、僕(私)はただの商人だ。
そんなものに自らの命運を託すのかい?
それに、希望とは自らつかみ取るものだ。決して忘れてはいけないよ。
・・・見つけたかい?なるほど、それが君を導く『希望の光』か。
素晴らしい輝きだね。
さて対価だが・・・お金など必要ない。大体、希望が金で買えるなら苦労しないだろう?
それに、金で買った希望なんかに何の価値があるというんだい?
対価は、『影の涙』。人前では決して弱みを見せず。人知れず流した強さの証。
美しさであれに勝るものはない。それを頂戴したよ。
いつの間に?ふふふ、僕(私)はこれでも魔術師のはしくれだ。その程度造作もない。
さぁ、おまたせ。一見ただの電球だが、ここに君が選んだ『希望の光』を閉じ込めた。
君が希望を見失わない限り、この電球は輝き続ける。
さて、そろそろお別れの時間だ。また・・・いや、君はもう大丈夫そうだ。
君の人生に、導きの星が輝かんことを。」

勇者
「魔王!」

魔王
「・・・きたか、勇者よ。」

勇者
「手下共は全員倒した!あとはお前だけだ!」

魔王
「そうか・・・勇者よ、一つ問おう。貴様は何のために剣を振るう?」

勇者
「・・・?愚問だな、家族のため、友のため、愛する世界のためだ!!」

魔王
「愛、愛か、ふふ、ふはははははははは!!!」

勇者
「何がおかしい!!」

魔王
「勇者よ!貴様の愛する家族や友、世界は。本当にお前を愛していたか?」

勇者
「当然だ!その愛の力をもって今!私はお前の前に立っている!!」

魔王
「ならば勇者よ、なぜ貴様は今ここにたった一人なのだ?ほかの仲間はどうした?」

勇者
「置いてきた、仲間の命を危険には晒せない!」

魔王
「ははははははは!戯言を。真の仲間ならば貴様の静止を振り切ってでもついてきただろう。違うか?」

勇者
「・・・黙れ。」

魔王
「たった一人でここまで来たのは誉めてやろう。だがそれを褒め称える者は?誰が貴様のために喜ぶのだ?」

勇者
「黙れ・・・。」

魔王
「もう一度聞こうか勇者よ。貴様の愛する者たちは、本当に貴様を愛していたか?」

勇者
「黙れと言っているだろうが!!!
お前に何がわかる・・・人ですらないお前に私の何がわかるのだ!!!」

魔王
「わかるとも!・・・私もかつてはそうだった。」

勇者
「・・・なに?」

魔王
「昔話をしてやろう。かつて、一人の勇者がいた。
王の期待を背負い、民からの祝福を賜り、世界中から愛された。
だが勇者は孤独だった、それが偽りの愛だと気づいていたからだ。
それでも勇者は、魔王を倒せばみなから本当に愛されると信じていた。
そして魔王を倒した勇者を待っていたのは、人々の裏切りだった。」

勇者
「・・・裏切りだと?」

魔王
「そうだとも。魔王に匹敵する力を持った勇者を人々が恐れぬと思うか?
そして勇者は処刑された。世界のためにたった一人で戦ったのに。
世界に失望した勇者は魔族として蘇り、そして今、人類に宣戦布告を果たしたのだ。」

勇者
「それがお前というわけか。」

魔王
「ご名答。人間なぞそんなものだ、世界平和を謳っておきながら自分で行動しようともしない。
そういうわけだ勇者よ。例えここで私を倒そうとも、貴様は死ぬ。貴様の愛した人類の手によってな。」

