「カーネーション」(再放送)第49回~第9週「いつも想う」 | 日々のダダ漏れ

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「カーネーション」 
第49回~第9週 「いつも想う」

 

 

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「日々のダダ漏れ」

 

 

昭和12年(1937)

 

勘助) 赤紙来てもうた。

糸子) えっ?

勘助) 赤紙や。

糸子) 赤紙って…あの赤紙か?

勘助) そうや。

糸子) 兵隊になんけ? あんたが?

勘助) うん。

糸子) へえ~

 兵隊なってどこ行くねん?

勘助) そら…大陸やろ。

糸子) あ~ああ、

 あの、支那事変ちゅうやつけ?

勘助) うん…。

糸子) へえ~大陸…。

勘助) はあ…嫌やの~。

糸子) 何が嫌やねん。

 名誉なこっちゃんか、

 兵隊に選ばれるやて。

勘助) 名誉なんかいらんわ。

 なりたいないわ、兵隊なんか。

糸子) 何でや?

勘助) そやかて軍隊なんか

 絶対、工場よりきついんやで。

 鬼みたいな奴おって、

 そいつに毎日殴られんやで。

 うまいもんも食われへんしな。

 弾当たったら、死ぬしな。

糸子) 死なへんわ!

 うちのお父ちゃんらかて、

 前の戦争行ったけど、

 あんない、帰ってきてるやんか。

勘助) うちのお父ちゃんは、

 青島で赤痢で死んだわしよ。

糸子) そら、運が悪かったんやな。

勘助) 俺もどうせ赤痢で死ぬんじょ。

糸子) 赤痢になる前に勝って

 帰ってきたらええんやろ。

 しゃきっとせえ、ほれ!

 

**********

 

勘助がそんなしみったれた事

ばっかし言うさかい、

出征は名誉なこっちゃのに、

何やかわいそうに思えてきて、

心の底から祝うちゃる気ぃには

なれませんでした。

 

善作) まあ、そんなもん

 当たらん当たらん、弾やら!

勘助) ほやろか…。

善作) 当たらへんて。

 あのなあ、兵隊ちゅうんは、皆が皆

 ドンパチしてる訳やないんやど。

保男) ほうよ。そんな派手な事は

 めったにでけへん。まあ~今日も

 訓練、明日も訓練、ほんでたまに

 はな、森の中にじ~っと隠れとっ

 たりして。

善作) そらわしらかて日露ん時は

 もう生きて、岸和田の土は踏めん

 思てげっそりしたもんや。そやけ

 どまあまあ、こないして、岸和田

 で毎晩、飲んだくれてらし。

勘助) そやな。

栄作) そやけどお前、腹だけは

 壊さんようにせえよ。

善作) せやせや。

 腹だけは命取りやしな。

勘助) 腹な。大事にすら。

糸子) 腹巻き持っていきや。

 うちがこさえたろか?

勘助) うん、頼むわ。

糸子) あんた食い意地はってる

 さかいなあ。ちょっと見つけた

 からて変なもん食べなや。

勘助) 食うか!

栄作) 食う食う。

糸子) なあ。

勘助) 食わへんわ。

 

おっちゃんらの話聞いてるうちに、

勘助も腹さえ壊さんかったらどない

かなる。無事に帰ってこれるちゅう

気ぃがしてきました。

 

そやけど、やっぱしおばちゃんは、

そんな簡単にはいかんようでした。

 

(隅に座り一点を見つめている玉枝)

 

**********

 

<朝・表>

糸子) こないしたら勘助も、

 えらい立派な男に見えるやん。

静子) なあ。

糸子) ウフフ!

善作) ほんで、誰がやる?

保男) そら、町内会長やろが。

善作) 町内会長!

町内会長) いやいや、わし昨日から

 風邪ひいて声が出えへん。

保男) 何が風邪やねん。

町内会長) あ~あんたやって。

善作) 電気屋、電気屋。

栄作) わしより、善ちゃんがええで。

善作) わしの喉はやな、謡用や。

 こういう景気づけはな、やっぱり

 この、若いやつの声がええねん。

 お前やれ!

勝) え~わしですか?

兵隊) 早うせえ!

栄作) 早うしようや。

勝) やっぱしお父さんの方が

 いいですて!

善作) あかんあかん。

兵隊) 早うせえ!

栄作) あ…こ…この者がやります。

善作) わ…分かりました。やります。

 ほなら、あの…五軒町一同、

 安岡勘助君の出征を祝して、

 万歳三唱! ほんならいくで。

栄作) ええからやろう。

善作) 万歳!

一同) 万歳!

善作) 万歳!

一同) 万歳!

善作) 万歳!

一同) 万歳!

(一緒に万歳する勘助)

兵隊) 君はやらんでええんや!

(笑い声)

平吉) 小原。

糸子) ん?

平吉) 俺、帰るよって。

糸子) 何でや? 

 最後まで見送っちゃりや。

平吉) 嫌や。

糸子) え?

平吉) 見てられへんわ、哀れで。

糸子) 何がや?

 何でそんな事言うんよ!?

 せっかくの、

 めでたい出征の日ぃやのに…。

 

**********

 

<安岡家>

 

そうして、出征してった勘助からは、

ふたつきほどして、便りが届きました。

 

玉枝) ヒヒヒヒッ、

 見ちゃって見ちゃって。

(葉書を見る糸子)

糸子) きったない字ぃやな、

 相変わらず。

(笑い声)

糸子) 何やこれ?

玉枝) ああ、あの子、

 アホやさかいな、書いたらいかん

 事書いたんやと思うねん。

糸子) ほな、軍の人に、

 消されたちゅう事?

