大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第10回~真夏の夜の夢 | 日々のダダ漏れ

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大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第10回~真夏の夜の夢

 

 

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昭和45年(1912)6月3日

オリンピック開会式まであと33日

 

手紙・四三) 「前略。『敵は幾万』の声に送

 られ、東京・新橋を出てはや2週間。嘉納

 治五郎先生におかれましては、どちらに

 おられますか? もうすぐ夜の10時、太陽

 は沈みません。白夜です。金栗は無事、

 ストックホルムに到着しました。昨日は、

 はやる気持ちを抑えつつ、スタジアムを

 見学し…。一夜明けて、今日は、ガイドの

 ダニエルとマラソンコースを下見しました」

 

**********

 

手紙・四三) 「早速、現地の新聞

  記者から、取材を受けました」。

 

記者) (英)なぜ日本は

 ロシアに勝ったと思う?

大森) なぜロシアに戦争で

 勝てたのかの質問だ。

弥彦) (英)大和魂だろうね。

 体は小さくとも、ここぞという時

 に実力以上の力を発揮する。

 

手紙・四三) 「日露戦争の勝利のためか、

 我々日本人に対する注目度の高さは、

 想像をはるかに超えておりました」。

 

大森) 彼も、マラソンらしいな。

 ポルトガルだそうだ。

四三) ふ~ん。

大森) 確かポルトガルも

 初参加じゃなかったか?

四三) 何て言いよらすとな?

大森) 負けたら、切腹らしい。メダルを

 とったら、国から、賞金が出るらしいぞ。

四三) 賞金!? 俺は自腹で来とっとに。

大森) すごいね~。

記者) (英)カナクリ! 世界記録保持者だ!

ラザロ) (英)ハイ。ラザロです。初めまして。

(立ち上がり、差し出された手を取る四三)

四三) 金栗です。初めまして。

 

手紙・四三) 「明日から、本格的な練習を

 開始します。嘉納先生がご到着される頃

 には、気力体力ともに、最高の状態にな

 っていると思います。一日も早いご到着

 を、心から、お待ち申し上げます」。

 

**********

 

志ん生) 北欧から出した手紙が、

 日本に届くには、当時はざっと

 2週間かかりましたな。

 

およそ2週間後(6月4日 → 6月15日)

 

<文部省・受付>

役人) え~ようやく、

 文部次官の許可が下りました。

治五郎) あっそう。

 じゃあ行っていいんだな?

役人) いえ、まだ。この文書を外務省に

 送り、外務大臣から正式に辞令が…。

 ちょ…ちょっと!

治五郎) 今日届いた手紙によると、彼ら

 は2週間前に、本格的なトレーニングに

 着手したという。今頃は、気力体力、

 万全に整えておるだろう。

本庄) 「メダル確実」と書いていいですね?

 

**********

 

ちょうどそのころ、8000km離れた

水の都、ストックホルムでは…。

 

弥彦) 離せ…離してくれ! 離せ!

(ホテルの窓から身を乗り出す、ふん

 どし一丁の弥彦を押さえている四三)

弥彦) ああ~! 離してくれ!

 

志ん生) ああ、ああ…あ~あ…。大変、

 お見苦しいものを、お見せいたしました。

 練習始めて2週間で、一体何があった

 んですかね? え~真相は、タイトルの

 あと、というわけで、気を取り直して、

 まいりましょう。「いだてん」。

 

**********

 

「六月四日。快晴、快便、

しかし快眠とはいかず」

 

<スタジアム・ロッカールーム>

弥彦) おはよう。

四三) おはようございます。

弥彦) 昨夜は、眠れたかね?

四三) いや…

 あぎゃん明るかけんが、なかなか。

弥彦) 僕もさ。全く、白夜ってやつは…。まる

 で、太陽が、2つあるみたいだ。ハハハハハ。

 ところで、昨日の取材、記事になっとるよ。

四三) うん?

