ロリ・ベレンソンを知っていますか MRTA ① | 南米ペルー在住、ピルセンの「ペルー雑感」
2010年07月27日 13時21分23秒

ロリ・ベレンソンを知っていますか MRTA ①

テーマ:政治

ロリ・ベレンソンを知っていますか ①

リマ市内にある日本大使公邸をテロリストグループ、MRTA(トゥパックアマル革命運動)が占拠し人質をとって立てこもり、当時のフジモリ政権に刑務所に服役している仲間などの釈放を要求する事件が起きたのは199612月だった。この事件は翌年の19974月に救出作戦が敢行され解決した。この事件の一年前1995年、MRTAは国会議事堂を襲撃し占拠する計画をたてていた。この計画は事前に警察筋に察知された。12月にはリマ市内の高級住宅地にMRTAのアジトがあることが発覚され、警官隊が急襲し、市街戦を展開し、最終的にはMRTAの幹部ミゲル・リンコンなど多数が投降し逮捕された。国会内部を調べていたニセ記者も逮捕された。逮捕された中には米国人とパナマ人などがいた。MRTAは反政府武装集団で誘拐、殺人をこれまでに重ねていた。日系人の実業家も誘拐されているし、殺害もされている。


その当時、逮捕されたテロリストたちは報道陣を前にして公開された。報道陣の前にさらされたMRTAたちは、カメラに臆することなく、自分の主義主張をわめいたり演説したりした。下を向いて顔をさらすことを嫌う一般犯罪者と違って、堂々と報道陣にカメラをにらみつけ自己主張したわけだ。その中に米国人女性がいた。その米国人はロリ・ベレンソンという名の女性だった。中米でNGO活動をしていたとかで、スペイン語は堪能のようだった。その発言はスペイン語だったからだ。生中継だったその映像を今でも覚えている。「筋金入り」のテロリスト(MRTAはテロリストではなく革命戦士を自称する)と見受けられた。


1995年、1996年はセンデロリミノソとMRTAのふたつのテロリストグループ(ペルーでメディアは彼らをゲリラとは呼ばない。犯罪者集団のテロリストと呼ぶ)の勢力が衰退し始めていた。テロリスト対策が功を奏するわけだ。まさに国家の非常事態の中で、政府はいままでになかったやり方を採った。そして国民もこれを認めた(認めざるを得なかったと知識人で説明する人もいる)。テロリストをとっ捕まえるだけでは問題は解決しないという認識から、フジモリ政権は改悛の法(自主的に投降すれば過去の罪は一切問わず、社会復帰の訓練と機会を与える)、協力法(テロリスト幹部などの逮捕に有力な情報提供者の減刑と、生命を保障する)を採った。これで多数の投降者がでた。主義主張でなく、食えないからとか、仕方なく参加した若者たちも少なくなかったからだ。



その当時は、裁判所は機能しなかった。警察は犯人を逮捕する権限はあるが裁くことはできない。裁くのは裁判所だ。そんな当たり前のことが機能しなかった。裁判官がテロリストから脅迫されたり、殺害されたりする事件が頻発していたからだ。苦労して警察が逮捕したテロリストが証拠不十分で釈放される、裁判自体ができず保釈期限が過ぎて釈放される。そしてテロ活動に復帰するという悪循環が続いていた。軍隊もテロ対策に出動した。軍隊は警察ではない。犯罪者を追跡するとか取り締まるとか軍隊は警察権を行使できない。軍隊は自由に移動することさえできない。しかし、軍隊はテロ対策で出動していたし、特にアンデス山岳部では警察を超えて作戦を展開していた。警察ではとても対応できない、まさに戦争状態にあったわけだ。


フジモリ政権は機能しない裁判所を機能させるために、従来と違った方式がとられていた。裁判官の多くは罷免された(罷免された裁判官はフジモリ元大統領失脚を復活し、フジモリを人権侵害裁判で裁いている)。一般裁判法廷では、裁判官はテロリストの報復が「怖くて」機能しないため、特にテロリスト幹部の裁判は国軍による軍事法廷裁判が導入された。現行犯で逮捕されたテロリストたちは、即、有罪判決が下された。警察や軍隊の警備が行き届かない地方、あるいは、刑務所内に設置された特別法廷では、「覆面裁判」が導入された。「覆面裁判」とはまさに、裁判官が被告に顔がわからないように覆面をして裁判をするのだ。誰が裁判官かわからないようにするのだ。当時、わたしはリマ市内にある刑務所内で「覆面裁判」の法廷を見たことがある。被告席と裁判官の席は「すりガラス」で仕切られており、被告からは裁判官の顔はわからない。裁判官の声はマイクを通して、ボイスチェンジしており、声の特徴はまったくわからない。「すりガラス」は防弾ガラスだった。地方の裁判所ではこのような設備がない為、裁判官が「覆面」をしたわけだ。


当時はこのような変則的な裁判方式でしか、裁判が機能しなかったわけだ。被告の主張を聞いて、証拠を検証し、検事や被告の弁護士がいて、時間をかけて、間違いのない判決をするという民主主義の機能のひとつが、「不能」状態に陥っていた。国民や政治家たちは、この方式を認めるか、あるいは沈黙するかで容認せざるを得ない状態にあった。しかし、このやり方は国家の人権侵害を監視したり、人権侵害を告発する国際機関や先進国の非政府系団体に厳しく糾弾されることになる。

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