5月26、27日の2日間にわたって開催された伊勢志摩サミットが閉幕し、国政の関心は、既に消費税率の引上げや衆参同日選の実施の有無に移っている。6月1日の通常国会閉会時にその判断を行うとされているが、税率引上げの延期や衆参同日選を実施しないことは、規定路線だったかのように、マスコミを通じて流れている。
そうなると、与野党ともに7月の参院選に向けて総力戦の体制で臨むということになるが、さて、その参院選、争点は一体何になるのだろうか?
消費税率引上げは見送られる方向で、そうなると、消費税率引上げの是非を争点にして戦う候補はまさかいまい。与党が延期を決めたところ、争点にするとなると野党側は実施を訴えなければならなくなるが、民進党は既に増税凍結法案を国会に提出、共産とは税率引上げには反対、生活や社民も凍結か反対。つまりこの時点で予定どおりの税率引上げを訴える政党はないと言っていいので、消費税は争点にはなりえまい。(無論、凍結後の引上げの実施については選挙戦で訴える余地はあるが、一般有権者にとっては、「増税に賛成なの?反対なの?」と分かりにくくなる可能性が高いので、この話も、テレビの党首討論の論点としては出るかもしれないが、積極的に争点となることはあるまい。)
これ以外に考えられる争点は、①経済政策、②憲法改正、③安全保障、④TPP、⑤一億総活躍、⑥原発・エネルギーといったところだろう。
このうち、経済政策とは、これはとりもなおさずアベノミクスの成否のこと。安倍総理は、伊勢志摩サミットにおいて、世界経済は「リスク」に直面しているということについてなんとか共通認識を取り付け(とご本人は主張しているが)、議長記者会見において、世界経済の現状を、リーマンショクとの比較において、大きな「リスク」に直面しているとの認識や世界経済が「危機」に陥るリスクについて言及し、消費税率の引上げも含めて判断するとした。
こうした認識についてサミット参加の英国やフランス、ドイツから批判の声が上がった。
それもそのはず、4月12日にIMFが発表した世界経済見通し(World Economic Outlook)を見ても、ユーロ圏の経済成長率は、「控えめ」とはされているものの、2016年、2017年ともに見通しの数値でプラスである。これは英独仏の国別で見ても同様である。
一方、日本はといえば、「特に民需の急激な落ち込みを反映し成長もインフレも見込みより弱くなっている。2016年の成長率は0.5%にとどまり、その後2017年には、予定されている消費税率の引き上げが行われるなか、マイナス0.1%と僅かにマイナス成長となる見込みである。」とされ、2016年はかろうじてプラスとされているものの、2017年に至ってはサミット参加国中、唯一のマイナスとされている。
前回、拙稿「消費税率引上げを巡る状況ー実施か延期か?」において指摘したとおり、先日発表された1-3が月のGDP統計速報値についても、前期比ではプラスに見えても、前年同期比で見てみると成長率のみならず、ほとんどの数値がマイナスであり、とても経済が好調であるとは言えない状況である。
こうしたことから、アベノミクスが成果を出すことが出来ていないどころか、かえって日本経済を減速させ、後退させたことが明らかであると言えるものと思う。
つまるところ、サミットで安倍総理が世界経済が「リスク」に直面していることを強調した真の意図は、アベノミクスの失敗が明らかになりつつあるところ、「世界経済」という大風呂敷というか包装紙を使ってそれを覆い隠すところにあったということであろう。(これについては一部の識者も指摘しているが。)
加えて、こうした数値は、消費税率の引上げに消極的な安倍総理にとって、格好の引上げ延期の大義名分を与えてはくれるが、同時に自らの経済政策の失敗を認めることになるので、その意味でも「世界経済」が直面する「リスク」を演出し、強調する必要があったということであろう。
こうしたことを踏まえると、参院選では、野党は「アベノミクス」の失敗を前面に押し出してこれを争点とし、有権者に訴えるということが最も有効ということになるだろう。なんといっても経済生活は国民生活、日々の暮らしに直結する。そこで現政権が失敗したというのであれば、これを攻撃しない手はない。
対する与党、「経済で結果を出す」と言ってしまったことがある以上、アベノミクスの争点化は避けては通れないだろう。ことここに至ってアベノミクスの「成果」を強調しても虚しいように思われるが、座して言われるがままというわけにもいくまい。そうすると、消費税率の引上げ延期を「成果」の一つのごとく押し出しつつ、アベノミクスの修正版をシラーっと出すということが考えられよう。
「あらゆる政策を総動員する」と安倍総理が言っている以上、個人的にはアベノミクスの蒔き直しというウルトラCをやるというもありうると思うが、さて、そんな博打みたいなことはできないかな?
具体的な経済政策を巡る選挙戦ということになれば、勝敗はこの際置いておくとして、有権者の関心も高まる「いい選挙」になるのではないだろうか。と勝手に期待したいところだが、これを言っては元も子もないが、果たしてそれができる候補者が、与野党問わずどの程度いるのだろうか?
参院選の争点についての考察、次回は憲法改正と安全保障を取り上げることとしたい。