(新聞記事を見る四三)

四三) お~。期待されとるばい。

弥彦) 「小さな日本人選手」って意味らしいよ。

四三) はあ?

弥彦) 言いたいやつには言わせておけ。

 何も考えず走るだけさ。

(やってきた外国人選手たちが2人を見る)

外国人選手) (英)日本人だ。

四三) 何時まで、やりますかね?

弥彦) 初日だから、ランチを挟んで、

 3時にはあがろうか。

四三) じゃあ、3時に。

(ふんどし姿の弥彦をじろじろ見る外国人選手)

 

**********

 

「まずは坂道を中心に、三里から四里を、

繰り返し走る。気候、体の調子、共に良し、

ただ、目下孤独が、何よりの敵なり。

外国の選手の練習ぶりを見るに、彼らは

数名が一団となり、互いに批評を加え

訂正する。これをもって練習の効果を、

確実に上げることができる」

 

(外国人選手のタイミングに合わせ、

 一人スタートの練習をする弥彦)

 

「そもそも彼らとは、体の造りが違う」

 

(外国人選手の並ぶ便器の前に立つ弥彦)

(便器の位置が高く、つま先立ちになる)

 

「約束どおり、午後3時にグラウンドへ。

しかし、三島氏、見当たらず」

 

**********

 

<ホテル>

安仁子) フォーティースリー。

弥彦) フォーティースリー。

四三) あっ、三島さん。

弥彦) いいところへ来た。

大森) 金栗君、1万mどうする?

四三) 1万? えっ、出られっとですか?

大森) ああ、念のためエントリーしておいた。

弥彦) 僕は、100と200と、

 400に出てみることにしたよ。

安仁子) 「下手な鉄砲、

 カズちゃん当たる」よ。

大森) 安仁子、「数うちゃ当たる」。カズ

 ちゃんには当たらない。うん、オーケー?

弥彦) 結果はともかく、

 マラソンの予行演習にもなる。

 レースに慣れておいて、損はなかろう。

四三) あ~…確かに、そぎゃんですね。

大森) (せきこみ)

弥彦) よし! 目標が定まった。

 これで、練習にも精が出るね。

大森) あ~今朝はすまない。今はもう

 持ち直したから、明日にはグラウンド

 には顔を出せるだろう。(せきこみ)

 

**********

 

「しかし…」

 

<6月5日>

四三) あっ、おはようございます。

弥彦) おはようございます。

安仁子) グッドモーニング。すいません。

 ヒョウの調子が、よろしくない。せき、

 止まらない。白夜。弥彦、どうぞ。

(練習メニューのメモを弥彦に渡す安仁子)

弥彦) 「ダッシュ30m、2、3回。ストレッチ、

 クラウチ式スタートに、重点を置き、

 励むべし」。

四三) あっ…安仁子夫人、俺には?

安仁子) (英)ないわ。

 マラソンはヒョウの専門じゃないから。

 (英)走って、走って、走るのよ。

 頑張ってね。

 

「そして次の日も」

 

<6月6日>

四三) おはようございます。

弥彦) グッドモーニング。

安仁子) ソーリー。今日も芳しくない。

 

「更に次の日も」

 

<6月7日>

安仁子) 何かソーリー!

 本当にすいませんね!

(髪を振り乱した安仁子)

 

**********

 

「実に孤軍奮闘なり、他人の力を借りず、

優勝を得し喜びを夢想し、

ただ、奮闘するのみ」

 

**********

 

<6月8日>

「アメリカ、フランス、ロシアなどの選手が

現地入りし、練習、ますますにぎやかに」

 

(四三と弥彦をじろじろ見る選手たち)

弥彦) お先に。

四三) 三島さん、今日は、何時に?

弥彦) 4時ぐらいかな。

(足袋を履く四三を見ているラザロ)

ラザロ) ハイ。

四三) ハイ。

ラザロ) ミスター カナクリ。

(足袋を指さすラザロ)

ラザロ) (ポルトガル語)

四三) はっ?

