ずっと暗い暗いトンネルの中から出られないと思っていた。
でも
思っていたのは自分だけで
あたしはみんなの力を借りてもう
とっくに外に出ていたのかもしれない。
それに気づかないくらい、ずっと下を向いて
周りなんかちっとも見えていなかった。
絵梨沙は微笑んで隣でピアノを弾く真尋を見た。
彼の彼女を見て優しく優しく微笑んだ。
この鳥肌の立つような感動は
久しぶりだ。
ブランクできちんと指は動いていないけれど、
それでも彼とのこのピアノは身体に刻まれている。
あたしはやっぱりピアノから離れられない。
でも
彼からも離れられない・・・・
涙で鍵盤が滲んだ。
「えー! エリサも弾いてくれるの~~!?」
マリーは飛び上がって喜んだ。
「うん・・・。 あたしもいいかしら、」
絵梨沙は彼女の頭を撫でた。
「・・いいに決まっているでしょう。 エリサ・サワフジとマサヒロ・ホクトの競演なんて。なんて贅沢なコンサートでしょう、」
レオは優しいまなざしで絵梨沙を見た。
「・・ありがとう、ございます。」
何だか胸がいっぱいになってしまった。
涙がこぼれ落ちてしまった。
「ね! 弾いて~~。 エリサのピアノ。 聴きたい!」
マリーは子供心に彼女にピアノを弾くことをもうねだってもいいと思ったのか、彼女の腕を取って甘えるように言った。
絵梨沙はマリーの母親のピアノのふたを開けた。
すごく
すごく
優しい音がした。
「この前。 マサに言われたから調律師を呼んだんだ。 そしたら、ほんのちょっとだけマサが指摘した音が狂ってたって。 よく気がついたねって感心されたよ。 さすがだね、」
レオは笑った。
絵梨沙は微笑んで、鍵盤を撫でるように指を落とした。
ショパンのノクターン第2番。
本当に優しくて華やかで煌めいて。
ほほ笑みを浮かべながら演奏をする絵梨沙をマリーとレオは嬉しそうに見つめていた。
こんなに優しい気持ちでピアノを弾いたのは初めてでした・・・
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