「は? 社長と食事?」
志藤は出先で連絡を受けてやや焦った。
「まだ身体が戻ってないんやろ? そんな無理に・・」
「少しの時間なら。 大丈夫。 ひなたは今日は実家に連れて行って見てもらっていますから。無理はしません、」
「いや、でもさあ・・」
「この前あなたが社長に失礼なことを言ったままで。 どうせお詫びもしていないんでしょう・・。」
「・・それは、」
確かにあの時以来、北都とは仕事の会話以外なかった。
いや、何となく自分から避けていた。
社長にあんなことまで言って、今度こそ飛ばされるんじゃないかと内心ヒヨってたのは否めない。
「社長が誘ってくださったんです。 あたしは。 もう『クラシック事業本部本部長 志藤幸太郎の妻』ですから。」
ゆうこはクスっと笑った。
志藤は小さく息をついた。
静かな料亭を改装した懐石料理の店だった。
昼の時間が過ぎてしまったが、以前から懇意にしていたこの店に北都が頼み込んで特別に入れてもらった。
「この店は。 きみが見つけてきたんだったな、」
北都は中庭の緑を見る。
「新入社員の頃でしたね…。最初は一見さんはお断りと言われて。特に紹介もなかったものですから・・。 いくらホクトエンターテイメントの看板があっても交渉が難しくて。何度も足を運びました。ここから見える中庭が本当に素敵で、」
ゆうこは懐かしそうに言った。
「北都社長、いらっしゃいませ。」
女将がお茶を運んできた。
「時間外に。悪かったね、」
「いいえ。 ホクトさんにはよく使っていただいて。 景気がいい時も、悪い時も。いいお客様も紹介して頂いて。 白川さんも久しぶりね、」
おしぼりを手渡してくれた。
「彼女、会社を辞めることになったんだ、」
「え、本当?」
「・・はい。 今・・もうすぐ2歳になる子供が一人いて。 次の子も冬に生まれることになって。 まあ・・潮時かなって、」
ゆうこは手をゆっくりと拭いた。
「そう。 なんだかんだで大変なのはお母さんだものね。 白川さんは細かいことにもよく気づいて。いい奥さんでいいお母さんなんでしょうね。」
「いえ、」
照れてうつむいた。
「では。ごゆっくり、」
女将が出て行ったあと、入社してからの6年間を思い出した。
「私。 社長に一度お聞きしたいと思っていたことがありました、」
「え?」
「新入社員で。決してデキの良くなかった私をどうしていきなり秘書にしていただいたのですか、」
北都はその質問にふと微笑んでお茶に口をつけた。
「・・きみは。 私の秘書しかできないと思っていたんだよ、」
思わぬ答えに
「は・・」
気が抜けた。
志藤の心配をよそにゆうこは北都と二人で食事に出かけます…
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