幸せの赤い靴☆★☆★☆★☆
やぁピグミャンだよ
急に冬の寒さになってきた最近
北海道ではもう雪が降っているみたいだね
夜中は特にブルブルブルブル寒くて・・・
寝る時はバナナの皮布団を877枚必要だね
街はハロウィンが終わってすぐにクリスマスの準備
冬くんが駆け足でやって来て
年末に向けてなんだか全てがあわただしくなる
こんな季節になると必ず思い出す
そう・・・
ーあの時の出来事をー
幸せの赤い靴・・・とっても綺麗だなぁ
パパに買ってもらったソフトクリームをペロペロしながら
マヌケな顔でショーウィンドーを眺めているのは
小学5年生のピグミャン
日曜日にパパと二人でお買い物に行ったショッピングモールで
パパがママとブラザーへのお土産を見に行ってる間に
ピグミャンは素敵なブランドの靴屋さんを発見
ショーウィンドーに飾られた赤い靴は・・・
まるでシンデレラのガラスの靴みたいな輝き
幸せの赤い靴
とピグミャンが勝手に命名してはみたものの・・・
値段は・・・0が見たこと無いくらいい~っぱい・・・
ピグミャンの豚の貯金箱の中身は87円
全然手が届きません
こんなお店で靴を買えるのはお姫様くらいじゃないかなぁ
その靴下さい
と言ってショーケースを指差したのは・・・
うわぁ・・・長い髪・・・香水の良い匂い・・・素敵な女性(ひと)・・・
この女性(ひと)だったら絶対幸せの赤い靴似合うよ~
大人になったらこんな素敵な女性(ひと)になりたいなぁ
そんな風に思っているとなんと・・・
会計を終えたその女性(ひと)がピグミャンの所に歩いてきて言いました
女性ソフトクリーム美味しそうね
ピグミャンうん・・・そこのお店に売ってたんだ
これ絶対美味しいからお姉さんも買って一緒に食べようよ
と言ってからすぐにピグミャンは後悔しました
そうだ、こんな素敵な女性がマヌケにソフトクリームなんかペロペロするわけない
そうしたら・・・その女性は
教えてくれてありがとう、ちょっと待ってて
と言ってソフトクリームを買いに行ったのです
そしてピグミャンと一緒にベンチに腰掛けて
ホントだ、おいしいね
と言いました
―この世界に本当にお姫様っているんだ―
・・・とピグミャンは思いました
家には生意気な弟しかいないからなぁ
こんな完璧なお姉さんがいたらいいのに・・・
そしたら毎日お姉さんとオシャレな服を買いに行って
エステ行って、髪も綺麗にして、午後はスイーツの食べ放題・・・
映画のような生活がピグミャンを待ってい・・・
パパお~い、パパもソフトクリーム買ったぞぉ~
果てしない想像している途中でパパが戻ってきてしまいました
しかもなんとパパは鼻の下にクリームが付いていました
はぁ・・・コレが現実・・・
ピグミャン誰ですかねぇ・・・あの人は知らない人でして・・・
お姉さんうふっ・・・親子ってすぐ分かるわよ
だってあなたも鼻の下にクリームついてるもの
ピグミャンそんなバナナ~っ
お姉さんアハハハハハ
あぁ~おかしい・・・
へぇ・・・こんな綺麗な女性(ひと)でもこんな顔して笑うんだ
人間同士って感じがしてなんだか嬉しいな
ピグミャンねぇ・・・ピグミャンも大人になったら
お姉さんみたいに幸せの赤い靴が似合う女の人になりたいな
お姉さん私は・・・決してそんなんじゃ・・・
パパこらピグミャン、お姉さんを困らせないの
すみません、娘のお相手をしてもらっちゃって・・・
お姉さんいいえ、こちらこそ楽しかった
やさしいお嬢さん、ありがとう
お姉さんにバイバイをして帰路につきました
お家に帰ってからパパ、ママ、ピグミャン、ブラザーで晩ご飯を食べながら
昼間の出来事をお話をしました
ピグミャン今日ね・・・モグモグ(食べながらしゃべってる)・・・
パパと素敵なお姉さんのいるお店に行ったの
ママえっ・・・あなた・・・いったいどこに・・・
パパいやっ・・・あの・・・違うんだ・・・
ピグミャン綺麗な人だったなぁ・・・
パパは鼻の下に・・・モグモグ(しゃべるのが面倒くさくなってる)・・・だったよ
ママまぁ、あなたったら鼻の下伸ばしてたの
パパママ・・・違うんだ~っ
その日ピグミャンは素敵なお姉さんのことを考えながら
ニヤニヤしながら寝ました
1ヵ月後
ピグミャンは学校の帰りにクリスマスグッズを見に
駅まで歩いていました
慌ただしい街並みは1週間後に控えたクリスマス一色
寒い寒い~ってつぶやきながら歩いていると
少し先を歩いている女の人から懐かしい香水の匂い・・・
まさか・・・
足に履いてるのは・・・幸せの赤い靴・・・間違いない
あの時のお姉さんだ~っ
ピグミャンおぉ~・・・ぃ
ちょっと待てよ・・・隣に男の人がいるぞ
ここで声をかけるのは野暮ってモンだ
それにしてもやっぱり素敵な女性は素敵な恋愛をしてるんだなぁ
まるで恋愛映画の1ページのよう・・・
遠くからでも絵になるなぁ
駅に着くとお姉さんと男の人は立ち止まりました
あれ・・・なんか様子が変だぞ・・・
お姉さん怒ってる・・・
男の人は謝るような仕草・・・
そして男の人は腕時計をチラっと見て、改札をくぐって行ってしまいました
お姉さんは履いていた幸せの赤い靴を脱いで
思い切り地面に投げつけました
嘘だ・・・あのお姉さんに限ってそんなことがあるわけないよ・・・
そしてその場で一人たたずむお姉さん・・・
遠くから背中を眺めているだけでも分かりました
―泣いている―
お姉さんはクルっと振り向くとピグミャンに気がつきました
どうしてなんだろう・・・ピグミャンも涙が止まらない・・・
うぇぇん・・・うぇぇん・・・
お姉さんこないだソフトクリーム美味しかったね
ピグミャンが見上げると・・・そこには・・・
前にショッピングモールで会った時と同じ笑顔のお姉さんがいました
でも足元を見ると・・・靴を脱いで裸足で歩いたせいで
綺麗な足がボロボロに汚れてる・・・
ピグミャンピグミャンね・・・
誰にも言わない・・・絶対に言わない・・・
自分でも何を言ってるのか分からなくなってきました
すると・・・
お姉さんはそんなピグミャンの頭をクシャクシャってなでて・・・
言いました
お姉さん喜んだり・・・怒ったり・・・哀しんだり・・・楽しんだり・・・
女の人生はとても忙しいものなの
でもね・・・やさしいあなたならきっと
幸せの赤い靴なんてはかなくても幸せになれるよ
そしてお姉さんは裸足のまま
クリスマスの街並みにさっそうと消えていきました
そこにはしばらく香水の匂いが残っていました
やっぱり・・・お姉さんは最後の最後まで素敵な女性だったなぁ・・・
そんなことをふと思い出したピグミャン
そう・・・幸せの赤い靴がなくてもピグミャンは幸せ
だってピグミャンの歩く道には
生徒のみんなが「愛情」を込めて仕掛けてくれた・・・
黄色いバナナの皮が落ちているから