Gift(16)

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なんだかんだで落ち着いたのが夜の8時になっていて

 

さくらと奏はようやく夕飯をホテルのラウンジで採ることができた。

 

「あー、なんか。 バタバタだったね。 とにかく。 おめでとう、」

 

さくらはようやく奏にそう言えた。

 

「ありがとうございます。 ほんと・・先生のおかげです、」

 

「ううん。 本当に大したもんだわ、」

 

さくらは美味しそうにグラスのビールを飲み干した。

 

「・・先生、」

 

ビールの美味しさに浸っていると、奏が改まってさくらを見た。

 

「ん?」

 

「先生に。 お願いが・・あります。」

 

「え・・?」

 

あまりに真剣な彼の表情にさくらも緊張した。

 

「夏休みに。 ウィーンに行かせてもらえませんか、」

 

続いて奏の口から出た言葉に、一気に飲んだビールの酔いが回ってしまった。

 

「は?」

 

奏はバッグからコンクールの概要のしおりが入ったファイルを取り出した。

 

「先生も。 見ましたよね。 これ、」

 

そして付箋のついたページを開く。

 

そこには、

 

入賞者、審査員奨励賞を受賞した者で希望者には、ウィーンのファンベルグ音楽大学の短期レッスンを受講できる資格を得られます。

詳しくは事務局までご連絡下さい。

 

と記されていた。

 

「これ見て、ぼく事務局に問い合わせてみたんです、」

 

奏は少し身を乗り出した。

 

「ぼくのような学生は夏休みに留学生用のサマーレッスンを受けられるようにしてもらえるそうなんです。 レッスンの期間は選べるようなんです。 もともとこのコンクールで上位入賞は難しいと思っていたので、できればここには入れればってずっと思っていました。 こんな機会ないだろうし、ヨーロッパは行ったことないし、言葉のこととか心配はあるんですけど。 でも、何ができるのかもわからないですけど。 行って、みたくて。 お母さんも行ってた、ウィーンに、」

 

普段。

 

どちらかというと言葉は少なくて。

 

この子がこんなに一気にしゃべりまくるところなんか、今まで見たことがあっただろうか。

 

さくらはぼうっとしてしまった。

 

「・・でも。 先生のことを考えると。すごく申し訳ない気がして。 別にずっと行くわけじゃないし、一度は音楽の本場に行ってみたいってだけなんですけど。 もちろん、さっき言ったようにぼくは先生と世界に出るって言ったことは嘘じゃありません。 でも、先生を裏切ってしまうんじゃないか・・とか。 考えてしまって。 なかなか言えなくて、」

 

奏はさらに続けた。

 

そして

 

しばしの間。

 

奏はさくらの表情をおそるおそる伺った。

 

すると

 

さくらは、はらはらと涙をこぼしていた。

 

「えっ!!!」

 

それに驚いて思わず椅子を引いてしまった。

 

零れ落ちる涙をぬぐおうとせず、まばたきもせず

 

ただただ涙の粒が音がするように落ちて。

 

「せ・・先生、」

 

奏はどうしていいかわからずただただオロオロしてしまった。

 

奏はずっと抱いていた思いをさくらに打ち明けます…

 

 

 

奏の登場はこのへんから→

 

奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→

 

 

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