「そうやってさ。 あたしがバカだと思って。 からかって、」

 

ひなたはさっきまで泣いていたのがウソのようにいつもの感じになっていた。

 

 

奏はそんな彼女にまたふっと笑ってしまった。

 

 

今自分が言った言葉の『本当』の意味も。

 

たぶん、わかってないんだろーなーーー

 

腕組みをして首を傾げた。

 

 

奏は再びピアノの前に座った。

 

そして静かに弾きはじめる。

 

 

「・・たぶん。 おれ、海外に留学することになると思う。」

 

始めてハッキリとそう言った。

 

ひなたは胸がシクっと痛んだ。

 

「いつになるのか。 それはわからないけど。 先生や志藤さんとも相談しないといけないし。」

 

「高校・・卒業したら?」

 

「・・わかんない。」

 

奏が留学する時期は、高校を卒業してから・・と何となく思っていたひなたはその答えにもガッカリして目を伏せた。

 

奏自身も高校卒業後なのかな、と思っていたのだけれど

 

たくさんの事情が変わっていく。

 

さくらと共に世界に出る、という気持ちは変わっていない。

 

それでも彼女も結婚し、家庭を持って子供も生まれる。

 

ホクトと契約することも、まだまだ先だと思っていたけれどそこも事情が変わった。

 

 

5年後のショパンコンクールのことをさくらや志藤が口にするようになった。

 

準備をするのには時間がかかる。

 

それを逆算すると。

 

その『時期』はそろそろ見えてくるのかもしれない。

 

 

「・・いつそうなるか、が問題じゃなくて。 おれたちの時間はこれからも長いんだってことだと思うよ、」

 

奏は

 

きらきら星を弾きはじめた。

 

「カナ・・」

 

「今は・・ピアノに頑張ることの時間を動かす時。 ひなとの時間を止める、っていうんじゃなく。 少しゆっくりにするだけなんだと思うんだ、」

 

彼のピアノの音は。

 

いつも一点の曇りもない。

 

「おれのその時間ってのは・・。 ひな以外には使わない時間。 他の誰かと使う時間じゃないってこと。 時計は一個じゃないじゃん。 ひなだっておれとの時間以外に使わなくちゃいけない時間あるし。 でも身体はひとつだから・・、どっちを先に動かすかってだけで、時計はずっと動いているってことなんだと思うよ、」

 

 

わかるようで

 

わからない

 

ひなたはぼんやりと彼の言葉を胸に刻む。

 

奏はパッとひなたに視線を向けて

 

「だから。 おれとの時間を・・止めないで。」

 

声を張ってそう言った。

 

その力強い視線に胸がときめく。

 

どんなに離れても、二人の時間を止めないで・・という奏にひなたはときめきます・・

 

 

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