しっかし・・・
泉川は食事を採りながらこの光景を凝視してしまった。
「やっぱり腹へってたんやな~~~、」
自分の朝食もそこそこにひなたにミルクをやる志藤の姿を。
もうとろけそうな顔で娘を見つめて
「よしよし。 いっぱい飲んだな~~~、」
立て抱きにして背中をさする姿もすっかり板についたように。
あの
志藤さんが!
大阪からやって来た志藤のあまりのカッコ良さに密かに憧れていた。
タバコの銘柄を盗み見て同じものを買ったり、スーツのブランドなんかも実はマネして買ったりしていた。
その憧れの男が。
今は愛娘に会社では決して見せない様な顔を見せている。
子供って。
そんなにかわいいんだろうか。
冷静になって思ってしまった。
「志藤さん、お茶は?」
ゆうこが声をかける。
「ん。 ちょうだい。」
それに引っかかり
「志藤さんって呼んでるの? 自分も志藤さんなのに。」
泉川は彼女に言った。
「え? あ~~~、なんか。 クセが抜けないってゆーか。 会社にいるような気分で・・」
ゆうこははにかんで笑った。
「なんか。 新鮮でいーなー、」
「そーですか? ウチの親にもいつまで苗字で呼んでるんだって呆れられちゃうんですけど、」
そりゃ。
ほとんどつきあってもない状態で結婚しちゃったってゆーし。
彼女にとったら
まだ恋愛途中なんだろうなあ。
かわいそ。
なんか怒濤のように運命が変わって。
彼女だってきっと今までどおり仕事をしたかっただろうに。
子供がいたら
やっぱりそういうわけにはいかない。
だけど。
「志藤さん。 もう時間がないです。 早く顔を洗って・・・」
「ハイハイ。 ひなた、ちょっと待っててな~~~、」
すごく
幸せそうで。
泉川は冷静に志藤家の『幸せ』を感じます・・
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします