[七曲り荘日記]
●巻頭連載[第119回]
「我らの時代の墓碑銘を描く画家――その淫蕩する光線」
「店の絵」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文
昨晩、散歩中に、よくお会いする犬友のご夫婦が来店。
旦那さんはビンテージ・ファッションが好きで、ヘアースタイルもリーゼントに黒縁メガネと決まってた!
話を聞くと仙台へ来て一年、千葉柏出身だそうだ。
ちなみにご夫婦の飼い犬は、ジャック・ラッセル・テリアのポポちゃん、女の子。
ファッションや絵の話をしていると、旦那さんが、スポーツ雑誌『ナンバー』の編集長さんの知り合いと聞き、連載してた頃を思い出し懐かしくなった。
連載時は、
「ブライアンさん、好きに描いていいですよ」
と、なんの制約もなく、たまに真面目に描くと、
「もっと、やっちゃって下さい」
そんな感じだったので、気負いもなく、ほんと楽しかった。
お店をやっていると、たまにお客さんから、
「お店に飾ってある絵は、どなたが描かれたんですか?」
と聞かれ、
「自分です」というと、
「えっ、絵描かれるんですか? あの絵もですか?」
「はい」
「この絵も?」
「はい、僕です」
「えーーー」
ってなるパターンが多くて、お客さんの反応が面白い。
ただ、そこから友達になった人はゼロなのが、悲しいところ。
でも、結構、人に対して警戒心が強いので、そのくらいでいいのかな。
あっ、そういえば、昔、バースト読者の方が知らずに来て、
「なんで、ここにいるんですか! 高校生の時、めちゃ読んでました」
ってのもあった(笑)。
●上下共に、相変わらず写真が横に倒れたままになってしまった、すまん。
お店はこんな感じ。
以前、ギャラリーのオーナーから、「椅子もテーブルもブライアンの絵にしなよ! 外の壁にも描いたらいいよ!」
と言われたけど、勇気がない(笑)。
[今週のブライアンお勧めの本/鈴木大拙『東洋の心』]
●20代後半、笹塚の古本屋さんで見つけた。
品揃えが精神世界、画集、哲学書、詩集と、興味のあるものが全て揃ってて、仕事へ行く前によく寄り道してた。
「禅とは、人間の心のそこにある、無限の創造性に徹して、これに順応して動作することである」
絵を描くのも禅じゃん! なんて思ったりして、夢中で読んだ本。
2月29日(木)鬼子母神は曇りのち雨
阿佐ヶ谷[タバサ]にて、毎月恒例のトーク&朗読配信ライブ「BURST公開会議」を終え、日を跨ぎ0時半ごろ、池袋駅から歩いて七曲り荘へ歩いていた。
近道の路地の途中で、5メートルほど前のビニール傘をさした人影が、歩きながら振り返った。
暗くて顔は見えなかったが、小柄な男である。
「ああ、そりゃ、後ろにこんな男がいたら気になるよな」
その100メートルほどの路地は、「七曲りの路地」同様、大人がどうにかすれ違えられるほどしかなく、右は墓場を仕切るブロック塀、左は寺の建物や生垣がつづき、逃げ場がない。
私は黒いつば広のハットに、黒い厚手の革ジャンに濃紺のマフラー、カーキ色のカーゴパンツ、ごつい黒ブーツといったいでたち。
本身よりかなり大きく見えるだろう。
街灯もポツンポツンとしかなく、ましてや陰気なシトシト雨。
私は気持ち足をゆるめた。
で、ほどなく路地は終わり、寺の門前の広場に出た。
すると、前を歩いていた男が、意を決したように立ち止まり、振り返った。
「あの、傘をあげましょうか? それとも家はすぐそばですか?」
はっきり顔は見えなかったが、声が若く、おそらく20代であろう。
「はい、大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
「そうですか」
彼は寺の敷地内にある建物のほうへ向かい、私は参道の石畳を踏んで、別れ別れとなった。
坊主頭ではないが、宗教者に感じられる独特の声をしていた。
「東京だからこそ、こんなことに出会えるんだよな」
「それともゲイか?」
「いや、あの声は違うな」
20年近く「新宿二丁目」で呑んできたし、取材でもけっこうな数をこなしてきた耳にはそう聞こえず、やはり宗教系の男だと思う。
久しぶりに聴く、特殊な、優しい声音であった。
●ちなみに、今月発売の文芸誌『スピン』(河出書房新社)に書いた掌編にも、傘をさしかけてもらったエピソードがある。
