「ジュニアの国際コンクール、経験あるの?」
メイ・リーン・チェンは奏の前の席に座った。
「・・国際コンクールはないけど、」
「いきなりシニアに挑戦するの? すごいね、」
5歳の頃から日本で生活していると言っていたので、日本語はほとんどネイティブ。
一度彼女のピアノを聴いたことがあるけど
とてもエモーショナルで、そしてテクニックも素晴らしかった。
「・・高校にいる間に。 大きなタイトルを獲りたいんだ、」
奏はポツリとそう言ってまた本に目を移した。
「あたしも。 で。 7年後のショパンコンクールに・・出る。」
その言葉にはっとして彼女を見た。
「親はアメリカでピアノ勉強したらどうかって言うけど。 実力があればどこで頑張っても同じだと思う。 これからどうなるかわかんないけど。来年のチャイコフスキーには出たいな、」
国内のジュニアコンクールでは常にトップを獲ってきたと訊いた。
正直、そんな生徒がここにはわらわらといる。
「ぼくは、まだコンクール歴が浅いから。 慌てずにやっていくよ、」
少しだけ強がって言ってしまった。
「あれだけの。 腕あるのに。 ピアノ専攻の子たち、けっこう子供のころから顔見知りって人いっぱいいるんだけど。 あんたのことは知らなかった。 なんなのかなあって思ってた、」
見た目もキリっとした彼女は
性格もハッキリしているようでこういうことも臆せずに言ってくる。
「・・なんなのって言われても、」
「おんなじ子たちと争うの。 飽きてきてたの。 なんか楽しいなあって、」
その自信たっぷりの不敵な笑いと大きな黒い瞳。
そんなこと言われても。
ぼくにはまだ何もないんだから。
奏は小さくため息をついた。
国内最高峰の音楽高校に入学しながらも、奏はどこか
自分はみんなとは違う
と感じていた。
驕った気持ちではなく、これまでたくさんの修羅場を越えてきたであろうみんなと自分はまだステージが同じとは思えなかった。
ある意味ガラパゴスで育ってきた自分は、今ここでそんな彼らとようやく同じスタートラインに混ざれたくらいにしか思っていなかった。
競うことに慣れているみんなは
やっぱり勝ちぬく術を体得している。
「おとなしいんだね、」
メイ・リーンは何だかかわされた気がしてちょっと気が抜けた。
「・・ふつう。」
奏は彼女を気にせず本に目を移して普通に答えた。
奏はたくさんの同級生たちと切磋琢磨する環境におかれて…
奏の登場はこのへんから→★
奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→★
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『My sweet home~恋のカタチ。1 』 --peach blossom--
『My sweet home~恋のカタチ。2』 --bitter green--
夏希と高宮の初期の頃のおはなしを再掲させていただいています。 よろしかったらどうぞ。



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part13これまでのおはなし
志藤ひなた…志藤の長女。カワイイけれど勉強は全くできないちょっと頭のユルい中学生。明るく活発で常にみんなの中心。
高遠奏…ひなたの同級生。日本人No.1ピアニストと言われる設楽啓輔の実子。その才能を志藤にも認められピアノに邁進する日々。