For me,for you(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

兄と一緒に夕食の支度をした。

 

「初にいは誰かええ人おらんの? もう36やろ、」

 

大根を拍子切りにしながら話を振った。

 

「いやいや。 別におれは結婚せんでもええかなって思ってる、」

 

味噌汁を作りながら笑うだけだった。

 

兄の初音は学生時代から頭も良くてスポーツも万能で学級委員にいつも推薦されるような優等生だった。

 

自分とは10歳年が離れているので、母親がいなくなってからは本当に母親のように自分の世話もしてくれた。

 

「兄ちゃん、成績も良かったのにな。 大学にも行きたかったやろな、」

 

天音はつぶやいた。

 

「・・畑や田んぼが好きやったからな。 お父ちゃん助ける気持ちもあったけど・・一番は自分がやりたかったしここが好きやから。」

 

父から

 

兄には高校時代からつきあっていた彼女がいたことも聞いていた。

 

いつの間にか別れたってことも。

 

それがなぜなのか。

 

自分には全く言わない兄なのだけれど

 

やはり経済的に常に苦しかったこの家と関係あるのではないかと思っていた。

 

兄は一度東京へ出て少しだけ仕事をしていたことがある。

 

そのいきさつは自分にはよくわからなかったが、2年ほどでまた地元に戻ってきてしまった。

 

ひとりになる父のことを思うのか。

 

 

 

 

兄はキノコをふんだんにつかったおこわを蒸かし終えてせいろを開けた。

 

「うおおお、うまそう!!」

 

天音は懐かしい匂いに顔をほころばせた。

 

 

 

翌日は父や兄とともに畑に出た。

 

白菜やネギの収穫に忙しい季節だった。

 

山に囲まれたここは朝は霧が出る。

 

そんな景色も本当に懐かしく思えた。

 

昼過ぎに兄は車で出かけて行った。

 

 

「今年はネギの具合があまりようないみたいやなあ。 いつもより細いもんな、」

 

天音は収穫したネギをキレイにして箱詰めした。

 

「秋に台風やら長雨やらで。 あんまり日も当たらんかったしな、 栗もあんまりようなかった。」

 

「・・おれも。 戻ってきてここ手伝った方がええんちゃうかな、」

 

天音はここに戻ってきてからずっと心の隅にあったモヤモヤを父にぶつけた。

 

父は黙って顔を上げた。

 

「やっぱり。 おれだけ・・やりたいことやってええことないって思う。」

 

天音はネギを詰め終えた箱を積んでいく。

 

親戚の助けはあるものの父と兄だけで

 

畑をやっていってもたかが知れている。

 

役所勤めをしている兄も

 

高卒ということで恐らく出世をすることはない。

 

天候で左右されるこの仕事は収入も不安定だ。

 

父はやっぱり黙っていた。

 

そばで父の仕事を見て、改まって教わったわけではないけれど気がついたら一人で調律も簡単な修理もできるようになっていた。

 

そして

 

ピアノの調律だけで生計を立てることができないことも。

 

よくわかって。

 

苦しい生活を続ける父と兄を見て天音はやはり迷います・・

 

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