なぜ自民党総裁選で高市早苗候補を推すのか |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 今月29日に投開票が行われる自民党総裁選、17日の告示を前に、本稿執筆段階で、立候補に必要な20人の推薦人を集めて立候補を表明しているのは、岸田文雄衆院議員と高市早苗衆院議員の二人。筆者はこのうち高市議員をより相応しい候補として推している。(「推している」と言うのは、筆者は自民党員ではなく総裁選には投票できないことによる。)

 

 このことについて、「なぜ高市を推すのか」、「室伏は豹変したのか」、「がっかりした」といったネットの反応があったが、筆者は豹変したわけでもなんでもなく、これまでの考え、信条からして、その実現に高市議員が最も近いと判断したからである。

 

 その理由は、第一に、高市議員が物価安定目標2%が達成されるまではPB黒字化目標を凍結することを掲げていることである。そもそもPB黒字化などという財政規律を設けている国は、主要国では日本ぐらいであり、そんな意味がないどころか財政の機動性を縛る、害悪をもたらす規律など放棄・廃止してしまえば一番いいのだが、そこまで言わないまでも、単なる延期や先送りではなく凍結を明言したというのは非常に画期的である。しかも高市議員は財務省等からの抵抗を覚悟の上としてそう明言している。

 

 第二に、成長戦略を大規模な政府による投資としていることである。しかもその対象はインフラから技術開発、国防等の様々な分野であり、これまで政府が行うべきでありながら緊縮、PB黒字化の呪縛ゆえに行ってこなかったか、行ってきたとしても全くもって不十分だった分野である。新型コロナショックを受けて先進各国政府が政府の役割の重要性を再認識し、政府が前面に出た大規模な投資、財政支出を行っているところ、菅政権下の日本だけがPB黒字化目標などを掲げるという、およそ世界の当たり前からかけ離れた奇妙奇天烈なことをしようとしてきた。高市議員はそれを修正し、正常な軌道に戻そうと言うのである。

 

 第三に、政策が具体的かつ体系的であり、極めて詳細であることである。これは、比較して申し訳ないが、岸田議員の政策が具体性を欠き、ボワッとしているのとは対照的である。無論岸田議員も今後詳細な政策を提示してくるのかもしれないが、出馬表明の段階でここまで詳細に提示し、かつ自分の言葉で澱みなく説明できるというのはお見事と言うしかない。これこそまさにイメージだけではない本物の政策力である。

 

 一方で、消費税に関しては、政策の説明の中では述べず、記者からの質問答える形で、

「現在の税率より下げることはしない。次に上げるときの反動が大きい。今のままで我慢をして欲しい。」として、消費税の廃止はおろか減税にも否定的な考えであり、これについては非常に残念である。しかしながら、消費税の減税や廃止を掲げては推薦人を集めることが難しかったであろうことや、いまだに消費税の減税や廃止を「無責任だ」などと考える有権者が少なくないことを考えると、仕方がないことなのかもしれない。

 

 ただ少なくとも、PB黒字化の凍結を掲げ、物価安定目標2%達成までという期間限定であっても、積極財政に転じることを明言したことの意味は大きい。

 

 以上のようなことから、筆者は高市早苗衆院議員が、今回の立候補表明者の中では次期自民党総裁に相応しいと考え、推しているところである。

 

 最後に、自民党総裁選において、今の日本に何が必要なのかを弁えた実りある政策論争が展開されることを期待するとともに、この延長線上に、令和の政策ピボットの政策( https://reiwapivot.jp/policy/ )を丸呑みしてくれる政治家が現れることを願いたい。