「真夜中のパン屋さん」第4回~恋って、おいしい? | 日々のダダ漏れ

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日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

「真夜中のパン屋さん」

日々のダダ漏れ-真夜中のパン屋さん

第4回
恋って、おいしい?

こだま(藤野大輝)を家に残したまま失踪していた織絵
(前田亜季)は実はソフィア(ムロツヨシ)の
ころにい
た! 一方、斑目(六角精児)が窓の外か
らのぞく意中
の人、高遠由香里は、ある日、睡眠
の服薬で命の
危険にさらされるが、斑目が窓の
外から気づいたこと
により、一命をとりとめる。斑
目はその事件を機にのぞ
きをやめ、自らが追い
求めた長年の片思いに終止符
をうつ事を決め
る。そんな中、暮林(滝沢秀明)はつい
に織絵と
会い、こだまをほったらかしにする理由を問う。
その答えは意外なも
のだった。

**********

弘基) あと5年、いや、10年あったら、俺は美和子さん
    を振り向かせてた。クレさんから奪い取ってた。
    だってそうだろ? 彼女が生きてたら、クレさんは
    日本に帰ってなんか来なかったろ?
    俺だったら、好きな人のそばから離れたりしない。
希実) ちょっと・・・あの、やめてくれません? 私とか、
    こだまの前でわざわざしなくていいと思うんです
    けど、そんな話。
陽介・弘基) 大事な話だ!
弘基) 人が人に恋する時は、どれだけその気持ちに
    真っ直ぐでいられるかが大事なんだ。
希実) 語りだしたよ・・・。
弘基) 恋する気持ちを温め、大切に育て、発酵するの
    を待つ。発酵途中でダメになってしまう事もある。
    そんなもんは捨てちまえばいい。でも、それが熟
    成してどんどん膨らんで、恋焦がれる気持ちに
    火を絶やさず、心のオーブンでじっくり焼き上げ
    ていく。
こだま) 美味しそう!
弘基) だろ?
こだま) 俺も食べる!
陽介) いいね。
弘基) クレさんは、今でも美和子さんを愛してるか?
陽介) もちろん。
弘基) この店は、美和子さんの夢だった。
    それを実現させたのは、俺のこれだ。違うか?
陽介) いや・・・。
弘基) 美和子さんの夢だったこの店には俺が必要だ。
    よって、俺はここに居続ける。
陽介) よろしくお願いします。
こだま) 俺も! 俺も!
陽介) よろしく。
希実) わっけわかんない・・・。
こだま) 頑張ろう~!
弘基) 恋する気持ちは、人生の原動力だ。美しい力だ。
    わかるだろう? 女子高生!
こだま) 女子高生!
希実) 私は・・・
    そういう恋だとか何だとか、絶対しないし。
陽介) 何で?
弘基) 何で?
希実) いいじゃん、別に。
こだま) ねえ、何で?
希実) じゃあ・・・じゃあ聞くけど! 自分の母親がどっか
    の男との恋に暴走して、子供や家をほったらかし
    にしても、それは美しいわけ? 素晴らしき人生な
    わけですか?恋してるなら、まわりに迷惑かけて
    もいいんですか? 恋を言い訳にすれば、何でも
    ありなんですか?
陽介) 希実ちゃん?

**********

織絵) 夢違(ゆめちがい)観音。悪い夢、二度と経験し
    たくない事、思い出したくない事などを、良い夢に
    変えてくれます。
ソフィア) 恋の事? こだまちゃんの事? ごめん。
織絵) ありがとうございます。
    よいところを教えていただいて。

**********

班目) 変態おじさんの恋は、
    いつも苦しくて無様だけどね~。
弘基) 変態じゃなくても、恋は苦い事が多い。
こだま) 織絵ちゃんも、きっと恋をしてるんだ。!
班目) 織絵ちゃん?
希実) こだまのお母さん。
班目) ああ・・・
こだま) 恋は美味しくてカッコよくて、だから織絵ちゃん
     はおうちに帰ってこれないんだ。


**********

こだま) 織絵ちゃん、見つかるかな?
希実) お母さん、見つかったとして、どうすんの?
    わかんないよね、そんなこと・・・。
こだま) あやまる。ごめんねって言う。
希実) 何それ・・・。
こだま) きっと、俺が、新しいお父さんなんて要らない
     って、前に言ったから・・・。俺の事、邪魔になっ
     たんだ。
希実) それは・・・それは違うよ、きっと。
こだま) そうかな・・・?
希実) こだまを、大事に思ってる事は、確かだと思う。
こだま) そう?
希実) きっと、何か考えてくれてるよ。
こだま) そうかな・・・?

