Applause(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

何度もダメ出しをして

 

やり直させて

 

小野塚は奏のピアノの変化が手に取るようにわかった。

 

テクニックは申し分ない。

 

志藤があれやこれやと細かい所に口を出しているうちに

 

奏のピアノがどんどん洗練されてくる。

 

 

「な。 ええやろ?」

 

志藤は自分が撮った動画を奏に見せた。

 

「はい・・」

 

「ここまでは流れで持って行っていい。 でも、ここと。 ここ。 盛りあがりの所はきちっとメリハリつけて。 それだけでも全然印象が違う。 気持ちこもってるかどうか。 すぐわかる。」

 

小野塚はそんなやりとりを傍で黙って見ていた。

 

「・・わかった?」

 

志藤は奏ではなく振り返って小野塚にそう言った。

 

「は?」

 

いきなりそう言われて目をぱちくりさせた。

 

「さくらちゃんは楽曲の骨格を教え込む力はすごい。 しかも奏くらいのテクニックがあれば。 そこそこは形になる。 でも。 もうそれ以上のものを求められてるんやから。 あんたも音楽勉強してきたんやろ? 楽譜通りに弾きゃいいってもんじゃないことくらい。 わかんだろ。 確かにさくらちゃんの指針は大事にしなくちゃいけない。 でも男の立場として、曲の表現とかそういうことをあんたが教えなくちゃ。 楽譜を忠実に弾くクソおもしろくない演奏家に、おれは奏にはなってほしくない。」

 

 

・・・すげえ

 

怖い顔・・

 

小野塚は何となく後ずさりをしてしまった。

 

設楽啓輔の事務所に長く勤めていたので

 

もちろん業界のことにも精通していた。

 

この人があの北都マサヒロの『プロデューサー』的な人だってことも、知っている。

 

『禁煙』

 

のこの場所で、空気清浄器に向かってとはいえ

 

堂々と煙草を吸う。

 

「・・あの。 ここ、禁煙・・」

 

奏が申し訳なさそうにつっこんだ。

 

志藤はジロっと奏を見て

 

「おれはいいの!」

 

と、なんだか逆ギレしてきた。

 

「いや、でも。 先生から言われてるし、」

 

奏も負けずに言った。

 

「さくらちゃんがおれはいいって前に言ってたから。空気清浄器の前で吸うならって。 いいの!」

 

と子供のような言い様をして、小野塚は少し笑いが込み上げてきた。

 

「昨日、さくらちゃんの見舞い行ったら。 彼氏といちゃいちゃしくさってて、おれがいっくらノックしても返事ないし。 中年のいちゃいちゃ見せられてなんか胸クソ悪いったら、」

 

さらにそう言われて堪えきれず小野塚はぶっと吹き出した。

 

「・・うまく、いってるんですね。 なんかこの前ちょっと煮詰まってる風なこと言ってたのに。」

 

小野塚は笑ってしまった。

 

「知らんけど。 そんなにおまえのコンクールのこと100%気にしてるわけやないから。 彼女のことは気にせず。 奏はしっかりやれ、」

 

志藤は煙草を自分の簡易灰皿に消してしまいこんで奏の背中をポンと叩いた。

 

先生が倒れて、しっかりしなくちゃ

 

とやや前のめりになっていた奏の緊張を知ってか

 

そう声をかけてくれた志藤にホッとした。

 

いつものように辛辣に言いながらも緊張を解いてくれる志藤の気遣いが奏には嬉しく…

 

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