「ブギウギ」 第110回
第23週「マミーのマミーや」
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（布団のそばに愛子）
梅吉） そのカメ、気に入ったか？
愛子） うん。かわいい。
梅吉） アホやけど
かわいいねんそいつ。
愛子） えっ、アホなん？
梅吉） ふっ・・・。
（カメを撫でる愛子）
梅吉） 愛子、写真撮ったる。
そいつと、一緒に撮ったる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜居間＞
スズ子） 変なこと・・・
聞いてもよろしでっか？
松吉） 変なこと？
スズ子） お父ちゃんの、
撮った写真見とったら・・・。
（水着の女だらけのアルバム）
スズ子） こんなんが、
ぎょうさん出てきて。
松吉） あっ！ これはやな・・・。
アイタッ！ イタッ！
あの～その～何や・・・。
ユキ） 「何や」て・・・
ウチに振らんとってください！
松吉） ああ・・・あのな、こらあ別
に怪しい写真ちゃうんじゃわい。
何ちゅうかその・・・どう言うたら
ええんじゃろ。
ユキ） あんな、梅吉さん、海で女の
人の写真撮っとったんよ、海水浴
の。やけど、無理にやないよ。
見たら分かるでしょ？ みんなきれ
いに撮ってもろて喜んどったし・・・。
ただ、梅吉さんそれを写真館の
ウインドーに飾っとったら、町の
アホな男連中が欲しがってね・・・。
この人やって買うたんやから、
その写真。
松吉） アホ！ 一枚だけやけん。
お前も撮ってもろうとったやろ。
ユキ） いかんか？ ええやないの、
きれいに撮ってくれるんやから。
梅吉さんに撮ってもろたらな、ホン
マに気分がええんよ。楽しいの。
ほやけん、みんな梅吉さんに
写真撮ってもらうんは、大好きや
ったんよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜離れ＞
梅吉） いくで。
せっかくのべっぴんやけんね。
はい。ニィ～や。
愛子） ニィ～。
梅吉） おうおう、ええ顔や。
（シャッター音）
梅吉） ああ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜居間＞
ユキ） どんなに偏屈な大人でも、
泣いとる子供でもな、梅吉さん
がカメラを向けると、不思議に
ええ笑顔になるんよ。
スズ子） まあ・・・確かに、人を、
安心させるいんか、そういうと
こはあったかもしれへんけど、
ちゃんと、真面目に働いてる
思うてたわ。
松吉） まあ、真面目には
働いとったで。なあ？
ユキ) うん。
愛子） ただいま。
スズ子） あっ、愛子、
どこ行ってたんや。
愛子） おじいちゃんとこ行った。
スズ子） おじいちゃん？
愛子） ニィ～してカメと
写真撮ったわ。
松吉） おお、ええ笑顔やなあ。
おじいちゃん、ちょっと元気に
なったじゃろ。
愛子） うん、おじいちゃんも
笑ってたわ。こないして。
ニィ～。
松吉） ニィ～してた。
あはははは。ニィ～て。ニィ～。
（笑い声）
松吉） もう一回やってみい。
愛子） ニィ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜離れ＞
（医者の治療を受ける梅吉）
梅吉） （苦しそうな息遣い）
（痛みで朦朧とした梅吉）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜廊下＞
医者） 今日明日が、
ヤマかもしれんわ・・・。
できるだけ、楽に見送れるよう、
痛み止めは打っときましたから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜＞
（布団のそばに座り、
うちわで風を送るスズ子）
