大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第18回~愛の夢 | 日々のダダ漏れ

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日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第18回~愛の夢

 

 

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ベルリンオリンピックを目指していた、

我らが韋駄天。しかし、ヨーロッパにて、

第一次世界大戦が勃発。

 

再び走り始めた韋駄天は、

日本初の駅伝を、成功させます。

以降、四三君の快進撃は、ますます

拍車がかかり、もはや、暴走機関車。

オリンピックの中止でヤケを起こしたのか、

極東選手権、東西対抗戦、富士登山

競走と、立て続けに出場。

日本中を駆け巡ります。

その間になんと…。

妻のスヤが、めでたく懐妊。

 

**********

 

<熊本・池部家>

手紙・四三) 「スヤ殿、体の具合は

 どうだ。夏休みには、俺も子の顔

 を見に帰るつもりだ」。

 

(洗面器を用意したスヤ)

スヤ) おはようございます。

幾江) 明日から自分でするけん。

スヤ) 決めたことですけん、やります。

幾江) (笑) 頑固やね。

 

手紙・四三) 「体が丈夫であれば、

 勉強も出来、大業もなせる。

 どうか、国家のために、

 丈夫な子供を産んでくれ」。

 

**********

 

(改良足袋を履く四三)

四三) よし!

 

**********

 

四三君が全国を駆け巡る中、私の方は、

ようやく長旅から東京に、戻ってきた。

 

(凌雲閣を見上げるみすぼらしい格好の孝蔵)

男性) ヨーロッパ諸国が他国の 

 権利を奪う! 

男性) 権利を奪う!

男性) 無益な戦争を続けている!

 

**********

 

清さん) いてっ!

孝蔵) よう清さん、帰ってきたぜ。

清さん) お~孝ちゃん、帰ってきたか!

 そっか…帰ってきちまったか…。

孝蔵) 田舎の水は合わねえや。

 やっぱ東京が一番だ。

男性の声) お~どけどけどけ!

孝蔵) おい、どうだい清さん、久々に

 一杯引っかけて、吉原にでも…。

清さん) 隠れろ、隠れろ…。

孝蔵) な…何? えっ?

男性) どけどけ!

孝蔵) えっ? 何だい? あいつら。

清さん) 捜してんだよ孝ちゃんを。この人気者。

孝蔵) あっ、そうなの? えっ? 

 俺が何かしたのかい?

清さん) 小梅だよ、銘酒屋の。

 苦みばしった女。

孝蔵) 女も苦みばしんのかい? えっ?

 おい、酒くれ。

清さん) 小梅のやつな、変な野郎と

 駆け落ちしたんだよ。

 

**********

 

<播磨屋>

美川) ごめんくださ~い。

小梅) ちょいと…ねえ、ちょいと!

美川) ごめんくださ~い!

辛作) 聞こえてるよ。

 おい…。これ何だと思う?

(足の甲の部分を紐で結ぶタイプの履物)

美川) 足袋?

辛作) だよな。よし。…で何の用?

小梅) かなぐりって人、いる?

辛作) かなぐり?

 

**********

 

<播磨屋・2階>

美川) いや~久しぶり、金栗氏。

四三) はっ? 美川君、何ね…な~し?

美川) 小梅。

小梅) どうも。

 

**********

 

<屋台>

孝蔵) 待ってくれよ。小梅は独りもん

 だろ? 誰とくっついたってそれは

 駆け落ちとは言わねえや。

清さん) そこだよ。小梅のやつ、いつ

 のまにか徳重ってやくざもんのこれ

 になってた。徳重の方がぞっこんで、

 あれで小梅は浮気っぽいから、気に

 入らねえことがあるとぷいっと出てっ

 て、よそに男作っちゃう。

 

(回想・1か月前)

徳重) 今度の相手は誰だ? 言え。

 (壁ドンして) 言え~!

小梅) 朝太だよ、朝太。

 三遊亭朝太って売れない芸人。

 あたしゃ朝太に惚れてんのさ!