ラザロ) テイク イット オフ。

四三) あ~アイ ドント ノー。

ラザロ) テイク  オフ。

(足袋を脱ぎ、両手を挙げる四三)

四三) はい。

(足袋と四三の足を見るラザロ)

ラザロ) アッ、フフフ。

 (ポ)あー良かった。足が鹿のひづめ

 のようだったら、どうしようと思った。

 気を悪くしないでくれ。

四三) あ~…あっ…。

 (英)これは、足袋です。

ラザロ) タビ?

四三) 足袋。そう、足袋は、職人…足袋

 …あ~。ちょっと待って。ダニエル。

ダニエル) (英)どうしました?

四三) 「職人」って、

 どぎゃん言うたらよかね?

ダニエル) ハッ?

四三) あっ、そっか…え~職人…

 大工…分からんね。ぎゃんして、

 トントントントン…の人。

(大工を実演してみせる四三)

ラザロ) ア~…。

四三) 分からん? ギコギコギコ…。

ラザロ) カーペンター?

ダニエル) カーペンター。

四三) カーペンター?

ラザロ) カーペンター(大工)。

四三) カーペンターカーペンター。

ラザロ) (英)私はカーペンターなんだ!

四三) これ…。

ラザロ) カーペンター。

四三) えっ、カーペンター?

 あなたカーペンター?

 あっそぎゃんですか。

ラザロ) (英) 貧しくて、

 電車に乗れず、いつも走っていた。

 そして、スカウトされた。

四三) スカウ…?

ダニエル) ユー ノウ トレイン?

 シュシュシュシュ…。

ラザロ) トレイン。

四三) ああ、ああ…。

ダニエル) ポッポ~。

四三) 電車に、乗らんで、走っとった?

 あっ、俺も! 俺もおんなじたい。

 そうそう…おんなじ。アハハ!

 あ~そぎゃんたいね。

 あっ、ちょっと待って。

(新しい足袋を出す四三)

四三) あの…これ、差し上げます。

 フォー ユー。

ラザロ) フォー ミー?

四三) うん。日本の、カーペンターは、

 みんな履いとるばい。

ラザロ) (英)故郷に帰ったら自慢します。

四三) うん?

ラザロ) (英)カーペンター・シューズか。

(足袋を履くラザロ)

ラザロ) アッ! ア~アハハハ! カーペン

 ター・シューズ! カーペンター・シューズ!

 ワッ! フ~!

四三) 播磨屋さんも喜ぶばい。

 アハハッ、よう似合っとう。

(抱き合う四三とラザロ)

 

**********

 

(アメリカの選手たちとタイミングを合わせ、

 スタートの練習をする弥彦)

 

(回想)

治五郎) 世界の中心で、

 走ってみたいと思わんかね?

弥彦) 面白そうですね~。

 

(練習を続ける弥彦)

 

**********

 

<ロッカールーム>

(弥彦と握手をする記者)

記者) グッド。ベリーグッド。

 (英)おや? 足袋は捨てたのか。

ダニエル) ノット。ソーリーソーリー。

 (英)彼は金栗選手じゃありません。

記者) (英)彼は撮らなくて良いのか?

記者) (英)大した選手じゃ

 ないから、いいだろ。

(選手に囲まれている四三)

四三) 欲しか? 欲しかと?

選手) (英)ためしてみたい。

選手) (英)どんな履き心地?

選手) (英)僕も欲しい。

四三) 全員分はなかばってん、

 今日本から、送ってもらいますけん。

 

**********

 

<再放送でカットされているシーン>

配達員) 播磨屋さん、電報です。

辛作) はい。

配達員) 失礼します。

辛作) はいご苦労さん。

清さん) おっ、電報かい?

辛作) おう。

精さん) 誰から?