●ちなみに、10年ほど前のブログにも書いたが、部屋で王様たちと呑み、そのまま皆でこの寺の花見祭りに出向き、ついちゃダメの鐘を私がついて、たちまち怒り心頭の若い坊主に囲まれ、そのまま寺社に連れ込まれ、住職にこっぴどく叱られたことがあったっけ。
50歳ごろのことで、2歳下の王様も神妙に頭を下げていたのが可笑しくて、にやけ笑いを我慢していたのを憶えている。
部屋に帰って、途中で買ってきた吉野家の牛丼(頭増し、温泉卵を乗せて)を、久しぶりに味わった。
で、たちまち眠った。
ビールを3杯、ジンを1ショット足したカンパリソーダに酔っていたので。
[今週の曽根のお勧め映画/テリー・ギリアム監督『ラスベガスをやっつけろ』(1999)]
●言わずと知れたゴンゾー・ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンの同名ノンフィクションを、ジョニー・デップとベニチオ・デル・トロが怪演した、正真正銘のドラッグ・ムービー。
原作にかなり忠実で、ドラッグによる幻覚描写や爆笑エピソードが満載で、かつ1971年のアメリカ社会をシニカル&リリカルに描いたロック世代の金字塔。
デル・トロがオープン・カーの助手席からゲロを吐きながら、並走する家族連れに「ヘロイン買わねえかあ」とからむシーンが最高にいかしており、これ一発でデル・トロの大ファンになった思い出の作品でもある。
これを観るたび、片っ端からクスリをキメたくなるのでご注意のほどを。
[NMIXXつれづれ草]
●KPOPファンには悪名高きLOEWEのフェイス・ドレスを着た7人時代のNMIXX。この直後にジニが突然脱退したため、理由はこんなドレスを着させられたからだと悪評がたった。が、新人アイドルのプロモーションとしたら正解である。
●なんてこった、今日も(3/4)男性ホルモンは入荷されていないとのこと。
今朝は目覚めてから2時間も起き上がれず、とことん厭世気分に浸ることとなった。
ということで、今回の「NMIXXつれづれ草」は休載します。
なにやらカフカ的状況に陥っているかのよう。
明日目覚めたら、白いワニに変身してるかも。
3月1日(金)鬼子母神は晴れ。
気分(体調)が悪いので、昼に便所掃除をする。
実は、今週火曜日に、ようやく男性ホルモンを射てるはずだったのだが、行く前に電話をしてみたら、なんとまたブツがないというではないか。
そのせいで(?)、新作詩がまとまらず、昨日は以前に完成させていた「美は欲情する」を朗読した。
すでに射たなきゃいけない日から10日以上が経った。
が、今日は疲れているので電話をせず、明日以降クリニックへ訊いて、あった場合はその日に射ちに行くことにする。
――と思ったが、明日明後日は土日か(泣)。
目覚めから疲労感があり、からだが重く、気を抜くと、たちまち頭の中が真っ白状態になってしまうのが恐ろしい。
それでも、冷蔵庫に何もないし、米も切れたので、頑張ってスーパーを往復した。
[夕食]
●ホタルイカの和風パスタ(椎茸、分葱、大葉、海苔)
●茹で卵2つ
●みかん
●ほうじ茶
岩手の醬油屋の若旦那城戸さんより、宇治の煎茶とほうじ茶をいただいた。
若いころより煎茶は味わってきたが、ほうじ茶は自分で買ったことがない。
食後のほうじ茶は格別だね。
おやすみなさい。
さすがに、完全にテストステロンが切れたようで、もはやこれ以上書く気になれない。
(頭の中に古わたが詰まってるみたいだ)
体調も最悪。
今週はこれで勘弁してほしい。
松ちゃん報道以後、自らのセクハラ&パワハラについて、毎日、過去の振る舞いを点検する時間を持つようになった。
ひとつ思い出すたび、ひどく眠くなる。
よい夢を。
[3/16 詩朗読ライブ]
3月16日(土)
OPEN 18:30 START 19:00 END 22:00
¥1500+ドリンク代
高円寺Oriental Force
https://oriental-force.com
杉並区高円寺南3-48-6
第八日東ビルB1 101
『Sound of BURST DAYS』
ピスケン ポエトリー
TSOUSIEポエトリー DJ
ケロッピー前田 ディジュリドゥ 打楽器 他
剛田武 リードフルート ノイズドール 他
ピスケンこと曽根賢(伝説の雑誌『BURST』元編集長)が、盟友・ケロッピー前田(身体改造ジャーナリスト)とTSOUSIE(BURSTカバーガール)とともに高円寺登場。
ピスケン朗読ライブ、地下音楽家・盤魔殿主宰の剛田武&ケロッピーの即興デュオ、さらにTSOUSIEのパフォーマンスDJも!!