参院選も折り返し地点を通過し、後半戦真っ只中。与党は経済優先を掲げアベノミクスの「成果」を喧伝、民主党、共産党を中心とする野党共闘に対する批判を強めている。ただ、麻生副総理が穏やかな口調で聴衆(といっても3分の1から半分は運動員のようだが)の笑いを誘いつつ柔らかに批判を行うのに対して、安倍総理は早口でまくしたてるスタイル。加えて、批判をしているのだが元々の滑舌の悪さも手伝ってか何を言っているのかハッキリと聞きづらい。野党共闘の勢いを前に、それほど選挙の行く末に余裕がないのだろうか。確かに、その街頭演説、運動員以外からの拍手はまばらで、聴衆もパラパラと減っていっていた。(となると、麻生閣下の余裕は・・・?)
対する野党、アベノミクスの失敗から憲法改正反対、安全保障と幅広く与党批判を展開。まあ統計数値にハッキリとアベノミクスの負の「成果」が表れているし、争点隠しという常套手段、過去2回使って既にバレてしまっているのだから、野党からすれば攻めやすいだろう。
さて、そうした中で与野党ともに必ずと言っていいほど言及があるのが、英国のEU離脱問題である。この問題、先月23日の国民投票の結果、英国がEUから離脱するという方向性が示された結果生じた現象に関するものであるが、日本国内では議論が株価や為替レートの変動ばかりに注目が集まっている。与党は「危機対応」を強調、野党は、例えば年金基金を株式で運用していたため、多大な損失が生じたといった批判を展開している。株価の上昇や円安誘導がアベノミクスの成果だと当初は吹聴されてきたこともあって、御説ごもっとものように聞こえるが、この話、そんなところに矮小化される性格のものではない。
この話を理解するためには、EUのこれまでの歩みを振り返って見る必要がまずあるだろう。そうすれば、EUの統合が順調に進んできたわけでもなければ、「統合」が絶対的に善であり究極の解と考えられているわけでもないことがよく分かるだろう。
例えば、それまでのEC(欧州共同体)がEU(欧州連合)になることを決めたマーストリヒト条約の批准に当たっては、デンマークは国民投票で一度批准を否決している。(まさに筆者が大学生で欧州を中心に国際政治を勉強していた時であり、大きな話題となっていたことを今でも覚えている。)また、いわゆる欧州憲法条約はフランスとオランダでの国民投票で否決されたことを受けて、両国では批准手続を中止、様子を伺っていた英国も批准手続を無期限凍結している。
別の観点から話をすれば、統合が進めば新たな「中心」と「周辺」が生まれる。(分かりやすい例で言えば、市町村合併を進めたことにより、かつての中心が周辺になり、その地域で衰退等の変化が起きるということに似ている。)統合が進むことを「深化」と言うが、これに対する「周辺」の反発は統合そのものへの反対や「拡大」の推進という形で現れる。これまでEUは「深化」をゆるやかにし、「拡大」を優先してきたと言うことができ、その結果自分の国(地域)が「周辺」になることを免れるか和らげることができた。(この話は書くと長くなるので、また別の機会に。)
そしてこうした動きについて、簡単に言えば、過度な深化は望まず、どちらかといえば付かず離れずでやってきたのが英国であった。したがって、EC関連の個別の制度(例えば欧州為替相場安定制度)で、自分たちにとって悪影響があると判断すれば脱退してきたし、それが当然であった。
要するに、今回の英国のEU離脱の方向性という国民投票の結果も、こうした経緯を踏まえれば、あり得る話ということであり、何も驚くような話ではないのである。
そうは言っても、為替相場や株価は大幅に動いたではないかという声が聞こえてきそうだが、それはEUとは切り離して考えるべきであろう。単に、資本の国際的な移動が過剰に自由化されているために、忍耐強くない投機マネーが勝手にある程度の規模で動いた結果というだけの話であって、EUに内在する問題や英国の離脱(正確にはまだ決まっていないが)に伴って引き起こされる問題によって株価や為替が動いたわけではない。
つまり、今回の現象の直接的な原因は、この「資本の国際的な移動の過剰な自由」と勝手気ままに動き回る投機マネーにあるというわけであり、こうした現象を防止することによって「危機」が起きないように対応するというのであれば、資本の過剰に自由な移動を規制するしかあるまい。
さて、そのことを主張しているのはどこの党かと見てみれば、なんと明確に言っているのは共産党だけで、保守として本来主張すべき自民党は真逆、つまり規制をどんどん緩和してさらに投機マネーの気ままな動きに対して経済を脆弱なものにしようとしているではないか。(もちろん、このことを認識し、規制すべきことを主張している真正保守の自民党議員もおられるが、悲しいかな、多勢に無勢ということらしい。)
参院選、この点を見ても軍配はどちらに上がるか明らかということか。しっかりしてくれ、自民党。野党が不甲斐ないという話があるが、自民党もそんな状態では、支持政党なしを増やすだけになりかねない・・・