辛作) 世界の金栗大先生からだ。

清さん) あら。

辛作) 「大至急 足袋 送れ」だとよ。

清さん) へへへ…。

辛作) 仕事増やしやがってよ~。

清さん) …とか何とか言って、

 辛さんうれしそうじゃねえか。

辛作) バカ言うな。届くのに2週間か

 かんだぜ? 夜なべして縫わなきゃ、

 オリンピック終わっちまうわ。

清さん) へへへへ…あ~ところで辛さん。

辛作) ああ?

清さん) 落語好きかい?

辛作) あ~嫌いじゃねえがな。どうした?

清さん) 俺のダチ公がよ、

 噺家に弟子入りしたんだよ。

辛作) へえ~そうかい。

清さん) うん。だから、着物の一つでも、

 こしらえてやろうってな。

辛作) あのな、呉服屋は隣。うちは足袋屋。

清さん) 韋駄天のユニフォーム

 作ったじゃねえかよ~。

辛作) はあ…で、誰に弟子入りしたんだ?

清さん) うん? え~何つったっけな…。

(ここまで、再放送分ではカット)

 

**********

 

志ん生) その頃、私はってえと…。(追加部分)

 

(楽屋に入る、橘家円喬)

先輩噺家の声) 「お茶漬けにしましょうか?

 っつってさ、向こうはね、薄手の茶わん

 だから、箸が当たるとチンチロリンって

 音がするんだ。こっちはね、五郎八なん

 だから…」。

円喬) 「垂乳根(たらちね」だね。

 やってんのは誰だい?

孝蔵) さあ? でも、沸いてやすね。

先輩噺家の声) 「男だからザ~クザク…。

 向こうはね、前歯でもってたくあんかむ

 からね、ポ~リポリって音がするよ。

 こっちはね、奥歯でかみしめるから、

 バ~リバリってんだ。これをね、

 続けてやると…」。

円喬) ハハハハハ…ハハハハハ…。

 

志ん生) 半端な芸をやってると、兄弟子

 だろうが師匠だろうが、わざと変な間で

 笑ったり、せきこんだりして、邪魔すんだ。

 

円喬) (せきこみ)ありゃひでえ。

 噺じゃねえ、おしゃべりでげす。

 

(銭湯の湯船に志ん生)

志ん生) …でまたすぐあとに出て、

 あてつけみてえに同じ噺やって、

 場さらっちまうんだ。

五りん) 熱っ!

志ん生) 何やってんだ。

 

円喬) 向こうは、前歯でね、たくあんかむ

 から、ポ~リポリッて音がするんだ。

 こっちは奥歯でかみしめるからバ~リ…。

 

志ん生) それがまた絶品だから、

 誰も文句は言えねえ。

 

円喬) ガンガラガンのザ~クザクの

 バ~リバリ。チンチロリンのサ~ク

 サクのポ~リポリ。

(先輩噺家のせきばらい)

円喬) あっ、チンチロリン、ガンガラガン、

 ザ~クザク、バ~リバリ、チンチロリン、

 ガンガラガン、ザ~クザク、バ~リバリ。

 へへへ…。(湯飲みを手に取る円喬)

 

志ん生) 湯飲みには、白湯が入ってて、

 そいつを師匠は飲むわけじゃねえんだ

 よ。ただ鼻の下にこう持ってきてな、息

 を吸うんだ。

 

円喬) ス~…ハア~。

 

志ん生) ある時、そいつを飲もうと

 したことがあったんだ。

五りん) それ間接キッスじゃないですか。

志ん生) 飲んだら師匠みてえに、うまく

 しゃべれんじゃねえかと思ったんだが…。

 

(湯飲みを口に近づける孝蔵)

円喬) 飲んじゃ駄目だよ。私は肺を

 患ってるから…。(せきこみ)

 前にそれ飲んで、うつって伏せって

 るやつがあるよ。

 

志ん生) まあ悪い冗談だが、肺を患って

 るってのは本当で、時々嫌なせきをな…。

五りん) あっ!

