「まんぷく」第36回～皆さんは、世の中の役に立つ仕事をしてるの

「まんぷく」 第36回
第６週「お塩を作るんですか！？」
皆さんは、世の中の役に立つ仕事をしてるの

しばらく、注意喚起させていただきます。

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「日々のダダ漏れ」

ついに、

塩作りのための準備が整いました。

倉庫には、

塩の花からにがりを抜くための、

居出場（いだしば）が作られ、

外には、鹹水を煮詰めるための大釜。

雨よけの屋根もついています。

そして…砂浜に並んだ、81枚の鉄板。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

萬平）　え～まず最初に、

　鉄板をよく拭いて、さびを落とす。

神部）　これをやらんと、

　茶色い塩が出来てしまうんや。

萬平）　次に、

　海からくみ上げてきた海水を、

　バケツで、鉄板に流して、

　水分をとばす。

神部）　ちょっとずつ流すんやぞ。

萬平）　この作業を繰り返して繰り返して、

　塩分濃度の高い鹹水を作るんだ。

福子）　いよいよ、始まるんやね。

タカ）　うん。

鈴）　やっとここまで来た。

萬平）　次に鹹水を、

　あの大釜で煮詰めて、

　更に、水分を、蒸発させていく。

　煮詰めていくと、だんだんだんだん、

　結晶が出来てくる。これが、塩の花だ。

　その塩の花を、あの居出場に広げ、

　残りの水分、にがりを取っていく。

　そうすると最後に、塩が残るという訳だ。

神部）　みんな、流れは分かったか。

一同）　はい。

小松原）　分かりました。

福子）　みんな張り切ってる。

タカ）　うん。

鈴）　また、おなかすかせて

　帰ってくるんやわ。

萬平）　よし。じゃあやってみよう。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜砂浜＞

（バケツに海水を汲む男達）

萬平）　砂を混じらせるなよ。

神部）　はい。

野村）　こんなもんか。

（鉄板の上に海水を流す男たち）

神部）　おい！多すぎるぞ野村！

佐久間）　水分蒸発する前に

　こぼれ落ちるぞ。

堺）　あっ！バケツ置くの忘れた！

（流れてくる水を手で受け止める堺）

森本）　あほじゃ。

高木）　これはなかなか大変や。

萬平）　水が足りなくなったら

　すぐに汲みに行け。

神部）　よし。

萬平）　ほら！

神部）　走れ走れ～！

増田）　よっしゃ～！

萬平）　もたもたするな！

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＜母屋・台所＞

福子）　今日は、

　みんなにごちそう作ってあげないと。

タカ）　仕事始めの日やもんね。

鈴）　こんなにお金使て…。

福子）　今日だけよ、お母さん。

鈴）　うちは、ほんまに、塩屋になるの？

　私は、塩屋の、飯炊き女になるわけ？

タカ）　まだ言うてる。

福子)　もう腹をくくったんやなかったの？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜砂浜＞

赤津）　ああ。

堀）　こりゃがばいきつか！

赤津）　あと何杯や。

岡）　あ～腕がパンパンや。

神部）　そんなんやと先が思いやられるぞ。

倉永）　こんな力仕事とは思わなんだ。

峰岸）　同じことばっかり

　繰り返すのはもう嫌や。

神部）　萬平さん…。

萬平）　よし。じゃあみんなで

　歌を歌いながらやろう。

佐久間）　歌？

萬平）　黙々とやってるだけじゃ

　確かに気が滅入ってくる。

神部）　よし、歌おう！

小松原）　何を歌うんですか？

神部）　♪守るも攻むるもくろがねの～

森本）　やめい！

神部）　えっ？

森本）　軍歌はもううんざりじゃ！

堺）　僕もです。

岡）　戦争はもう終わったんや。

大和田）　今の、

　はやり歌でええんやないの。

萬平）　♪赤いリンゴにくちびるよせて

森本）　そんな歌じゃ…。

萬平・神部）　♪だまってみている青い空

一同）　♪リンゴはなんにも

　いわないけれどリンゴの気持ちは～

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＜広間＞

小松原）　巻きずし！

福子）　あ～！いやいやいやいや…。

　今日はおめでたい日ですから。

タカ）　おばあちゃんの得意料理。ねっ。

鈴）　こんなん料理のうちに入りません。