八重子) はあ…そやろな。

糸子) え~?

 けどこんな…墨でこんなん!

 せっかくの葉書に!

玉枝) まあまあ、読んじゃってや。

 

**********

 

<夜・小原家>

(食事をしている一同)

糸子) ほんまあの墨許せん。

勝) うん?

 

人の葉書を勝手に塗り潰す、

その胸くそ悪い墨みたいなもんは、

そのあとも、うちらの生活を、

ちょっとずつ塗り潰し始めました。

 

初め、北支事変て呼ばれちゃった

大陸とのゴタゴタは、途中から

支那事変ちゅう呼び名に変わって、

何や知らん、政府はえらいのぼせ

上がってるようでした。

 

次の年には、国家総動員法ちゅう

のがしかれて、いわく、「今はお国

の非常時やさかい、国民はとにか

く軍に協力せんならんど! ぜいた

くすな、節約せえ。余った分を、軍

に回す。お国の勝利のためじゃ!」

 

**********

 

昭和14年(1939)

 

そのあとすぐ、

綿製品非常管理ちゅうて、

綿は作るんも売るんも、

規制がかかる事になってしもて、

糸へんの町大阪は、

どこもかしこもてんやわんや。

新聞によると、日本はあちこちで

勝利を収めてる割に、戦争は

一向に終わる気配ものうて、

先月昭和14年7月には、

国民徴用令公布。

国民はますますの節約と、

軍への協力を求められており、

一方そんな中、うちは、

ごっつい調子に乗ってました。

 

客) おはようさん。

客) 朝から熱いな。

糸子) なあ、かなんでなあ。

 よいしょ。

客) まあ、まあまあ。

客) はれ~もうパンパンやな。

糸子) ああ、かなんで、

 この忙しいのに。

 ウフフフ、まあどうぞ。

客) おおきに。

糸子) うん、よいしょ。

神田) おはようさ~ん。

3人) おはようさん。

糸子) ちょっと待ってな。静子、静子。

静子) はい。

糸子) 神田さんのワンピース

 出したげて。

静子) はい。

 ええのんでけてるよ~。

神田) いや~うれしい。

 

政府が戦争に

頭から湯気立ててる一方、

岸和田の女性らも、

洋装ちゅう新しいおしゃれに、

湯気立ててました。

 

国家総動員法も何のその。

毎日お客さんがひっきりなしに

洋服を作りに来て、

小原洋装店は、

空前の繁盛ぶりです。

 

糸子) あるで。ええのん。

客) ほんま?

糸子) うん。

 ちょっと待っちゃって。

 あ、大山さん。

 「婦人美粧」、今月の。

 またええのんようさんあるし、

 見とって。

大山) おおきに。

(奥へ行き、見本の生地の

 束を手に取る糸子)

糸子) ああ…あっ!

(その場に座り込む糸子)

昌子) 先生? 

 先生、大丈夫ですか!?

 どないしよ?

 

**********

 

<二階>

昌子) 大将! 先生が…。

勝) え?

昌子) はよ来て!

勝) どないしたんや!?

昌子) はよ!

勝) どないした? どないした!?

(一階におりる勝)

糸子) なあ、見て~。ええやろ?

 スフなんか一個も入ってへんで。

 正真正銘の純綿やで!

客) ほんまに~? これしようかな。

糸子) なあ、ええやろ?

 よっしゃ。そこ立って。よいしょ。

(目眩に座り込む糸子)

勝) い…糸子!

昌子) 先生!

 

**********

 

(店の表に車が止まり、

 運転手がおりてくる)

運転手) おお、ホホッ、

 お嬢ちゃんは、優子様ですかいな?

 

**********

 

(居間に敷いた布団に寝ている糸子)

善作) おお、来たか? 出迎え。

千代) へえ。

 今、前に車止めてもうてます。

糸子) ほんま大丈夫や。

 ちょっと立ちくらみしただけや。

ハル・善作) 大丈夫やない!

善作) もうお前の言う事は聞かん。

 神戸へ行け。無事に子どもが

 産まれるまで帰ってくんな。

 ここにおったらなんぼ言うたかて

 お前、仕事するやろ。

糸子) けど、

 うちがいてへんかったら店が…。

勝) 店はどないでもなるて。僕かて、

 静ちゃんかていてんねやさかい。

善作) お前だけの子やない。

 勝君の子で、わしの孫や。

ハル) うちの、ひ孫や。

善作・ハル) 言う事聞け!

 

**********

 

(車に乗る糸子)

勝) 気ぃ付けえ。

糸子) うん。よいしょ。

善作) お母ちゃんがな、

 神戸へ行くでえ。

 優ちゃんの弟が産まれるよってな。

糸子) 弟かどうか知らんでえ。

善作) いや、今度は男や。

 小原の跡取りや。

 よかったなあ、優ちゃん。弟やで。

運転手) ほな失礼致します。

千代) お願いします。

 ほな、気ぃ付けてな。

糸子) うん。

善作) 行っといでえ。行っといでえ。

 

お母ちゃんは弟かどうか知らんし、

店が心配でしゃあないです。

 

**********
 

当時の、戦争の意味がよくわかっていない

人の、戦争に行く事を名誉だと思いこまさ

れていた人の反応が…糸子なのだと思う。

それでも、葉書が墨で塗り潰される薄気味

悪さを感じる感性はあるのよね、糸子にも。

 

戦争が近づいていても、子どもが生まれそ

うでも、商売の事で頭がいっぱいの糸子。

いや~すごいと思うけど、友達になりたい

とは思えないし、友達になれる気がしない。

ひたすら、周りの人は寛大だなあと思うw

 

 

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