勇者
「・・・お前の言うことが本当だとしても、私は私の愛した世界を信じている!!
私はお前とは違うと、お前を倒して証明してみせよう!!」

魔王
「ははははははは!もはや裏切られるとわかっていてなお!人類の味方を名乗るか!!
いいだろう、証明して見せよ!私を殺せるならな!!」


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勇者
「はぁ、はぁ、はぁ、これで終わりだ。」

魔王
「・・・やるではないか、勇者よ。
だがここからだ。貴様の信じる愛とやらが本物かどうか、せいぜい祈っておけ。」

勇者
「・・・さらばだ、魔王。」

ナレーション(勇者)
「魔王を倒し国に帰った私を待っていたのは、祝福ではなく死だった。
魔王に匹敵する力をもった私に恐れをなした国王の手によって、処刑されたのだ。
私は心から人類を憎んだ。魔王の言った通り、人類は私のことなど愛してはいなかった。
私は復讐を誓った。哀れな人類どもに。
数千年の時を経て、今私は復活を果たした。新たなる魔王として。」

 

警察官の職務に就いて数年、私に初めての相棒ができた。
彼の名はセバスチャン。私よりも少し背が低いけれど、
誰よりも勇敢で、まじめで、でもオフの時はドジな一面も垣間見えて。
かっこよくてかわいい素敵な彼。
そんな彼とのコンビネーションの良さは署内でも一目置かれていた。
足で情報を稼ぐ彼と、それを整理して事件を解決に導く私。
優秀な成績を修めていた私たちは、いつしか友情よりも固い絆で結ばれていた。

ある日、逃亡中の犯人を彼とともに追跡していた時のこと。
犯人に不覚を取られ頭部に重い一撃を貰い、気を失ってしまった。
搬送された病院で目を覚まし、様子を見に来てくれていた同僚から話を聞くと、
私が気を失った後、彼は周囲の人に助けを呼んでもらい、応援が駆け付けるまでの間、
私のそばにずっと寄り添っていてくれたらしい。
それを聞いた私は、彼に会いたくて堪らなくなった。
彼のやさしさと愛しさに、彼への思いは「恋」へと変わっていった。
退院の日、同僚に連れられ私を迎えに来てくれた彼を、私はぎゅっと抱きしめた。
愛してる、という言葉とともに。

定年を迎え退職した彼は、今、私と共に暮らしている。
老いた今もかつての凛々しさは失われておらず、相変わらず私は彼を愛している。
無口な彼だけど、私には彼が何を考えているのか手に取るようにわかる。
長年付き添った相棒として、そしてパートナーとして。
彼が今何を考えてるのかって?そうね・・・私と散歩に行きたがってるわ。
まるで犬みたい?
そりゃそうよ!だってこの子は警察犬よ?笑

いくわよ!セバスチャン!!

「それ」が恋だと気づいたのは、涙が止まらなかった時だった。

高校に入学したばかりの頃、友達に誘われて行ったバレー部の見学で初めてその先輩を見た。
バレーをしている姿はかっこよくて、見学に来た私たちにも優しくて、みんなと話して笑っている姿はとても可愛くて・・・
まさに女神のような先輩だった。
先輩に憧れて、今までろくにやったこともないバレー部に所属し、
先輩に憧れて、部活も勉強も必死になって頑張った。
学校の先輩後輩として、先輩と一緒に過ごした時間はとても楽しくて、とても幸せだった。
でも、気づけばそれだけでは満たされなくなっている私がいた。
先輩が誰かと楽しそうに話しているのを見ると、胸がきゅっと締め付けられて、
怒っているわけでもないのにイライラして。
私だってもっと近づきたい、もっとそばにいたい。
初めての感覚だった。

幸せな時間はあっという間に過ぎ去り、先輩の卒業式。
もう二度と会えないわけではないのに、なぜか涙が止まらなかった。
そこでようやく気づいたんだ、それが恋だと。
でも言えるわけがなかった。「好き」だなんて。
女である私が、同じ女である先輩に。
嫌われるかもしれない、気持ち悪がられるかもしれない。
結局気持ちは伝えられず、先輩はこの学び舎から旅立っていった。

あれから10年。
先輩は結婚して母となり、私は付き合って3年になる彼がいる。
いまでもたまに思い出す。
当時のあの幸せな時間を、あの切ない気持ちを、
誰にも言い出せなかった、あの思いを。

これが私の、初恋の話。