不倫を労務管理する | 小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

労働エッセイストの松井一恵です。小さい会社には小さい会社にしかできない労務管理の方法があります。
丸17年社会保険労務士として生きてきて、みんなに知ってほしいこと、未来に残したいことを書き残そうと思います。

選挙、終わりましたね。

候補者の顔ぶれを見ていて、ふと思いました。

「不倫しても選挙には出られるのね」

・・・セクハラやパワハラは絶対ダメだけど、「合意の上での社内不倫で、会社は解雇できるんでしょうか問題」について、皆様はどうお考えでしょうか?今日は大真面目にこれについて考えてみたいと思います。

通常、就業規則を作る場合には、「社員にこんな風に仕事をしてほしい、こんなことはしてもらったら困りますよ」という服務規律条項を入れておくものです。その中には、

 

「社員は下記の行為をしてはならない。

   1.●●● 省略

   2.職務の怠慢および職場の風紀、秩序を乱すこと。

   3.●●● 省略  」

 

という風に「~するべからず」を列挙しておきます。

「不倫はあかん」とあからさまにかけないので、「2.」ぐらいの表記で、上品に書きます。

ばれずに不倫してるだけならともかく、「社内不倫が妻にばれて、会社の営業時間中に妻が会社に乗り込んできて、不倫相手の髪をひっつかんで引きずり回し、その妻を止めるために手を押さえたら、逆に吹っ飛ばされて机のカドでアタマかち割れた」ら、それはもう、「職場の風紀、秩序を乱」しましたよね、ということになります。

では、この事象を就業規則上の懲戒事由に当てはめます。

懲戒も程度がいろいろあります。始末書をとって終わりの譴責から、減給、出勤停止、諭旨退職、解雇、懲戒解雇・・・それぞれ、どんなときに出勤停止になるのか、どんなときに懲戒解雇になるのか、これも具体的に書いておくことになります。

その中で、「懲戒解雇」の中には、

 

「以下の各号の一に該当する場合は懲戒解雇に処する。

    1.●●● 省略

    2.第○章の服務規律に違反した場合であって、その事案が重大なとき。

    3.私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき。

    4.●●● 省略   」

 

ぐらいは、入れておきましょう。「不倫したら、けじめとるよ」とは書いておけないので、「2.」と「3.」あたりで手を打ちます。

平たく言うと、「たかが不倫、プライベート」であっても表沙汰になって職場に迷惑をかけてしまい、めちゃくちゃ業務の邪魔をしたらクビということです。

 

こういうルールは、後出しはできません。

「社内不倫なんて、かなわん。そんなことする奴は許さん」

というのなら、もともと就業規則に「不倫はあかん。けじめとるよ」というのを、「多少上品な書き方」で入れておかねばなりません。

 

「けど、妻が乗り込んでくるほど、はっきり何かが起こることばっかりじゃなくでしょ、不倫ってなんとなくウワサでばれるやん」

・・・ですよね。

ウワサやなんとなく、では戒めることができません。当事者に個別に話を聞いて真偽を確かめ、業務に悪影響が出ているかどうか、感情を抜いて、客観的に測定します。悪影響が出ていれば程度によりますが、人事裁量権の範囲内で配置転換などを考えます。

あとは、情報提供しておいてくださいね、

「法律もだけど世間はダークマターに厳しいよ、コンプライアンスの時代だもの。選挙には出れるけど、ほとんど落っこちてるでしょ。高校生は落ちても浪人生になれるけど、政治家も会社員も落っこちればタダの人」と、社労士が釘さしてたって、お伝えください。

プライベートでも社名はくっついてきますからね、文春ほどでなくても、ウワサ=風聞に対する注意だけは怠らないようにしてくださいね。大きくなる前に手を打つ、です。

 

 

 

ま、あれです、松井ココロのダークマターを吐きます。

「びくびくしながら、社内でそんなことしなさんな!

するなら、ばれるな!そして、社員だけでなく社長も!!」

・・・あ、申し訳ございません、取り乱しました。

反省!