福子）　さあ、皆さんどうぞ召し上がれ。

鈴）　あなたたち手は洗ったの？

タカ）　そんなに慌てなくても…。

福子）　萬平さんも、どうぞ。

萬平）　ありがとう。

神部）　うまい！

　巻きずしなんて何年ぶりや。

小松原）　おいしいです大奥様。

鈴）　晩ごはんはもう、

　ごちそうは、ありませんからね。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜砂浜＞

（作業を始める男達）

一同）　♪青い空

　リンゴはなんにもいわないけれど

　リンゴの気持ちはよくわかる～

（大釜に水を入れる萬平たち）

一同）　♪リンゴ可愛や可愛やリンゴ

タカ）　これが鹹水？

萬平）　なめてみろタカちゃん。

タカ）　うわっ、しょっぱい！

一同）　（笑）

福子）　これを煮詰めていくんですね。

萬平）　うん。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

鈴）　ああ…疲れた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（大釜を見つめる一同）

萬平）　煮詰まってきたな。

タカ）　これが塩の花になるの？

福子）　そうよ。うん。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（うたた寝から目覚める鈴）

鈴）　はあ…もうこんな時間。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜居出場＞

萬平）　よし、いいだろう。

小松原）　出来たんですか？

（布を広げる萬平）

萬平）　出来た。

福子）　みんなで作った塩よ。

（ポカンとする男たち）

鈴）　福子、そろそろ、晩ご飯の支度…。

萬平）　どうした？うれしくないのか？

（布の上に、丼一杯ほどの塩）

岡）　これだけ？

森本）　丸一日かけて、

　これだけしか出来んのか。

鈴）　それっぽっち？

小松原）　こんなんで、

　商売になるんですか。

福子）　最初っからうまくはできないわよ。

神部）　そうや。

森本）　ほいじゃあ、

　明日はこの倍出来るんですか？

萬平）　慣れてくれば、もっと出来るよう

　になる。夏になれば２倍も３倍も作れ

　るようになるさ。

鈴）　そんなに簡単に言うていいの？

　萬平さん。今ならまだ、間に合いますよ。

タカ）　何が？

鈴）　塩作りはやめるのよ。商売にならない

　ものに手を出したって仕方ないでしょう？

萬平）　そんな…。

福子）　そうですね。

　お母さんの、言うとおりかも。

萬平）　えっ。

鈴）　まあ、珍しく、意見が合ったわね。

神部）　奥様…。

福子）　どうしますか？

　皆さん、塩作り、諦めますか？よし。

　もう、やりたくない人は、大阪に帰っ

　てもええわ。今日までのお給料は

　お支払いしますから。

神部）　俺は諦めませんよ。諦めるわけ

　ないやないですか！せっかくここまで

　頑張ってきたんやから！

（一同を見る神部）

福子）　ほかの、みんなは？

鈴）　正直に言いなさい。

（手を上げる小松原）

小松原）　続けます。

岡）　やりますよ、わしも。

男性）　俺も続けます。

男性）　俺もやります。

男性）　やります。

男性）　わいもやるぞ。

福子）　（涙）森本さんは？

森本）　大阪に帰っても、

　仕事なんかありゃせんわ。

福子）　そしたらみんな

　頑張ってくれるんですね！

一同）　はい。

タカ）　よかった。

福子）　このお塩、清香軒さんに

　差し上げませんか？

萬平）　えっ。

鈴）　売り物やないの？

福子）　塩が出来たらあげるって約束

　したやない。みんなで行きましょうよ。

タカ）　みんなで？

福子）　そりゃあもうみんなで

　作った塩やもん。

萬平）　じゃあ行くか。

一同）　はい！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜清香軒＞

まさの）　これ、

　うちらに下さるんですか？

福子）　どうぞ。

竹春）　おおきに！

　ありがとうございます！

まさの）　ありがとうございます。

竹春）　いや～うれしいなあ！

　ありがたいわ。

まさの）　そや、あんた、

　ラーメン作ってあげたら？

竹春）　そうや。食べてってぇな。

　タダでええから。

福子）　タダ？

萬平）　いやいや、そんな…。

竹春）　わいが作りたいんや！

まさの）　うちのほんまの味、

