米国は石油輸出国へ転換していくのか? シェールオイル革命 サウジアメリカ 米国では、シェールガスの採掘が軌道に乗り、天然ガスが大量にとれすぎて値崩れをおこしています。
その技術を使って、シェールオイルの採掘を積極的に推し進めており、将来的には米国が石油輸出国になるかもしれないとも予測されています。
万が一、上手くいけば、米国の債務削減、ドル暴落リスクの消失が見込めます。
「サウジアメリカ」効果で原油価格は下がるか? JB PRESSより引用
人はこれを「サウジアメリカ」と呼ぶ。
米国の石油生産量が急増しており、2010年代末には原油の純輸出国になるとの予測が一部で出ている。
わくわくするような予想であり、これに乗じることができる企業は劇的な成長を遂げるかもしれない。米国の原油増産に熱狂している人たちは、ごく短い期間の実績に基づいて壮大な予測をすることがよくある。環境汚染を懸念する反対運動やシェールオイルの埋蔵量推計への疑念など、このバラ色の見通しにはリスクも多い。
米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の石油生産国になる? 米国が「サウジアメリカ」になる日は本当に来るか?
消費者の間では、原油が安くなるとの期待が強まっている。米国内の原油生産は1971年をピークに2008年まで長年減り続けてきたが、そこから日量で約150万バレル増加し、今年9月には同約650万バレルに達しているためだ。
国際エネルギー機関(IEA)のように、エタンなどの天然ガス液(NGL)を含めれば2017年までに米国はサウジアラビアを上回って世界最大の石油生産国になると予測するところもある。
この予測が実現するには、過去4年間に見られた生産量の急増がさらに4年以上続く必要がある。
このような増産は続かないかもしれないと思われる理由はいくつかある。まず、石油会社は米国産原油の新しい源泉であるシェールオイル貯留層について、長期的な潜在力を過大評価していた可能性がある。また、この貯留層の開発を商業的に魅力のあるコストで行えるようにした技術の1つである水圧破砕法は、政治的な反発を受ける恐れを秘めている。
IEAのアナリストなどからは、原油価格の下落が続き、米国のシェールオイル生産の採算が取れないレベルにまで落ち込んでしまうリスクも指摘されている。
シェールガスと同様に、シェールオイルのブームを先導しているのは大手の国際石油会社(international major oil company, IOC)ではなく、中小の石油生産会社だ。
IOCのように豊富な資金を持つわけではなく、シェールガスとNGLの価格下落ですでに体力を落としているだけに、もしキャッシュフローが悪化すれば投資を減らさざるを得なくなるだろう。
米国のシェールオイル生産会社は生産コストが高い という弱点も抱えている。
ノルウェーのコンサルティング会社ライスタッド・エナジーによれば、これらの
シェールオイル会社の採算価格はバレル当たり44~68ドル の範囲内にあり、カナダのオイルサンドやブラジル沖の深海油田よりも安く、世界で最も高コストだとは言えない。
「本家」サウジアラビアの出方
それでも、北米での石油生産コストは、中東の多くの地域のそれを大幅に上回る。したがって「新サウジアラビア」としての米国の将来にとって、古い方のサウジアラビアがこの現象をどう解釈するかは重要な問題となる。
石油輸出国機構(OPEC)は、米国の石油ブームを危惧しながら見守っていることを明らかにしているが、それも無理からぬ話だ。OPECというカルテルにとって、これは1970年代にアラスカや北海の油田で生産が始まった時以来の大きな脅威だからだ。
米国の原油生産が増えるにつれて、OPEC加盟国は予定していた増産を抑制するか――生産能力増強投資の伸びを抑えるか、増強した生産能力の稼働を延期するか――原油価格の大幅下落を甘受するかのどちらかを受け入れざるを得なくなるだろう。
となれば、加盟国の中では唯一、生産余力が大きく生産能力増強投資を進める力もあるサウジアラビアが、極めて重要な役割を担うことになる。サウジアラビアが増産して原油価格を下落させれば、米国のシェールオイル業界は壊滅的なダメージを被る恐れがある。
調査会社バーンスタイン・リサーチが今年9月に行った試算によれば、原油価格がバレル当たり60ドルに下落すれば北米の石油探査・生産会社の設備投資額は40%減少し、「米国とカナダにおける掘削・改修作業は大幅に縮小される」という。
サウジアラビアの増産によって価格が下がった例は過去に何度かある。例えば1997年のOPECの会合では、世界経済の減速を受けてサウジアラビアが大幅増産に同意し、原油価格がバレル当たり10ドルに下落した。
1990年代とは異なる事情
ただ、当時と今とでは状況が違う。中東と北アフリカを飲み込んだ政変のうねりにおののいたサウジアラビアは、公共支出をこのところ急激に増やしている。国際金融協会(IIF)の推計によれば、サウジアラビアが均衡財政を維持するためには2015年まで原油価格をバレル当たり110ドル以上に保つ必要があるという。
同国の政府高官はこの計算に異を唱えているが、バレル当たり60ドルという価格はノースダコタ州ウィリストンでは歓迎されないだろうし、リヤドにとっても同様だろう。
サウジアラビアと「サウジアメリカ」の利害が一致する以上、原油価格が大幅に下落する脅威――消費者にとっては明るい兆し――が現実のものになる可能性は低そうだ。
2012年12月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
シェールガス革命とは何か 伊原賢著