「あまちゃん」第10回～場所じゃなくて、人なんじゃないかな

「あまちゃん」 第10回（完全版）
第２週「おら、東京さかえりたくねぇ」
場所じゃなくて、人なんじゃないかな

正宗）　アキ。

初めて見る娘のハツラツとした姿に、
アキのパパは、驚きを隠せませんでした。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜袖が浜＞

夏）　アキ！

　早くバケツ洗って持ってこい。
アキ）　あ、はい！
（離れた所から見ている正宗と春子）

正宗）　初めて見た、あいつ、

　あんなふうに笑うんだな。

春子）　万が一東京行かないでここで

　暮らしてたら、あたしもあんなふうに

　笑ってたのかな。

（想像してみる春子）

春子）　いらっしゃいませ！

　どうぞどうぞ、もっと近くで。

　どうですか？ハハハ！

春子）　いや、無理無理！絶対無理だわ。

正宗）　だろうね。

春子）　私にできない事を、アキが

　代わりにやってくれてんのかな。

　だとしたら、なんか複雑。

アキ）　ウニあります、

　いらっしゃいませ！こっちですよ！
春子）　駄目だよ行っちゃ。
正宗）　でも、せっかく来たんだし

　ウニ食べたいし。
春子）　今パパの顔見たら、

　いつもの暗いアキに戻っちゃう。

　今日は、遠くから見るだけ。
正宗）　うん。

アキ）　皆さん、海女漁が行われて

　いるのは、世界中で、日本と韓国

　だけなんです。
観光客）　ほう！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

屈託のない笑顔を振りまくアキを、
遠くから見守る人間が、

実はもう一人いました。

＜監視小屋＞

（双眼鏡で見ているヒロシ）

アキの声）　つまり、北の海女は、世界

　で一番北にいる海女さんなんです。
観光客の声）　へえ～！

　すごいね。そうなんだ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜喫茶リアス＞
春子）　あらいらっしゃい。
ヒロシ）　あ…娘さん、頑張ってますね。
春子）　フフフ！
ヒロシ）　変わってますね。高校生なのに、
　海女さんになりたいなんて。
春子）　う～ん、でもまあそれも、

　夏休みの間だけ。
ヒロシ）　ああ、そうなんだ。
春子）　うん。はい、どうぞ。

（コーヒーを出す春子）
春子）　先生お元気？
ヒロシ）　先生？
春子）　私ね、足立先生の教え子なの。
ヒロシ）　あ…親父は、まあ、

　体は元気です。
春子）　「体は」って？
ヒロシ）　すいません。もう、何年も

　まともに口きいてねえから。
春子）　いらっしゃいませ！
ヒロシ）　え？
春子）　７時半からスナックなの、
　お酒注文してもらっていい？
ヒロシ）　じゃあ、ビール。
春子）　は～いビールね。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜スナック梨明日＞
春子）　東京のホテルに就職したん

　でしょう？何で辞めちゃったの？

　あ、ごめん。言いたくないならいい

　よ別に。そんなに興味あったわけ

　じゃないし。
ヒロシ）　何か…何すかね。ハハ！
春子）　東京合わなかった？

ヒロシ）　…つうか、俺に合う場所なんか、
　この国にあんのかなと思いますね。

春子）　ふふ。

ヒロシ）　北三陸も好きじゃないし、

　盛岡行ってもピンとこなかったし、

　東京行ったら何とかなるかと

　思ったらどうにもなんねえし。

春子）　わかる。

ヒロシ）　え？

春子）　田舎が嫌で飛び出した奴って、

　東京行っても駄目よね。逆にさ、

　田舎が好きな人っていうのは、

　東京に行ったら行ったで案外

　うまくやっていけんのよきっと。

　結局、場所じゃなくて、
　人なんじゃないかなって思う最近。

　フフ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜海沿いの道＞

アキ）　おはようございます！

（絣半纏を着たアキが、

海に向かっている）
正宗）　アキ！
アキ）　パパ。
正宗）　お別れを言いに来たよ。

（タクシーの運転席から顔を出す正宗）

正宗）　元気でな。パパ東京帰るから。
アキ）　まだいたんだ？
正宗）　うん、まだいた。
　名残惜しくてさ、ブラブラしてた。
アキ）　まめぶ食べた？
正宗）　まめぶ？あの、

　甘いんだかしょっぱいんだか

　ハッキリしないスープ？
アキ）　そこがいいんだよ。

　わかってないな。
正宗）　そうなんだ。似合うな、それ。
アキ）　ヘヘ！
正宗）　潜ってウニ取るのか？
アキ）　ばあちゃんが、

　危ないからまだ駄目って。
正宗）　そうか。
アキ）　パパ、そろそろ行かなきゃ。
正宗）　パパいなくて寂しくないのか？
アキ）　ママがいるから平気。
正宗）　ふ～ん。