 

孝蔵) はあ!? とんだ濡れ衣だ。

清さん) よせって!

孝蔵) 離せ! 冗談じゃねえよ!

 せっかく東京戻ってきたっていうのによ。

清さん) 今は出歩かねえほうがいい。

 話はつけてやっから。

 しばらくどっか隠れてな。

 

**********

 

<播磨屋・2階>

小梅) そんな訳だから、おにいさん、

 この人かくまってちょうだい。

 わたしゃ旦那んとこ戻るよ。

美川) えっ、旦那って…大丈夫かい?

小梅) 大丈夫。隙見て会いに来るから。

美川) きっとだぜ。

小梅) フフッ。

四三) 停車場、分かります?

小梅) ぎゃん行ってぎゃん行って、

 ぎゃんばい。

四三) そぎゃんたい。

(出て行く小梅)

美川) 阿蘇のおなごさ。

 情が深くて、惚れっぽいのさ。

四三) 美川君…。

美川) 会いたかった~金栗氏~! ハハハハ!

 残念だったね~。せっかく僕のおかげで、

 オリンピックの選手に、なれたのに。

あ~アハハハ…。

美川) その後、どうだい? 教職についたと、

 風のうわさで聞いたが…。

四三) うん。今は、獨協中学に勤めとるばい。

美川) とつけむにゃあね~。君ってまっこと、

 とつけむにゃあね~。あっ、僕?

(窓を開ける音)

美川) うん?

四三) うん?

(向かいの窓辺にシマ)

四三) あっ、美川君!

(カーテンをしめる四三)

美川) 絵描きになろうと思ってる。

四三) はっ?

美川) 知ってる? 竹久夢二。絵描きっしょ。

 ローマンチシズムっしょ、どう?

 女性っしょ。これからは、女性の時代っしょ。

(窓を開け、物干しに出る美川)

美川) ヘ~イ! 近いよ~金栗氏。

(窓を閉め、カーテンを閉めるシマ)

美川) まるで、ロミオとジュリエットじゃないか。

四三) もうよか! 俺はほとんど、

 外ば走っとって、家におらんけん、

 こん部屋、好きに使ってよか。

美川) 本当に? フフッ。ロミオ。

 どうしてあなたは、ロミオなの。ロミオ!

シマ) お静かに!

 

**********

 

(夜明けの人気のない道にシマが出てくる)

(辺りを警戒しながら、着物の裾を絡げる)

(足に、播磨屋の黒足袋)

シマ) (深呼吸)

 

(回想)

弥彦) 日本もいずれ西洋のように、女子

 のスポーツが盛んになるかもしれん。

 世の中が変わればな。

 

(走り出すシマ)

(一緒に走る野良犬)

(顔がほころぶシマ)

 

(回想)

シマ) 女子の参加選手はいないのですか?

吉岡) 遊びじゃないんだよ。

 こっちは真剣勝負なんだよ。

シマ) 女子だって真剣に走れば負けません!

 

(回想)

治五郎) 君たちはいずれ、健やかな子ども

 を産まないといかん。無理したら、壊れるぞ。

 

(汗に濡れた顔をゆがめ、走るシマ)

 

**********

 

志ん生) ってわけで、

 本日の「オリムピック噺」はですね、

 知ってるようで知らない、女子体育の歩み。

(高座を降り、客席の一番前に座る志ん生)

五りん) えっ、師匠、師匠? 

志ん生) さあ待ってました。

五りん) えっ!?

志ん生) さあいこう。

五りん) えっ!? 俺?

 改めまして、古今亭一門の若えので、

 五りんと申します。いや~どういうわけ

 かね、師匠が引っ込んじまったようで。

 え~女子体育。女子体育なんですが…

 の前に、当時の一般的な美人を、紹介

 します。

志ん生) よっ! よっ、待ってました!

 よっ、美人!

