2019年に出会って良かった児童文学 “自分用“ | ほんとうのピコットさん
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ほんとうのピコットさん

子どもの本屋「夢文庫ピコット」店主です。
タイトル「ほんとうのピコットさん」については、
http://ameblo.jp/pikot/archive1-200711.html をどうぞ!

昨年の同じテーマのブログを見たら、
それを書いたのは2月はじめで、
やっぱり言い訳していました。
遅い!と。

 ・・・→ 2018年“出会って良かった児童文学”自分用

 


今年はさらに遅く、もう2月も終わろうとしています。

遅れる一方ですね~。アセアセ
去年のことを今さら話題にしたって・・・。
とも思うのではありますが、
それでもね、

本屋の仕事としての読書であることを忘れて、
どっぷりとお話世界に浸らせてもらえる1冊については、

やっぱり昨年分も書き残していきたいと思います。

 

1昨年(2018)の“自分用“の、

エヴリデイデイヴィッド・レヴィサン/小峰)は、

実は、読む幸福感はなくて、
物語の恐ろしさから逃れるために結末に向かって闇雲に読み進んだ、

“魂を掴まれちゃった”1冊だったんです。


ただ、後日読書会の仲間と読んだ時には、
わくわくした!という感想が多かったんですよ。

めちゃくちゃ盛り上がりました!
怖いというのは、わたしの個人的な受けとめ方なのかもしれません。


2019年、つまり昨年についてですが、
日頃から親しんでいる日本の作家さんの新刊や続編がたくさん出ました。

 

風船 岡田淳さん、ありがとう!
風船 富安陽子さん、ありがとう!
風船 斉藤洋さん、ありがとう!
風船 柏葉幸子さん、ありがとう!
そして、ようやくヤービの物語も動き始めて、

風船 梨木香歩さんも、ありがとう!

 

と、大いに楽しんだ一年間でしたが、

あえて書き残しておきたいと思っているのは、

初めましての作家さんの、こちら。

 

 

 

飛ぶための百歩

 ジュゼッペ・フェスタ 作 / 杉本あり 訳 

岩崎書店 本体¥1,400.

 

 

 


盲目の少年が、信頼する叔母とアルプスに登ります。

彼は五感で、太陽や風や樹木の香りや、
野生動物たちの気配など、
山登りの苦労に報いてくれる、

たくさんの楽しみを見出していました


しかし一方、

頑なに助けを拒んで、

自分の力で登ろうとする彼の様子を、
叔母は心配しないではいられないのでした。

家庭を離れて社会に出れば、

他人の手助も必要になるあろうにと。
 

山小屋で彼らは、少女と山岳ガイドに出会います。

彼女は打ち解けようとしませんでしたが、

心を開くことができないのは少年の方も同じでした。

このように自立に向けての葛藤の中にいる二人でしたが、

大自然の中で思いがけない体験をすることで変わりはじめます。


ふたりの若者の成長を見守る、
個性豊かな大人たちも存在感があります。


そして、この物語にはもうひとつ、
タカのひなの密輸という別の緊張感溢れる事件が用意されている。
ふたりはタカの存在やそれを守る活動に触れるなかで、
ありのままの自分を認めることの大切さに気付き、
一歩先へ踏み出して行くのです。


150ページほどのコンパクトな作品のなかに、
主人公たちの心の動きと、
もうひとつの密猟についての物語とが、
縦糸と横糸が交わるように描かれて、
自然の中で成長していく若者たちの物語が爽やかです。

 

なにより素晴らしく感じるのは、
少年が感じ取る、見えない自然への描写です。
彼は、音や匂いや肌の感覚で、

見える人以上に自然を感じるのですが、
その部分の描写が、
遠く離れた場所で読んでいるわたしにも、
まるでそこに立っているかのような感覚を与えてくれます。
文章が的確で、しかも美しいということは、
物語にとっての一番の魅力だと思います。

 

どのページの描写も素晴らしいのですが、

少年が、自らを縛っていたものから、

解き放たれる最後の場面が感動的でした。

 

 

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