志ん生) あっ、冷てえな、おい。

 湯入ってる時におめえ…何だよ。

五りん) あ~! あっ、すいません。

 ちょっと親父の言いつけでして。

志ん生) 親父の言うことよりな、

 師匠の言うこと聞け。冷てえって。

 

**********

 

「六月十五日。白夜による不眠。

冷水浴のやり過ぎで、水道止められる」

 

**********

 

手紙・四三) 「前略。もしこの手紙を、嘉納

 先生が読まれているとしたら、もう手遅れ

 です。練習を開始して、12日目、とうとう、

 誰も 部屋から出てこなくなりました」。

 

**********

 

四三) 三島さん。

(ドアを開け、中に入って部屋をのぞく四三)

四三) 三島さ~ん? 三島さん?

(閉めっぱなしのカーテンを開ける四三)

四三) ああっ!

弥彦) 開けないでくれたまえ。

(クローゼットの中に弥彦)

四三) 何ばしよっとですか!?

弥彦) フッ…吸血鬼になった気分だよ。

 どうかね? そっちは。僕は、もう耐え難い。

 練習などしちゃおれんよ。雲をつくような

 西洋人に交じって、木の葉のようにもま

 れて走る屈辱。なんたる恥ずかしさ。

四三) 三島さん…。

弥彦) らしくないと思うかね? だが…。

 本当の僕は違う。もう限界だよ。

 西洋人は速い…10秒台、11秒台、

 当たり前。とても勝ち目はない。

四三) なんのなんの! 

 三島さん、我々は、走ればよか。精一杯

 やりさえすれば、それでよかっですよ。

 さあ、行って、練習ばしましょう。

弥彦) そりゃ、君は走れば、

 人が寄ってくるからね。

四三) えっ?

弥彦) 見たまえ、君の記事ばっかり!

 「金栗」「金栗」「ワールドレコード金栗」!

四三) あっ、いやいやいやいや、

 三島さんも載っとりますよ、ほら。

弥彦) よく見てみろ写真の下!

四三) 「Kanakuro」?

弥彦) 間違えてるんだ。君の記事に、

 僕の写真が使われている!

 そりゃ、僕の記録は平凡だ。

 12秒の男だよ、所詮は。ええ?

 ミスター12秒だよ! 期待されて

 ないんだ僕は。君と違って!

(バスルームに籠もる弥彦)

(ドアの前に立つ四三)

四三) だったら気楽じゃなかね!

(ドアを開ける四三)

(便器に座り、すすり泣く弥彦)

四三) 負けて当たり前。勝ったらもうけ!

 そぎゃん考えたら、

 少しは気楽じゃなかね?

弥彦) (泣きながら)高い…便器がぁ。

四三) はい?

弥彦) 高いよ便器が! 当てつけか!?

 つま先立ちで小便する度に、お前らが、

 脚の長い西洋人に勝てるわけがない

 と笑われてるような気になるよ。

 行きたまえ…早く行きたまえ!

(大森の部屋へ向かう四三)

 

**********

 

四三) 監督。監督! 監督!監督!

安仁子) ホワッツ?

四三) 監督と、話ばさせて下さい。

安仁子) ソーリー。

四三) 三島さん、相当参っとるようです。

 無理なかです。ほかの選手は、監督や

 コーチがおって、タイムば計ったり、

 走法の欠点ば指摘したりしとります。

 どうか…どうか監督のご指導ば…!

大森) (咳き込み)

四三) どいて下さい!

安仁子) ノー!

四三) 監督!

(ベッドにうずくまり、咳き込む大森)

大森) すまんな、金栗君。明日は…。

 (咳き込み)必ず…行くから。

 (咳き込み)ああ…。

安仁子) フォーティースリー、 

 察して下さい。プリーズ!

 

**********

 

「この度の大会は、日本人にとって、

最初で最後のオリンピックになるでしょう」

 

(回想)

治五郎) 日本のスポーツ界のために、

 黎明の鐘と、なってくれたまえ!

 

「黎明の鐘は、鳴りません」

 

**********

 

(弥彦の部屋に入る四三)

(窓から身を乗り出している弥彦)

四三) 三島さ~ん!