五りん) 大正時代、美人といえば花顔柳腰。

 花のように美しい顔と、柳のようにしなやか

 で細い腰。色は白く、痩せて儚げな姿が、

 殿方の心をくすぐったんですね~。

 体育に対する興味はというと…。

(大正美人役の小梅)

小梅) フフ…体育? 何それ。

 運動? アハハハ…しないしない。

 ブスになっちゃう。アハハハ。

五りん) あっこれ私が言ったんじゃないん

 ですよ。ただ実際、芸者さんなんかは、

 不細工になるからといって、運動を厳しく

 禁止されていたんです。え~まあ、こうい

 う時代の女子体育ですから、服装も今と

 はだいぶ違います。半袖、短パンのよう

 な、露出の多い服装はもっての外!

(舞台袖から顔を出す知恵)

知恵) 五りん、五りん。

五りん) どうしたの?

知恵) 恥ずかしいよ。だってこれ

 テレビで流れてるんでしょ?

五りん) 大丈夫。ちーちゃんかわいいから。

 何着ても、似合うから。ねっ?

 あっ、ほら、鳴っちゃった。あ~どうも。

(たすき掛けの着物に袴、ブーツを手に

 くるっと回ってポーズを取る知恵)

五りん) 歩いて。

(客席を歩く知恵)

五りん) 袴に革靴たすき掛け! なんと

 これが女子の体育着だったんです。

 どうですか? ちーちゃん。

知恵) 動きづらいし、息も苦しい。

 これじゃツイストも踊れません。

五輪) これに新風を吹き込んだのが、

 二階堂トクヨ!

 

**********

 

トクヨ) 和装には、七つの罪がある。

 胸は、襟で十文字に締めつけられる。

シマ) はい。

トクヨ) 腰は袴でひもまみり。そのくせ

 あんどん包みのだらしない下半身。

シマ) はい。

トクヨ) 家事をやれば袖が水浸し。

シマ) はい。

トクヨ) たすきを掛ければ猫背になる。

シマ) はい。

トクヨ) 腕を上げれば脇が丸見え!

 極めつけは、この帯! 腹を締めつ 

 けられるから深い呼吸ができない。

 だから日本の婦人は、若くしてバタ

 バタ死ぬんです。

 

五りん) 着物が体育に向かないことは

 よ~く分かりました。

 

**********

 

<播磨屋>

トクヨ) まずは、うちのクラスの30人分。

 あとは、追って発注します。

辛作) あの~うちは、職人の足袋や…

トクヨ) では、お願いいたします。

辛作) 先生? 

 

**********

 

五りん) イギリスの名門、

 キングスフィールド体操専門学校に

 学んだ彼女は、チュニックを奨励。

(袖なしの、見ごろとスカートが一続きにな

 った、膝下ぐらいの丈の衣服を着た知恵)

五りん) いやいやいやいや…

 だいぶ進化しましたね。どうですか?

知恵) 全然動きやすい。

志ん生) おいおい…脚上げんな脚を。

五りん) あっ、パンツはいてますよ、

 大丈夫です。

志ん生) 当たりめえだバカ野郎

今松) はいてなかったら事件だよバカ野郎。

五りん) その授業も、ダンスを取り入れ、

 優雅にして軽やかです。

 

**********

 

(チュニック姿で踊るシマたち女生徒)

トクヨ) 手首は柔らかく~。膝は上げて。

 ステップは音を立てず茶の湯の心で。

永井) な…何だこれは!? おい! 

 君たち、気は確かか? 

 君は私のクラスの生徒じゃないか。

トクヨ) 月の雫のように~。

永井) 君も! それから君も!

(笛の音)

トクヨ) 直れ。

 何ですか? 永井先生、授業中です。

永井) 授業? これが?

 この扇情的で破廉恥な舞踊が?

トクヨ) エクスキューズ ミー。

(3mのポールの先端から、

 紅白のリボンが垂れる)

トクヨ) お話長くなるようでしたら、生徒たち

 に別の体操をさせてもよろしいかしら?

