この全集が愛蔵版(上製本ケース入り)で
岩波から出版されたのは1995年。
子どもたちが船を繰って
海の上での冒険を繰り広げる 、
全12巻の物語です。
その頃は児童文学の翻訳ものが
大盛況だった時代で、
他に、ゲド戦記とか床下のこびとたち、
指輪物語等など、本好き集団は
大人も子どももこぞって読み耽ったものでした。
映画化されて一般に知られるようになる前のことです。
その頃うちのお客様に、
ご先祖様から
読書大好きDNAを大量に受け継いだ
(と思われる)少年がいて、
そのうえ彼のお母様も、太っ腹
読書に理解が深く、
前述のアーサー・ランサム全集を
ドーンと全巻購入してくださったのです。
当時3万円くらいでした。
暫くしてのこと、
アーサー・ランサム、どう?
と聞いたところ、
小学生男子はこう答えました。
オレ、先生に殴られた。
・・・・・
ええええっ?
このシリースを手にして
船の冒険に魂を取られた彼は、
寸暇を惜しんで読んで読んで、
なにしろ12巻ものですからね~
学校にも持って行き、
我慢しきれず、
授業中もこっそり読んでいたらしいです。
こっそり、って本人は言っていましたが、
授業そっちのけで物語に浸りきっている
その姿は
教壇から見たら そりゃあわかるでしょう。
彼の魂が、体だけ教室に残して、
小型船での冒険に出かけてしまっているのが、
先生にはありありと見えたことでしょう。
だからって“ゴン”はいけませんよ。
いけませんが、
彼が何度注意されても
お話世界から戻れなかったであろうことは
わたしにも想像できます。
呼んでも呼んでも帰ってこない教え子・・・。
と、その位面白いこのシリーズですが、
これまで品切れ・不揃いを繰り返しました。
なのでその後同シリーズが
岩波少年文庫に収録された時には、
よし、これで在庫は安泰。
小中学生読者に、
今がその冒険の時!
というタイミングでお奨めできる !
と喜んだものです。
アーサー・ランサム全集より
ツバメ号とアマゾン号/ツバメの谷
アーサー・ランサム作 神宮輝夫訳
岩波書店少年文庫
(このシリーズは各巻本体(¥720~¥800.)
が、諸行無常。
その少年文庫版アーサー・ランサム、
今、続々と品切してきています。
ガ~ン!
(ゴン!ではない)
今後岩波さんはどうされるのだろう・・・。
重版の予定を聞くのも怖い心境です。
そう言えば、床下のこびとシリーズも不揃いで、
E.L.カニグズバ-グの作品も
入手が難しくなっています。
小学生たちの間では、
5分後シリーズが流行る時代。
5分読めば結末がわかる筋立ての短編集です。
続きをこっそり読みたくなるような
濃厚な冒険物を 、
お奨めできる読者は減りつつあるのかしら?
よもや、短編集時代到来とかでは?
アーサー・ランサム全集の品切れをきっかけに、
今後の 戦略の練りなおしを迫られる
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