 三島さん、ここ3階、3階!

弥彦) 離せ…離してくれ!

四三) 三島さんいか~ん!

弥彦) 離せ~!

四三) 3階! 3階!

弥彦) 離せ! ああ~!

四三) いかん!

(弥彦をベッドに押し倒す四三)

四三) 何ばしよ…何ばしよっとか!

 いかん! 三島さん、三島さん!

 落ちて…落ちて脚ば折ったら

 走れんばい! 一生後悔するばい!

弥彦) すまん。

四三) 三島さん、

 我らの一歩は…日本人の一歩ばい! 

  なあ三島さん。速かろうが遅かろうが、

 我らの一歩には意味のあるったい!

弥彦) すまん…。

四三) 三島さん…。(泣)

(ベッドの上で抱きしめあう2人)

弥彦) (泣)

安仁子) 弥彦、ヒョウからの

 メッセージ…。ああっ!

弥彦) あっ、いやいや、あの…。

安仁子) いやっ…。(せき払い)

 置いときますね。オーケー。

四三) ノー、ノー、ノー、ノー…。

安仁子) ア~ハハ…!

四三) ノー、ノー、ノー、ノー!

安仁子) ヒョウ!

四三) ノー、ノー、ノー、

 ノー、ノー…違う…。

 

**********

 

ダニエル) ゴー!

(スタートの練習をする弥彦と四三)

四三) おっ、速か~! 

 速かですたい! ああ…。

 

**********

 

弥彦) すまんね。

四三) えっ?

弥彦) 短距離と長距離とでは、

 練習法も違うだろ。

四三) な~ん、大は、小ば兼ねますけん、

 長は、短ば、兼ねるとですよ。

弥彦) ちょっと何言ってるか分からない。

四三) うん。よかよか。

 

**********

 

メモ・大森) 「直立の姿勢にありて、両脚

 交互に膝を曲げて、股の前面を上体に

 接するよう、高く急速に上げるべし」

 

外国人選手) (英)日本のダンスかい?

弥彦) (英)そうかもね。

 

**********

 

「三島さんも徐々に、

痛快男子ぶりを発揮す」

 

弥彦) 何秒?

四三) えっ?

 あ~すんません、止め損ねたです。

弥彦) ヘ~イ!

四三) ハハ…。

弥彦) ヘイ…。

安仁子) 弥彦~!

弥彦) あっ! 金栗君。

安仁子) フォーティースリー!

四三) 大森夫人、どぎゃんしたとですか?

安仁子) スタートの、写真を撮ってきてと、

 ヒョウに言われたよ。

弥彦) あっ、僕の?

ダニエル) セット。ゴー!

(写真を撮る安仁子)

安仁子) オッケー!

弥彦) オーケー?

安仁子) オーケー!

弥彦) サンキュー。

安仁子) すばらしい!

弥彦) サンキュー。

安仁子) じゃあもう一回。

 

**********

 

「監督の持病も、回復の兆しを見せ…」

 

(安仁子が撮った写真を見る一同)

四三) うん?

大森) 安仁子、

 三島君を撮ってくれと言ったよね?

安仁子) イエッサー。

大森) スタートする瞬間を

 撮ってくれと言ったね?

安仁子) イエッサー。

大森) 花の写真を撮ってくれとは、

 言ってないよね?

安仁子) イエッサー。

大森) オーケー。次から気を付けてね。

(一枚の写真を手に取る大森)

弥彦) アメリカの選手ですね。

大森) 後ろ足が伸びきってないね。少し

 遊びがあった方が、瞬間的に力を入れ

 やすいってことじゃないかね?

弥彦) なるほど。

 

**********

 

<練習場>

大森) しっかりと地面を踏みつけていく、

 イメージで。

弥彦) はい。

大森) レディー…ゴー! 

 そうそうそうそう。

(スタートの練習を繰り返す弥彦)

 

**********

 

四三) あっ…あ~出た!

弥彦) えっ?