(生徒たちがそれぞれリボンを掴み、

 放射線状に広がる)

(笛の音)

(「メイポールダンス」が始まる)

(生徒たちのダンスの中でうろたえる永井)

トクヨ) 永井先生。私は、永井先生の、

 「学校体操教授要目」に感銘を受け、ス

 ウェーデン体操こそ、体育の神髄だと信

 じてまいりました。しかしそれは誤りでし

 た。3年間のイギリス留学…。永井先生

 の教えが、いかに偏った、旧態依然の、

 女性の体の特性を無視したものかと。

永井) ちょ…ちょっと待ってくれ。

 この奇妙な盆踊りもどきをやめて…。

トクヨ) 盆踊り…ハッハッハ~。

 英国仕込みのメイポールダンスを盆踊り

 とは…フフフフ。クレージー! あなたは

 もう古い! 女子の体育は女子の手で。

 子を産み、母となる体を作るために、

 優雅なるダンスを学ぶのです。

(チュニック姿のトクヨも優雅に踊り出す)

(口を半開きに、寂しげにトクヨを見る永井)

 

**********

 

(夜明けの道にシマ)

シマ) 苦しい!

(帯をかなぐり捨て、走り出すシマ)

 

**********

 

(スヤの乗った汽車が富士山の近くを通過)

 

**********

 

<播磨屋>

スヤ) すっごい楽チン!

辛作) 差し上げますんでどうぞ。

スヤ) 助かります。

 着物は帯で締め付けるけん苦しか

 ばってん、これは妊婦にもよかたい。

(チュニックを着たスヤ)

辛作) ところで奥さん、これは、足袋かね?

(スヤにひも付きの足袋を見せる辛作)

スヤ) 足袋でしょう。

辛作) そうかねえ~? 

 俺にはもう分かんねえんだよ。

 実は、コハゼを外した…。妊婦!?

スヤ) はい。あれ? 聞いとらんですか?

辛作) 聞いたか? いいや聞いてねえよ。

 聞いたら忘れねえよそんな大事なこと!

 何で言わねえかな? 金栗さんも。あの

 人「スッスッ」と「ハッハッ」しか言わねえ

 んだからよ。ああああ…。これはこれは

 どうも、おめでとうございます。

スヤ) 知らんふうば装って下さい。

 あん人なりに、考えがあってのこと

 かもしれませんけん。

辛作) 今日だって、奥さん、来るの分か

 ってたわけでしょ? 身重の体で熊本か

 らわざわざ来たってのに…。

スヤ) じきに帰ってくっでしょう。

美川) 金栗氏なら、帰ってきませんよ~。

辛作) 美川てめえ!

美川) あっちょっと…数日前、

 秋葉という弟子が訪ねてきましてね。

スヤ) 弟子?

 

**********

 

<四三の部屋>

美川) その弟子とこの夏、下関から東京

 まで、1200kmを走る計画を立て、夜遅く

 まで練習しております。ごらんなさい、

 この足跡を。

(足袋の足跡を書いた日本地図)

スヤ) 知らんかった、そぎゃんこつ。

 手紙にはひと言も。

美川) そのかたわら、著書「ランニング」の、

 出版記念講演会で、全国行脚。その間僕

 は、お留守番。ここで、横になってます。

 ライイング、たまに、絵を描いてます。

スヤ) こぎゃんこつ、

 美川さんに言うてよかろか?

美川) 言って下さい、奥さん。

スヤ) 何ば考えとっとでしょうね、あん人は!

 元々が普通の結婚じゃなかけん、負い目

 のあるでしょうが、こぎゃんひた隠しにせ

 んでも。大家さんしか知らんとですよ? 

 うちらんこつ。ほかにゃ誰にも言うとらん

 ですよ。子ども、生まれるとですよ! ? 

