「・・ねえちゃん、大変ばい、」
トイレから戻ってきた大我は読経が流れる中、姉にコソっと耳打ちした。
「・・葦切さん。 来とるよ、」
「え、」
さくらは驚いた。
「弔問客の中、並んでた。 え、なんで? わざわざ東京から? どういうことね、」
「って、」
さくらは焼香する弔問客を少し背伸びをするように見やった。
「やっぱりただの関係やなかと、」
大我がニヤっと笑った。
「あんたたち。 何をくっちゃべってる。 静かにせんと。 みっともない、」
隣の母に怒られた。
母にだけは葦切と交際していることを告げたが、どうやらそのことを家族には話していないようだった。
ていうか。
え、わざわざ来た?
さくらは目で彼を探してしまった。
そして、しばらくして8台ほど並べられた焼香台のひとつに葦切が進んできたのが見えた。
お辞儀をするときに彼と目が合った。
葦切は小さく頷いて焼香を始めた。
え?
この時間に来てるってことは。
会社を早く退けてきてくれたってこと?
もー
そこまでしなくても・・
さくらはたまらなくなって、そっと席を立った。
「・・耕平さん、」
香典返しを受け取っている彼に何とか追いついた。
「・・やっぱり来てしまいました。 すみません、」
「もう・・。 わざわざこんな遠いところまで・・」
さくらは胸がいっぱいになった。
「さくらさんのご家族にはお世話になりましたし。 お母さんにもこの前ご挨拶させていただいたし。 やっぱり、どうしても・・と思って、」
「もう、帰るのですか?」
「最終便には間に合いそうです、」
「明日、仕事は?」
「明日はもともと休みですけど。 特に泊まるところも予約してないし・・」
「ちょ、ちょっと待って下さい。 よかったら・・家族に紹介します。 お浄めの方で待っていてもらえませんか、」
「いや、でも。 今日はおじいさまのご葬儀ですし、」
「どうせ葬式でもなんでも。 とりあえずみんな飲むんです。 宴会みたいなもんです。 祖父も大往生ですから・・みんなで賑やかに送ってやりたいですから、」
さくらは何とか葦切を引きとめた。
不謹慎だけれど。
喪服姿の彼女がとても
とても
キレイで。
葦切は離れがたい気持ちになってしまった。
「お、終わった・・」
通夜の最後の弔問客の焼香が終わったのは開始から2時間以上経過していた。
葬儀屋が焼香台を増やして対応してくれても、こんなに長い時間がかかるほどの数だった。
大我はぐったりしながら立ち上がった。
「もう。 じいちゃんに怒られっとよ、」
母に叱られた。
「おれ、今日朝飯しか食うとらんとよ・・。 死ぬ・・」
さくらは葦切が気になってお浄めの席へと移動した。
わざわざ博多まで来てくれた葦切にさくらは感動します・・
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