**********

織絵) 好きな人? 私にですか?
陽介) 違うんですか?
織絵) 私が家を出たのは、そういう事じゃないんです。
陽介) じゃあ、どうして?
織絵) こだまと、一緒にいたくないんです。

**********

織絵) 父は開業医で、病院を私に継がせると、いつも
    言っていました。でも、私は、そんなに頭が良く
    なくて・・・。父の期待に応えられなかった。私は
    医者にはなれなかったけど、看護師として大学
    病院に勤める事ができました。優秀なお医者様
    がたくさんいて、私は、一番頭のいい先生に近
    づいたんです。奥様のいる方でしたけど、構わ
    なかった。だって私は、その人の、子どもが欲し
    かっただけだから。だから、子供を妊娠したって
    わかった時、私は飛びあがって喜んだ。これで
    また、父に認めてもらえるって。こだまは、ホン
    トに優秀な子だったんです。1歳の時に受けた
    知能診断で言われたんですよ。この子は、天才
    ですねって。なのに・・・。なのに幼稚園受験に
    失敗して、小学校受験もダメで。それでだんだ
    んわかってきたんです。結局こだまも、私と同じ
    で、出来がよくないんだって。そう・・・こだまは
    私と同じ。こだまが、お宅のお店のパンを、万引
    きしたって聞いて・・・。
陽介) あれは・・・。
織絵) 万引きは、私の病気なんです。中学の時から、
    ずっと、何度も補導されて・・・。大人になってか
    らも、治らなくて。警察に突き出されたのも、一
    度や二度じゃないんです。こういう女なんです。
    こういう母親なんです。私が、せめて母親として、
    あの子にしてやれる事って・・・。それは、こだま
    から離れる事。それが唯一、あの子にとっての、
    思いやりなんじゃないかって。
陽介) こだま君は、万引きなんかしてません。
    してないんですよ、そんな事。
織絵) ホントに?
陽介) 美味しいパンはその人を笑顔にする。だから、
    好きな人には、パンをあげるといいよ。そのため
    だったらうちのパン、好きなだけ持っていってい
    いから。店の開店準備をしていた俺の妻が、恐
    らく、こだま君にそう言ってあげたんです。
織絵) え?
陽介) お母さんの笑顔が見たいから。こだま君、毎日
    うちで、チョコのパンを作っています。織絵ちゃん
    は、チョコが大好きだからって。俺の妻は、半年
    前に亡くなりました。俺はずっと、妻のそばにい
    てやれなかった。悔やんでます。これから先も、
    一生悔やむでしょう。でも、あなたとこだま君は、
    一緒にいようと思ったらいられる。ずっと、いられ
    る。こだま君は、こだまっていう自分の名前、大
    好きみたいですね。新幹線の、のぞみより、ひ
    かりよりも遅いけど、ゆっくり、ゆっくり、いっぱい
    寄り道ができるって。そういう名前をつけてあげ
    た、お母さんって、素敵だなって思ってました。
    パン屋の主人として、一言言わせてください。美
    味しいパンは人を笑顔にする。お母さんだって
    笑顔にする。それが嘘じゃないってことを、こだ
    ま君に、信じてもらいたいんです。

**********

恋について熱く語る弘基。いつのまにか、恋はパン作り
に例えられ、恋とは美味しそうなもの・・・になっていく。
じっくり発酵させ、焼きあがったパン、いや、想いは、恋
は、美味しそうだけれど。美味しいばかりじゃないのが、
恋というものの面倒なところ。甘いどころか苦くてとても
食えない恋もある・・・あったなあ・・・なんて遠い思い出。

こだまの母・織絵は、恋に夢中になってこだまを置いて
出たわけではなかったけれど、恋よりもっと複雑で根が
深い問題を抱えていたようで。親子関係の歪みは、実
は子供の頃だけじゃなく、大人になってもず~っと陰を
落として、問題を引きずることが多いって、大人になれ
ばなるほど、わかってきたりする。男女の恋でも、親子
の間でも、愛情って、間違えると、毒になったりするし。

美味しい恋だけしていられれば、楽しいんだけど・・・。
あ~なんか、美味しいチョココロネが食べたい~!!


「真夜中のパン屋さん」関連ブログ↓
第1回 「謎の女子高生来たる」
第2回 「小さなパン泥棒」
第3回 「普通じゃない人々」
第4回 「恋って、おいしい?」
第5回 「元カノの秘密」
第6回 「もうひとりの佳乃」
第7回 「おだやかなクレーマー」
第8回 「小さな灯り(あかり)をともして」

●「真夜中のパン屋さん」HP


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