 もうすぐ臨月だけん、不安でしかたなか

 です! 美川に言ってもしょうがなかばっ

 てん、「夏は必ず帰る」って、手紙ばよこ

 したとですよ? 美川に言ってもしょうが

 なかばってん、考えてしまうばい。あん

 人は、マラソンばするために、うちと一緒

 になったとだろか? マラソンばやめたら、

 うちは…こん子は、どぎゃんなっと!? 

 美川に言ってもしょうがなかばってん、

 本人には聞かれんけん。ねえ美川さん、

 どぎゃん思います?

(本棚から数冊のノートを取り出す美川)

美川) ここに、金栗氏の日記があります。

(美川を見るスヤ)

スヤ) 読んだとね?

美川) 葛藤は…ありました。

(ノートの表紙に「1918年12月ー」の文字)

美川) 「二月」…。

スヤ) わ~! わわわ!

 すみまっせん。葛藤が。……どうぞ。

美川) 「2月7日、スヤの、夢ば、見る」。

スヤ) 自分で読みます。

(ひったくったノートを見るスヤ)

 

「二月七日、スヤの夢ば見る。

やはりオリンピックは開かれたのだ。

おるは金メダルを獲り、

その祝勝会か、何かだろうか」。

 

治五郎) マラソン日本の面目躍如だ!

 

「嘉納先生、岸先生、武田先生、可児先生」。

 

可児) 金メダルおめでとう!

四三) ありがとうございます。

可児) みんな来てるぞ~!

 

「永井先生、高師のみんな、野口君、一緒

に、ベルリンオリンピックを走った選手たち」。

 

(金メダルを胸に挨拶をする四三)

四三) (独)ありがとうございます。

 私を今日まで支えてくださった方々。

 嘉納先生、永井先生始め、体協の

 先生方、すべての仲間たち。

 それから、感謝します。

 私の…妻に。

 

「スヤは、人形のような、西洋のドレスば

着て、音も立てず、スススっと近づいた」。

 

四三) 妻の、スヤです。

 

「我、晴れてスヤを皆に紹介し、

大いに祝福を受ける」。

 

四三) スヤ。

(スヤの首に金メダルをかける四三)

スヤ) フフッ…。

 

「スヤの励ましと、支援に応えるに、

金メダルより、ふさわしきものなし」。

 

**********

 

(路面電車に乗ったスヤ)

 

「目が覚めて思う。

この夢をいつかかなえん。

スヤと、生まれてくる子のために」。

 

**********

 

<播磨屋>

四三) ただいま、戻りました。

辛作) 何やってんだよ。

 奥さん今帰ったとこだよ。

四三) ばば~!

(土間に脱ぎっぱなしの紐付きの足袋)

(手に取り、ボロボロの底を見る辛作)

 

**********

 

(電車道に出る四三)

四三) スヤ! スヤ~! スヤ~! 

 スヤ~! スヤ! ああ~!

(電車を追いかける四三)

(停車場で電車に乗り込む四三)

スヤ) さすが金栗選手、市電より速かね。

四三) スヤ…。スヤ…。

スヤ) 何ね?

(スヤの横に座る四三)

四三) どぎゃんね? 体ん調子は。

スヤ) 悪かったら来とらんけん。

四三) そぎゃんね。あっ…。

(ポケットから出したものを

 スヤの手に握らせる四三)

スヤ) 金メダルね?

(スヤの手の中に、安産の御守り)

(四三の裸足の足は泥だらけ)

スヤ) フフッ…フフフフ…アハハハ。

四三) ハハハハ…。泊まらんね?

スヤ) 帰ります。

四三) そぎゃんね。

 あっ、お俺も、夏には帰るけん。

スヤ) そぎゃんね。

四三) うん! いや…うん。

 

**********

 

産婆) 吸って吸って、吐いて吐いて。

スヤ) ハッハ~。

産婆) 吸って吸って、吐いて吐いて。

スヤ) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ…。

(お産が始まったスヤの手に御守り)

 

**********

 

四三・スヤ) スッスッハッハッ…。

 スッスッハッハッ…。

 スッスッハッハッ…。

 

**********

 

産婆) 大きく吸って吸って、吐いて吐いて。

スヤ) ハッハッ!

