とにかく前任のシッターが急に辞めてしまったらしく、この日はまだこの子のお父さんに会う前に、フランツの紹介という信頼だけで仕事に来てしまった。
「ねえねえ、いくつ?」
学校から家まで徒歩20分ほどだが、その間子供のほうからずっと話しかけられる始末。
「23・・だけど、」
「23さい?? へー、大人なんだァ、」
「・・いちおう・・・」
日本の子供に比べて、こっちの子は本当に大人っぽいと言うか
女の子は非常にませている。
7歳とはいえ、対等に話をしないと負けてしまいそうだった。
『Ballade』に程近い大きなマンションに彼女は住んでいた。
父と娘二人暮しだというのに、本当に広くてそしてものすごくキレイにしてあって驚く。
「エリサはごはんとかつくれる?」
「え?」
「前のリラは作ってくれたけど~~、」
反応を試されているようで、
「もちろん。 作れるわよ、」
ちょっと威張って言ってしまった。
「あたし、デザートはチョコレートのムースがいい!」
「デザートも??」
まさかここまですることになるとは、と絵梨沙は事の成り行きに少し後悔していた。
真尋は昨日から1週間ザルツブルグにライヴの仕事に出かけてしまった。
彼に何にも断らずに、仕事を始めてしまったし・・・
「ねえ! 見て! これ、かわいいでしょ!」
マリーは自分の部屋にたくさんあった少女向けファッション雑誌を絵梨沙に見せた。
「へえ・・・今は子供でもこんな雑誌があるのね・・・」
興味深げに一緒に見たりした。
「日本でもおしゃれな小学生はたくさんいるけど・・・」
と言うと
「え、エリサは日本の人なの?」
マリーは驚いていた。
「そう。 あたしはお母さんが日本人なの。 お父さんはアメリカとオーストリアのハーフだけど、」
「へー・・・。 でも、日本ってどこにあるの? 中国とかと違うの?」
「そうねえ・・・」
絵梨沙は彼女の部屋にあった世界地図を指差した。
日本の地図は日本が真ん中だが、ここはヨーロッパなので日本は端っこに押しやられている。
「この島が日本よ、」
絵梨沙が指差すと、
「えっ!! 日本は島なの??」
マリーはまた驚いて食いついた。
「そうなの。 オーストリアも小さな国だけど、日本も小さいの。 でもね、あたしは日本の首都の東京ってところにいたんだけど、すごーく人がいっぱいで賑やかなところよ。 あたしは10歳の時にアメリカから日本に引っ越したけど、最初はNYより人が多い気がして外を歩くのが怖かったわ、」
と笑った。
「こんなに小さい所に、人がいっぱいなんだあ・・・・」
生意気だと思っていたマリーが純粋に驚いている所を見てクスっと笑った。
「今度。 日本の女の子が読んでいるファッション誌を東京に住んでいるうちのママに送ってもらうわ。 すっごくおもしろいと思うわよ、」
「ほんと?? わー! うれしい! ありがとう!」
マリーはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。
絵梨沙はシッターの仕事を始めることになります。今までに経験のない世界で・・・
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