扉に充てていた手が

 

いつの間にかにグーに変わり。

 

ひなたはそっと目を開けた。

 

あたしと出会う前にカナが抱いていた夢。

 

たぶん叶うことはないだろうって何度も諦めていたその夢が

 

あたしやパパと出会って

 

鍵が開いた。

 

 

 

その時、ふと奏が顔を上げ

 

ドアの外にひなたの姿があることに驚いてピアノを弾くのをやめてしまった。

 

「ひな・・?」

 

ひなたはそっと扉を開けて中に入った。

 

「・・おはよ、」

 

「え? どしたの? 友達の家にお泊りじゃなかったの?」

 

奏は椅子から立ち上がった。

 

「もう。 帰ってきた。 みんなまだ寝てた、」

 

ひなたは笑って少しずつ歩み寄ってきた。

 

「なんか。 カナに会いたくなっちゃったから、」

 

少し恥ずかしそうに奏の傍までやって来た。

 

「ひな・・」

 

素直な彼女だけれど、こうやって自分に対してあまり気持ちをぶつけてくれなかったのに。

 

奏はそっとひなたの手を取ってぎゅっと握りしめた。

 

 

「・・こんなに朝早く来なくても。 会えるよ。 もう春休みなんだから、」

 

 

そうじゃなくて。

 

ひなたはそのあとの言葉が出てこない。

 

 

今のことしか考えてなくて、この先のことなんか考えてなかった。

 

昨夜、みんなとしゃべっていて初めてこの先のことに思いを馳せると

 

なんだか心細くて不安になって、あたしたちのこれからとかそういうのが全く見えないことに気づいてしまった。

 

 

自分はピアノのことには素人で

 

彼の夢の後押しが本当にできるのか。

 

だんだん自信もなくなって。

 

 

ふっと壁に目をやると、真尋の舞台の写真がたくさん飾られている。

 

いつもは本当にめちゃくちゃなのに、ピアノ弾いてる姿は本当にカッコイイ。

 

 

まーくんが今

 

すごいピアニストとして世界中を駆け巡っているその陰で

 

エリちゃんが全力で支えていることはわかってる。

 

パパが言うには、エリちゃんの方がすごいピアニストだったのに

 

その道を諦めて、まーくんのことを一生懸命支えることを選んだって。

 

きっと

 

カナのお母さんもそうやって設楽さんを支えて。

 

 

でも。

 

あたしには何もない。

 

 

「・・ひな?」

 

何かを考え込んでいるようなひなたに奏は彼女の顔を覗き込んだ。

 

すると

 

ひなたは震える声で

 

「わかってるんだけど。 ・・こうやってたまに不安になって、」

 

そう言ったとたん涙がぽろっとこぼれてしまった。

 

彼の手をぎゅっと握り返した。

 

「だって。 ・・あたし。 ・・かわいいしか取り柄がないんだもん、」

 

そう言ってぐすんと泣き出す彼女に、奏はいったいひなたがどうしてしまったのかとワケもわからず。

 

いや、泣きながらそんなん言われても

 

と思ったら、申し訳ないけどやや笑いが込み上げた。

 

奏を支えたい、と思っていてもまだまだ幼すぎるひなたはその術がわからず・・

 

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