　ママと２人で、何喋るんだ？
アキ）　パパの事。
正宗）　嘘！どんな事？
アキ）　大体悪口。

　多分手紙に書いてあるよ。
正宗）　そうか。ど～れ、じゃあ、
　手紙読みに帰るか！また来るわ。
アキ）　また来るの？
正宗）　いや、わかんないけど。
アキ）　じゃあ、今度来る時まで、

　潜れるようになってる。
正宗）　うん。頑張れ。
アキ）　うん、頑張る！
正宗）　ママの事、よろしく頼んだぞ！
（頷き、手を振るアキ）

（振り返す正宗）

（海へ向かうアキ）

（振り返り手を振るアキに振り返す正宗）

（バックミラーに「家内安全」のお守りが

ぶら下がる正宗のタクシー）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜浜辺＞

アキは焦っていました。
８月に入っても、

海女クラブの会長から、
素潜りの許可が下りないのです。
このままじゃ夏休みが終わってしまう。
海女さんになる前に、
２学期が始まってしまう。

（シャッター音）
（掃除する手を止め、辺りを見回すアキ）

（誰もいない）

（シャッター音）

（物陰に人の気配を感じ、足を止める）

（シャッター音）

ヒビキ）　…あ！

（カメラを持った男が顔を出す）
アキ）　何ですか？

（男に駆け寄るアキ）

アキ）　何ですか？
ヒビキ）　ふん。
アキ）　ちょっと、何撮ったんですか？

　あ！ちょっと！
（犬の吠える声）　

（逃げる男）　
アキ）　ちょっと！
（追いかけるアキ）　

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜天野家＞
春子）　何それキモ～い！

　そいつ危ないじゃん！
アキ）　追いかけたんだけど、

　見失っちゃって。
春子）　追いかけたの？あんたバカ？
　そういうね、盗撮するような男が
　キレたら一番怖いんだからね。
アキ）　ごめん。
春子）　警察電話した方がいいね。
　あんた何か特徴覚えてる？
夏）　大袈裟だな、母ちゃんは。
春子）　何が？
夏）　昔から海女のシーズンは、

　カメラ小僧のシーズンでもあんのさ。

　今に始まった事じゃねえ。
アキ）　そうなの？
夏）　んだ。減るもんじゃなし、

　撮られてるうちが華だぞ。
春子）　ちょっと、変な事言わないでよ。

　あんたら大人がちゃんと、見張るっ

　て言うから、海女やらせてるんです。

　約束が違う。
夏）　そんな悪い奴じゃねえって。

　ちょっと喋ったけど。
春子）　喋ったの？変質者と喋ったの？
夏）　ありゃ変質者じゃねえ。

　大事な客だ。
春子）　ふん、あきれた。田舎もんは

　簡単に人を信用しちゃうんだよね。
夏）　東京の人は被害妄想が強えからな。
春子）　被害妄想？
夏）　自分の娘がなんぼ可愛いか

　わからんが、他人を信用できな

　きゃこの町じゃ暮らしていけね。

　さあ、帰れ帰れ！さっさと東京帰れ！
春子）　言われなくても帰りますよ！
夏）　ああ帰れ帰れ！
春子）　２学期が始まったら！
夏）　ふん！
春子）　ふん！

２学期…その言葉を聞くと、
アキは切なくなりました。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜浜辺＞

安部）　これ逆だ！

アキ）　あ！

三陸の海の幸や、
海女さんたちとの楽しいお喋りとも、
あと２週間でお別れなんです。

（気配を感じ、振り向くアキ）

（離れた所から春子が見ている）
安部）　ああ！すげえな母ちゃん、

　娘も気になる、紫外線も気になるで、

　ロボコップみでえだ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜浅瀬＞
アキ）　ぷわ！

　１分行ったべ？美寿々さん！
美寿々）　46秒だ！
アキ）　嘘～！
かつ枝）　ゆっくり数えろ！
　いざとなったら助けに行くから。
美寿々）　１～２～３！４～！

　５～６～７～８～９～10～！
（岩場に座り見ている春子）

（アキを盗撮する男）
（シャッター音）
春子）　うん？
ヒビキ）　やべ！
春子）　ちょっと、何してんのよ

　あんた！ちょっと待ちなさい！

　待ちなさいって！ちょっと！

　待ちなさいよ！変態、変態！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜監視小屋＞
（ノック）
春子）　変態！
ヒロシ）　すいません！
春子）　変態、変態、変態、変態！
ヒロシ）　え…。
春子）　変態！
ヒロシ）　え…え？
春子）　変態、変態！
ヒロシ）　すいません！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（海に潜り、

指で時間を計っているアキ）

（サイレン）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜海沿いの道＞
春子）　変態は？
美寿々）　ごめん！春ちゃん見失った。
春子）　安部ちゃんそれ（ウニ）は？
安部）　いざとなったら