産婆) 吸って吸って…。

スヤ) ハッハ~!

 

**********

 

四三) スッスッハッハッ、

 スッスッハッハッ…。

 

**********

 

(たらいのお湯を運ぶ幾江)

(産声赤ん坊の泣き声)

幾江) スヤ…。

 

**********

 

大正8年4月28日 1919

 

「大正8年、4月28日。

スヤは無事、男の子を出産。

大正に「正」に、明治の「明」で、

「正明(まさあき)」と命名す」。

 

**********

 

その夏、四三と秋葉は下関東京間、

1200kmを20日間で見事走破。

結局、夏にも熊本へは帰らなかっ

たんですね。ひでえ父親ですな。

 

**********

 

<熊本・池部家>

実次) すみません! 

 下関までは、来たばってんが…。

スヤ) し~っし~っ。

実次) えっ?

スヤ) 今、寝たばっかりですけん。

実次) 走って東京に、帰ったようで。

スヤ) もうよかです。

実次) スヤさん…。逆らわずして勝つ!

スヤ) し~っ。

幾江) 調子に乗んな。

 こんあんぽんたんめが。

実次) あっ…ばってん、四三も、親に

 なって、心ば入れ替えたか、近頃は、

 便りの頻繁に、送ってくるそうで。

幾江) 問題は、宛名ばい。見なっせ。

 以前は、「幾江殿、スヤ殿」だったばってん、

 いつからか、「幾江殿」、「スヤ殿」と2通

 に分かれるようになって、しまいにゃ、

 「幾江殿、正明」になった。もう、スヤ宛て

 の手紙は読めんばい。

実次) いや…読んどりますよね。

 封の開いとりますもんね。

幾江) 当たり前たい。うちの手紙には、

 絵しか描いとらん。ほう。何とも言えん、

 山ん絵と…。これは? 犬? キツネか?

実次) 足袋じゃなかですか?

 

**********

 

<播磨屋>

辛作) 駄目だ駄目だ。

 ゴム底だけは受け入れられん。

四三) いやいやいやいや…そこを何とか!

辛作) 今までどんな注文も受けてきた。

 だがな、ゴム底だけは…その一線だけは

 どうしても越えられねえ。

四三) 底が布じゃ、一日もたんです!

 下関ん時も、途中で足らんようになって、

 宿に送ってもろたけん。

辛作) いいか!? 底がゴムで、ひもで

 結んだらそれはもう足袋じゃねえ。

 靴だ。運動靴だ! 

 足袋職人の俺に靴作れってのか? 

 だったらな、靴職人に足袋作ってもらえ!

足袋職人の俺に

四三) それじゃあ駄目とです!

 辛作さん、日本中探しても、播磨屋のマラ

 ソン足袋に勝るシューズはなかです!

辛作) シューズじゃねえ! 足袋だ!

 

**********

 

その頃、自動車の普及に伴い、東京の

道は徐々に、舗装されつつありました。

 

清さん) いってえな! 何が舗装道路だよ。

 足が痛くて走れねえや。

孝蔵) おい、おい…で、どうなんだ? 

 まぬけなやくざは何つってんだ?

清さん) 徳重とは、これで話がついたよ。

(小指を立てる清さん)

孝蔵) おい…濡れ衣で、指まで持って

 かれたんじゃたまんねえよおい。

清さん) 違った違った。

 これじゃねえ、これだ。

(人差し指を立てる清さん)

清さん) 徳重も、本音は終わりにしたがっ

 てる。要は体面さ。てめえの女寝取った

 野郎が、のうのうと寄席に出てるようじゃ、

 さすがにやくざの面目も丸潰れだ。

孝蔵) 寝取ってねえけどな。

清さん) つまり、ほとぼりが冷めるまで、

 東京から離れてなってこと。

孝蔵) そのほとぼりが冷めるには

 どれぐらいかかるんだ?