（梅吉の寝顔を見つめる）
（回想）
スズ子） ホンマの娘や
梅吉） 何て？
スズ子） 何もないわ。
スズ子） ワテな、心のどっかで、
ずっと、気にしてたんや・・・。
お父ちゃんと、お母ちゃんと・・・
六郎もやな、血ぃ、つながって
ないこと。引っ掛かってたんや。
いつか、本当のこと、言うてくれ
ると、思てたけど・・・話してくれ
へんかった。何で、言うてくれ
へんねん、思うたことも、あった
けど・・・。
梅吉） 言う必要ないがな。
スズ子） 何や、起きてたんか。
梅吉） 横でお経みたいに
しゃべられたら、寝られんわ。
スズ子は、ワシとツヤちゃんの、
ホンマの子やけん。
何も、言う必要ないやろ。
スズ子） せやな・・・。
お父ちゃんと、お母ちゃんの、
優しさやったんやって、
ようやく分かりました。
ホンマに、感謝しています。
梅吉） 一番優しいんはスズ子や。
な～んも知らんふりしてくれとっ
たんやなあ。知らんふりして、
ワシらを、親にさせとってくれた
んやなあ。
スズ子） せやで。
こっちも、感謝してほしいわ。
へへっ。
梅吉） ツヤちゃんにも、
あの世で言うとくわ。
ワシとツヤちゃんと、お前は、
血ぃより濃いもんでつながっ
とるんや。六郎もな。
スズ子） 何やそれ。
梅吉） ここや・・・。
（胸に手を置く）
梅吉） ハートや。
心と心でつながってんねや。
スズ子） （泣）
（泣きながら笑うスズ子）
梅吉） 歌、聴かせてくれんか。
スズ子の歌聴きたいねん。
スズ子） ええで。何がええねん。
梅吉） ほなら・・・
「父ちゃんブギ」で頼むわ。
スズ子） あ・・・アホ！ 何やそれ。
梅吉） 知らんのかい。
スズ子） え？
梅吉） これやがな。
♪「父ちゃんブギウギ
父ちゃんウキウキ 父ちゃん
心ズキズキ ワクワク
海を渡り響くは
父ちゃんブギウギ」
スズ子） ホンマ・・・。アホや。
スズ子・梅吉） ♪「君も僕も
愉快な 父ちゃんブギウギ
ブギを踊れば 世界は一つ」
スズ子） ♪「同じリズムと」
スズ子・梅吉） ♪「メロディよ」
スズ子） ♪「手拍子取って」
スズ子・梅吉） ♪「歌おう
父ちゃんのメロディ
父ちゃんブギウギ
父ちゃんウキウキ 父ちゃん
心ズキズキ ワクワク
世界のうた （すすり泣き）
楽しいうた 父ちゃんブギウギ」
（笑い声）
（梅吉の胸に顔をうずめるスズ子）
（泣き声）
スズ子） お父ちゃん！
やだ～！お父ちゃん！ いや～！
（泣き声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
病床で愛子の写真を撮る梅吉。「ニィ～」
が良き。クシャクシャの笑顔の梅吉と同じ
顔をする愛子も良き。おじいちゃんとの思
い出ができてよかった。もう、知らない人
じゃない。なんか怖い病人ではなく、愛子
の「おじいちゃん」として、心に刻まれたと
思う。六郎のカメとも仲よしになったし・・・。
愛子も、スズ子の親族の一員になったね。
スズ子は、ワシとツヤちゃんの、
ホンマの子やけん。
何も、言う必要ないやろ。
ツヤも梅吉も、心の底から、スズ子を娘
だと思っていたから・・・ホンマの子だか
ら・・・ホンマの子じゃないなんて言葉は、
ツヤと梅吉の心の辞書に存在しないん
だよね。血は繋がっていなくても、心が、
心と心が繋がっていれば、家族だよね。
スズ子に歌のリクエストをする梅吉がま
た、泣かせてくる。「父ちゃんブギ」って！
♪「父ちゃんブギウギ
父ちゃんウキウキ 父ちゃん
心ズキズキ ワクワク」
こんなん泣くわ！ ずるい。そりゃ泣くわ。
子供のように泣くスズ子。娘に戻ったね。
愛子が泣いてすがったように、梅吉に泣
いてすがるスズ子。親子だね。ホント・・・。
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