四三) やった…三島さん!

弥彦) やった?

四三) やったやった! 

 やったやったやった!

弥彦) 何秒だった?

四三) 12秒2です。

弥彦) 何だよ。12秒切ったかと思ったよ。

四三) ばってん、よか走りでした!

 一番の走りでした!

弥彦) ありがとうありがとう。

四三) あ~よかよか!

 

**********

 

<川に入って冷水浴をしている四三)

四三) ひゃあ~!

 

「冷水浴も、再開せり」

 

四三) ひゃあ~!

ダニエル) (スウェーデン語)

 なぜ急に水浴びを?

四三) あっ、ダニエル、カム ヒア。

ダニエル) バッテン。

四三) あっ、何が「ばってん」か。

ダニエル) バッテン。

四三) ばっ! 

 水んこつ、スウェーデン語じゃ、

 「バッテン」って言うとね?

 

志ん生) そんなうめえ話があるかって、

 思うでしょうが、本当なんです。

 バッテン。(水=Vatten)

 

四三) ばっ!

(水着姿の女性が通りかかる)

四三) ダニエル、あんおなごらは、

 何ばしよっとね?

ダニエル) (ス)お父さん。彼女たちは?

(女性達に同行する男に駆け寄るダニエル)

サミュエル) (英)飛び込みの選手さ。

ダニエル) カナクリサン。(英)父は、

 オリンピックの公式カメラマンです。

四三) あ~父ちゃんね。

サミュエル) カモン! カナクリサン。

四三) はい、今行きますけん。

(素っ裸で岸に上がる四三)

(悲鳴を上げる女性たち)

四三) すんまっせん。

 

オリンピックの記録映画が制作されたのは、

このストックホルム大会が最初でした。

 

**********

 

(自転車で四三の伴走をするダニエル)

ダニエル) カナクリサン。

 (英)なぜ走るのですか?

四三) (英)わからない。

ダニエル) (英)わからないで走っているの?

四三) アイ ドント ノー。

ダニエル) (英)

四三) アイ ドント ノー。

ダニエル) (英)

四三) アイ ドント ノー。

ダニエル) (英)

四三) アイ ドント ノー。

ダニエル) ウマノクソ、フンデル!

四三) ばっ!? ばばっ、はよ言わんね!

 

**********

 

(坂道でダッシュする四三)

(草原に座り、野花を手に取る四三)

四三) スウェーデンの、花…。

 風を…。スウェーデンの…。

 スウェーデンの…。

ダニエル) カナクリサン、ヤサシイ。

四三) アハハハ。

 

「奮闘の 声もとどろに吹きならす

すゑでんの野に 夏花ぞ咲く」

 

**********

 

(林道を走る四三)

ダニエル) ノーカナクリサン! 

 カナクリサン、ストップ!

 カナクリサン、ストップ!

四三) あっ!

ダニエル) カナクリサン! ディスウエー。

四三) あっ…アハハハ! 

 あっ、あっ、こっちね?

ダニエル) ウン。

四三) イッツ オッケーばい。

(いつも四三が間違う二股の道。17マイル

 の標識。地図に印をつけるダニエル)

 

**********

 

「6月23日、とうとう夜が、完全になくなる。

この季節スウェーデン人は、

広場に柱を立てて、踊り明かすという。

これが”夏至祭”」

 

**********

 

オリンピック開会式まであと8日

 

(音楽と騒ぐ声)

(飛び起きる四三)

(手拭いの目隠しとコルクの耳栓を外す)

四三) ああ~!

(窓から外を見る四三)

四三) ばっ…。

弥彦) (英)なんて騒音だ。もう限界だ。

 毎晩毎晩ドンチャン騒ぎ。

 いつまで続くんだ。

ダニエル) (英)今年はオリンピックイヤー

 だから特別だ。諦めてもらうしかない。

四三) おるが言うてきまっしょう。

 

**********

 

四三) すいまっせん! 

 ちょっとすいまっせん! すいません! 