清さん) (人差し指を立て) これ。1年だよ。

孝蔵) (ため息) まっ、寄席に出らんねえ

 んじゃ、東京にいたってしょうがねえや。

清さん) すまねえな。

孝蔵) 清公は悪くねえや。小梅だって、

 昔から苦労した仲だ。恨みはしねえ。

 いろんなやつがいていいんじゃねえか?

清さん) 俺が言えた義理じゃねえけどよ、

 孝ちゃん…。

孝蔵) 何だい?

清さん) 腐るなよ。

孝蔵) うん。

(ふところをまさぐる孝蔵)

清さん) ねえんだろ?

孝蔵) うん…。

清さん) 出世払いでいいよ。

孝蔵) お前、

 俺が出世すると思ってんのかい?

清さん) するよ。三遊亭朝太は

 日本一の噺家になるんだ。

孝蔵) そんなことを言ってくれんのは、

 お前だけだよ。

清さん) 俺だけでもいいじゃねえかよ。

(路地の先に徳中が現れる)

清さん) きっと偉くなるよ。そりゃ今は、

 お前よりうめえやつが何人もいる。

 だけどな、いつかお前の方がうまくなる。

 そう俺は踏んでる。だからな、孝ちゃん…。

孝蔵) な…何だよ? えっ、何? うそ…。

清さん) 走れ! 

徳重) 朝太!

(孝蔵を逃がし、徳重に体当たりする清さん)

徳重) 離せこの野郎! 離れろ!

(殴られる清さん)

(どうしていいかわからない孝蔵)

清さん) 行け…行け! 早く行け!

(走って逃げる孝蔵)

 

**********

 

志ん生) その足で、私は東京を離れました。

 小円朝師匠に、二ツ目の許しを頂いて、

 晴れて、私は三遊亭円菊と名乗り…。

五りん) 違いますね。円菊は2度目の

 旅から戻ったあとです。ちゃんとやって

 下さいよ、自分の話なんだから。

知恵) しょうがないじゃん

 おじいちゃんなんだから。

今松) さっきから、ずっとパンツ見えてるよ。

知恵) フフッ。これが一番楽。

りん) 結婚前のことはね、あんまり覚えて

 ないのよ。ねえ、おとうちゃん。

五りん) じゃあ、そこからお願いします。

美津子) 昔話もいいけどさ、五りん、あんた、

 噺のお稽古はちゃんとしてんの? お父ちゃ

 んにべったりじゃなくて、たまにはあにさん

 たちに、落語の稽古つけてもらわなくっちゃ。

志ん生) こいつはね、これでいいの。そうい

 うことでね、置いてるわけじゃねえんだから。

五りん) そういうのはいいんです。

 僕、フラがあるんで。

今松) 自分で言ってちゃ世話ねえや。

 

**********

 

大正8年 1919

 

治五郎) よし…。

 

大正8年、パリ講和会議を経て、

第一次世界大戦は、集結します。

 

野口) 「駅伝 対 マラソン」ですと!?

四三) 日光から東京までは130km…。

 

暴走房総機関車の、四三君。

今度は、日光から東京、

130kmの無謀なレースを思いついた。

生徒たちは駅伝。なんと、四三君は…

 

四三) 一人で走りきる。

野口) 130kmを、ぶっ通しで!?

四三) こぎゃんなったら、

 人間の持久力の限界に挑戦するばい。

辛作) だったら…これ履いて走んな。

四三) ばっ! これ…ゴム…。

(ゴム底のひも付き旅)

辛作) 足袋のせいで完走できなかった

 なんて言われたくねえからよ。

四三) 辛作さん…ありがとうございます

辛作) せいぜい頑張んな。

四三) はい! 絶対勝ちます!