　ぶつけてやっぺと思って。
春子）　…で？アキは？

安部）　え？
美寿々）　あ…。
安部）　じぇじぇ！

（サイレン）

安部）　流されちまうだ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜浅瀬＞
春子）　アキ！
美寿々）　アキちゃん！沈んでねえか？
春子）　い、いないでしょう。
美寿々）　あ！

（ストップウォッチを見る美寿々）

美寿々）　あ！
春子）　あれ？アキ！アキ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（海に潜っているアキ）

アキ）　ぷあ！美寿々さん何秒？
　あれ？うわ！

（沖まで流されているアキ）

アキ）　あ！足が着かない！

　しゃっこい、しゃっこい！

　うわ！うわ！

（仰向けになって海に浮かぶアキ）

アキ）　じぇじぇ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜漁協＞

（ドライヤーで髪を乾かすアキ）
夏）　親が見張ってて、

　死にかけてりゃ、世話ねえな。
春子）　あんたら大人がちゃんと

　見てないからでしょう。
夏）　ちゃんと見てたのに、誰かさん

　がサイレン鳴らしたんだべ。
長内）　まあまあ夏さん、たまたま

　漁船が通りかかって助かったん

　だし、皆１回は経験する事だべ。
春子）　だからアキは、浜でゴミ拾っ

　たり、タオル干したりしてなさい。

　海危ないんだから。
夏）　危ねえ目さ遭って学ぶ事もある。
　過保護にするばっかりが親でねえど。
アキ）　あ！美寿々さん、何秒だった？
美寿々）　あっごめん！

　１分43秒で、止めちゃった。
アキ）　…て事は？
夏）　合格だ。
アキ）　やった～！

（歓声）
夏）　ちょっと見せろ！
美寿々）　見てみな！証拠証拠。

（ストップウォッチを見せる）

ようやくアキは、新人海女として、
スタート地点に立ったのです。

美寿々）　自主トレもやれよ。
アキ）　頑張る！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

夫婦で話しているところを見ると、正宗は

ちゃんと春子のことがわかっている感じ

だし、向き合おうとしていないのは、春子

のほうのような気が・・・。

どうやら、いまだ「自分探しの旅」の途中

なのか、いつまでも「ここじゃないどこか」

を探しているらしい男、ヒロシくん。春子の

言葉に複雑な表情・・・。同じように田舎が

嫌で飛び出した経験者春子の、今の心境

らしき言葉に大きく頷いたりして。そうなん

だよね・・・場所じゃなくて、人。場所を変

えても人が変わらないと何も変わらない。

自分に合う、変われる場所に出会うことも

あるだろうけれども、自らがその場所に関

わろうとしないと、どこに行っても、「ここ

じゃない」と、思い続けることになりそう。

春子の「変態！」騒動に、思わず雑誌をし

まいながらあやまっている姿に笑った～！

一体どんな変態雑誌を見ていたんだ！

（とツッコンでみるｗ）

もう一つ、身につまされたお笑いポイント

は、春子のロボコップ姿ｗ　そうそう、紫

外線は女の敵っ！無防備に浜にいたり

したら、とんでもないことに。でも、紫外

線防衛軍の姿は・・・傍から見ると笑える

というか、みっともないんだよねえ・・・。

そこがホント女子の悩みどころというか。

だから、そんな春子を私は笑えない～。

変態扱いされたカメラ小僧というよりカメラ

おじさんの正体はまだこれから。アキは１

分以上潜れたことで、更なるステップに。

最近、毎日が楽しいのは、ビタミン剤のよ

うな朝ドラのおかげかも～。

（ここからは追記、

全放送終了後の感想となります）

変態扱いの、カメラ小僧ならぬ、カメラおじ

さん、ヒビキ登場！いや～、やっぱ怪しい

人だよね、あれ。アキがいつの間にか潮

に流されている場面は、シュノーケルでの

流され体験を思い出して、怖い怖い。あま

り泳げなかったという、能年ちゃんの頑張

りは、凄いなあと。やっぱり、ヒロインが頑

張る姿っていうのは、観る側に元気を、力

をくれる。心から、彼女を応援したくなる。

そして、何度観ても、変態！と春子に連呼

され、うろたえるヒロシの姿が笑える。情け

ない男オーラ、120％増って感じで。パチン

コ屋といい、監視小屋といい、どうしようも

ない、どこに行ってもダメ男ぶりに、萌え。
ホント、「あまちゃん」ではヒロシが一番の

出世頭といいますか、一番成長したキャラ

だったなあと、この回のへなちょこぶりを見

たら、しみじみしちゃったよｗ

2015年の再放送時の感想はこちら↓
あまちゃん日記（10）～第２週「おら、東京さ帰りたくねぇ」

2023年の再放送時の感想はこちら↓
第10回～第２週「おら、東京さ帰りたくねぇ」

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