 ばっ…。ちょっと…。音止めて下さい。

女性) (スウェーデン語)

四三) えっ? はっ?

ダニエル) (英)歌を唄ってほしいそうです。

弥彦) シング ア ソング?

女性) (スウェーデン語)

四三) どうします?

ダニエル) (英)日本の歌を。

弥彦) しかし、僕は歌は苦手だ。

 それに流行歌は知らん。

女性) 日本(ヤーパン)……。

(日本コールが始まる)

四三) ちょっ…何…? ちょっと…。

一同) ヤーパン、ヤーパン、ヤーパン…。

 ヤーパンヤーパンヤーパンヤーパン…。

(手拍子とヤーパンコール)

四三) ♪君が代は~

弥彦) 金栗君、君本気かね?

四三) ♪千代に~

四三・弥彦) ♪八千代に さざれ石の

 いわおとなりて こけのむすまで

(拍手と歓声)

(治五郎の姿を見つける四三)

四三) 嘉納先生!

治五郎) いや~遅れてすまなかった。

 いやすばらしい。それにしても、

 こんな大歓迎を受けるとはね。

弥彦) いや…たまたまです。

 たまたま、今…。

四三) 表彰台で歌うためん、

 予行演習です。

治五郎) お~そうかそうか!

 結構結構、大いに結構だ! フフフフ。

 

**********

 

<ホテル>

治五郎) 金栗君。

四三) はい。

治五郎) 俥屋さんから、預かってきた。

四三) あっ…すいまっせん。

(足袋を受け取る四三)

治五郎) あっ、大森君には…。

(一冊の本を出す治五郎)

 

それは大森が、日本を離れる前に、

命懸けでまとめた論文でした。

 

安仁子) (英)なんてすばらしい!!

治五郎) 永井君と可児君が動いて

 くれて、なんとか間に合った。

 帰ったら、礼を言いたまえ。

大森) はい…必ず。

 ありがとうございます。

治五郎) さて、どうかね?

 何か変わったことはあったかね?

 韋駄天! 痛快男子! これは?

内田) ああ…。

治五郎) 開会式のプログラムかね?

内田) ああ、はい。入場行進が、朝11時、

 日本は、イタリアの、次です。

治五郎) 英国は293人も出るのかね。

 我が国は、私と大森君が加わっても…

 4人か。ちょっと格好つかんな、ハハハ。

内田) 京都帝国大学の田島氏が、

 ベルリンに留学中ですが。

治五郎) お~入ってもらおう。

内田) はい。

治五郎) 国旗を三島君が、え~金栗君

 には、プラカードを持ってもらおう。

弥彦) はい。

内田) 事務局から、プラカードの表記に

 ついての問い合わせが。

治五郎) 表記? あ~考えもしなかったな。

大森) 国際大会ですので、

 やはり、英語で「JAPAN」と。

治五郎) うん。よかろう。

四三) いや…「日本」でお願いします。

治五郎) うん?

四三) 日本は日本です。

(人差し指にインクをつけ、

 紙に漢字を書く四三)

四三) そのまま、「日本」と書くべきです。

(笑い声)

四三) そうでなければ、おるは出ません!

 

**********

 

もうもうもう、弥彦と四三が好きすぎる、面白す

ぎる! 語り出したら止まらない自信があるよ。

 

我らの一歩は…日本人の一歩ばい! 
なあ三島さん。速かろうが遅かろうが、
我らの一歩には意味のあるったい!

 

彼らが日本人の一歩となってくれたんだなぁ…。

劣悪な環境の中、本当に頑張ってくれたと思う。

 

ところで、残念な出来事があって、編集し直し、

撮り直しとなる事態となってしまったけれど…。

今回の分は、あえて編集前バージョンで書き

起こししてあります。本当に本当に、残念です。

既に放送された分は、大変だろうけれどカット

ではなく、撮り直しでブルーレイにしてほしい。

播磨屋のシーン、ちゃんと残してほしいです。

 


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