 

**********

 

一方、女子体育を巡る戦いは、第三勢力の

登場により、さらに面倒なことに。文部省の

要請で、アメリカに留学していた可児先生が、

2年半ぶりに帰ってきたのです。

 

可児) カニ歩き、カニ歩き…。

 アメリカと比べ、我が国の体育は、

 2歩も3歩も、後れておる。

永井) 黙れ半かじり。

 

**********

 

(授業を受けている生徒の中にシマ)

可児) はい、大臀筋。え~女性は、

 大臀筋の、発育が、盛んである。

 骨盤がバ~ン、臀部がデ~ン。

 女であることに自信を持ちなさい。

 私は、女だ!

学生たち) 私は女だ。

可児) はい声が小さいよ。

 もう一度いくよ。私は、女だ!

女性たち) 私は女だ!

可児) それがどうした!

シマ) それがどうした!

可児) かかってこいよ。

 

**********

 

<体協本部>

治五郎) いい加減にしたまえ! 

 戦争が終わったというのに、いつまで

 もめてるんだ! これじゃ、スタジアム

 建設計画は遅々として進まん。

(スタジアムの模型を見せる治五郎)

可児) ワ~オ!

治五郎) 3万人から5万人を収容する、

 競技場。これを神宮外苑に建設するんだ。

武田) えっ、神宮外苑!?

治五郎) 反対意見は聞かんぞ。我が国の

 スポーツの発展、体育の向上のために、

 今必要なものは、それら全てを受け入れ

 る、容れ物だ。人々が集い、体を動かす

 ための競技場。それさえあれば、運動会

 も、ダンスも、兵式体操も、それから…

 オリンピックも!

野口) オリンピック!

治五郎) アハハ…野口君。

野口) ご無沙汰しております!

治五郎) お~いいところへ来た。

 世界に恥じないスタジアムを造り、

 いずれここで…オリンピックだ!

(スタジアムの模型を見つめる野口)

 

**********

 

四三) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ…。

男性) 金栗さんが帰ってきたぞ~!

(拍手と歓声)

野口) 金栗さ~ん! 金栗さ~ん!

 

130km、20時間の連続マラソン。

さすがの韋駄天も、

駅伝には勝てませんでした。

 

(ゴールに倒れ込む四三)

やりましたね! やりましたね、

 130kmですよ金栗さん! 金栗さん!

辛作) ちょっと、どいてくれ。ごめんよ。

 ごめん、ちょっとどいてくれ。

四三) あ~辛作さん…

 すいまっせん、辛作さん…。

(四三の履いた足袋を見る辛作)

辛作) 勝った…勝ったぞ。

四三) 負けました。

辛作) あんたは負けたが、俺は勝った!

 最後までもったじゃないねえかよ、1足で!

 播磨屋の足袋が、130kmの道のりに勝った

 んだよ! ああ~! 金栗さん、ありがとう!

 ああ~!

 

日光・東京間を走り終えた韋駄天は、

こんな言葉を残しています。

 

四三) もう、日本に走る道は無か。

 燃え尽きた。

 

**********

 

<東京高師・校長室兼体協本部>

可児) あれ? これ…。

岸) どうした?

可児) いや、校長宛に、フランスから

 手紙が…。何でしたっけ? このマーク。

永井) 督促状じゃないのか? 借金の。

(戻ってきた治五郎が封筒を奪い取る)

可児) 校長? 

(封を開け、手紙に夢中の治五郎)

可児) 校長…。

治五郎) うるさい!

 

それは、クーベルタン男爵からの、親書。

 

治五郎) ハハハ…!

 

1920年、夏、8年ぶりに、オリンピックを

開催するという、知らせでした。

 

治五郎) 韋駄天を呼べ! 韋駄天を!

 ハハハハ…。

 

**********

 

久々の美川がジワる。やっぱいいわ~美川w

 

美川に言ってもしょうがなかばってん

 

スヤさんの連呼に爆笑。そして英国帰りのトク

ヨ、アメリカ帰りの可児の変貌ぶりにも笑った。

細かい笑いがいっぱいすぎて書ききれないよ。

美川に言ってもしょうがなかばってん面白か!



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