　知ってもらいたいんです。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜清香軒＞

（表の看板に貸し切りの貼り紙）

竹春）　塩気が足らん、

　塩気が足らん言われて、今まで、

　どんだけ悔しい思いをしてきたか。

まさの）　そうや！

（ラーメン作りを見守る福子たち）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

まさの）　はい、どうぞ。

竹春)　これが、清香軒のラーメンや！

男性）　ええ匂いやな。

男性）　うまそう。

萬平）　じゃあ、頂こうか。

一同）　頂きます！

竹春）　食べて食べて。

神部）　うまいです。

竹春）　そうか。

鈴）　今までと、全然違うわ。

福子）　ほんまに。

タカ）　スープがおいしい。

萬平）　塩加減でこんなに違うんだな。

竹春）　何やもう…うれしいなあ！

まさの）　あんた…。

竹春）　ありがたいわ。

まさの）　ありがとう、ほんまに。

竹春）　ラーメン屋続けててよかったな。

まさの）　こんなええ塩作って

　もらえるやなんてな。

竹春）　おおきに！

まさの）　おおきに！

竹春）　ほんまおおきに！おおきに！

竹春・まさの）　（泣）

福子）　結婚する前、

　萬平さんが私に言うたんです。

　世の中の役に立つ仕事がしたい。

　みんなが喜んでくれるような仕事

　がしたいって。覚えてますか？

萬平）　ああ。

（回想）

萬平）　とにかく僕は、

　世の中の役に立つ仕事がしたい。

　みんなが喜んでくれるような仕事を。

福子）　お塩作りは大変やけど、

　こんなおいしいラーメンが出来て、

　こんなに喜んでくれる人がいるんよ。

竹春)　そうや、そうや。

福子）　皆さんは、世の中の役に立つ

　仕事をしてるの。そやから、頑張って

　お塩を作って下さい。私も一生懸命、

　皆さんのお世話をしますから。

タカ）　私も！おばあちゃん。

鈴）　そうね。

萬平）　お義母さん…。

神部）　奥様の言うとおりや！

　みんな頑張ろう！

小松原）　明日はもっとぎょうさんの

　塩が出来ますよ！

岡）　やってやろやないか！

（盛り上がる一同）

竹春）　あのみんな！

　麺がのびるで！はよ食うて！

（笑い声）

竹春）　はよ食べて。食べて食べて。

タカ）　おいしいね、おばあちゃん。

鈴）　うん。そうやなあ。

竹春）　何杯でもいったって…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

塩作りの準備が整い、改めて塩作りの課程を

丁寧に見せてくれるところがうれしい。単純作

業かつ重労働なのも画面から伝わってくるし、

あれだけやってたった丼一杯の塩しかできな

かったことにガッカリする気持ちもよくわかる。

ナレーションだけの説明とか結果だけ見せる

だけでは伝わらない、映像で見せる説得力！

鈴さんの塩が「茶色い！」の声もちゃんと反映

されていて、鉄板をよく洗うこととのセリフがあ

ったし、黙々と作業を続けるのは気が滅入る

から歌を歌おうというのも、はんこ作りで福子

が言葉遊びを始めたエピソードを思い出すし。

塩気がないすいとんにうんざりした日々、塩気

のないラーメンからの、塩味が効いたラーメン。

全てが、さりげなくつながっている感じがいい。

そしてやっぱり、物語を動かすのは鈴さんで。

彼女の、正論という名の愚痴や文句を利用し

て、福ちゃんが動く！鈴さんの存在は、実に

便利で役に立つ装置なのよね、ドラマ的にも。

鈴）　塩作りはやめるのよ。商売にならない
　ものに手を出したって仕方ないでしょう？
萬平）　そんな…。
福子）　そうですね。
　お母さんの、言うとおりかも。
萬平）　えっ。
鈴）　まあ、珍しく、意見が合ったわね。
神部）　奥様…。
福子）　どうしますか？
　皆さん、塩作り、諦めますか？よし。
　もう、やりたくない人は、大阪に帰っ

　てもええわ。今日までのお給料は

　お支払いしますから。

大阪に帰っても、帰る家も仕事もない人たち。

さあどうする？帰る？と聞かれてしまえば、

選択肢などはないことを思い知ることになる。

仕事はきつくても、ここにいれば寝る場所も、

お風呂も食事も、そして、仲間もいるからね。

みんなが残って頑張ると言ってくれたところで

清香園に塩をみんなで持って行こうと提案す

る福子は、やっぱりめっちゃデキる子だわ～。

今、誰よりも塩を必要としている人の元に、自

分たちが作った塩を届け、喜ぶ人の姿を直に