人口減少著しい政令市静岡市の首長選挙の行方② |  政治・政策を考えるヒント!

 政治・政策を考えるヒント!

   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 3月29日に告示された静岡市長選、2週間の選挙戦はちょうど折り返し地点を過ぎたところである。

 今回3人の候補者が立候補している。一人は現職の田辺氏、もう一人は地元のドラッグストアーチェーンの役員の高田氏。静岡で「高田薬局」と聞いて知らない人はいないくらいのチェーン店である。そしてもう一人は共産党推薦の松浦氏。各候補はどのような主張をしているのだろうか。政策の比較・分析という観点から、静岡市長選を考えてみることとしたい。

 なお、比較・分析に当たっては、候補者のウェッブサイト掲載の情報の他、地元の静岡新聞がネットで提供している市長選関連記事を参考とした。

 まず、田辺候補の公約。「マニフェスト2015 飛躍の第2章 静岡を希望の岡に」と題された28頁わたるもの。人口70万人の活力維持の実現を目指すため、①地域資源に新しい価値を与え、地域の産業経済の振興を図ること、②市民・企業・行政が連携して課題解決を図り安心安全で質の高い生活を守ること、これらを2大方針とするとされている。そして10の政策群として観光・交流や農林水産業、都市・交通、子ども・教育、健康・福祉といったものが挙げられている。

 詳細についてはリンクから実物をご覧いただきたいが、端的に言って、静岡市の第三次総合計画をコンパクトにまとめたもののようである。現職市長であるので、そうした市の計画と全く違うこと、矛盾することを公約として掲げるという選択肢は考えられないので、当然と言えば当然かもしれないが、となれば、まさにこれまでの成果の評価ということになる。

 その成果であるが、このマニフェストには記載されておらず、田辺候補の公式サイトに10の分野について記載されている。もっともその中身は、概して、政令市の首長の成果として誇るにはお粗末とは言わないまでも、前のめりで成果と喧伝できるようなものではない。例えば、国の施策をただ実施しただけのもの、トップセールスやイヴェントの実施といった、ただやっただけでその効果の測定が行われていないもの、従前から計画されていた事業がたまたま在職期間中に行われただけであると思われるもの等、枚挙に暇がない。

 公約に記載された政策は、市の第三次総合計画のコンパクト版であると先に述べたが、その中身をよく読むと、他の都市でも見られるようなもの、単純に主体や対象を静岡に置き換えただけのものが多く見られ、目立つ新しいものと言ったら、駿府城天守閣の再建ぐらいである。

 LRTの導入や歩いて暮らせるまちづくりにしても、明確なコンセプトの下で着々と進めている富山市と比較して、何もしていないと評せざるをえない状況である。

 田辺候補は「二期目はシフトチェンジします!」をキャッチコピーの一つとしているが、本当に「シフトチェンジ」して、総合計画に掲げた「世界に輝く静岡」を実現できる実行力や政策力を発揮できるのか、そこが着目点となろう。

 次に、高田候補。特に名称はなく、「政策集」として公式サイトに掲載されている。全8頁で、田辺候補に比べるとコンパクトなものとなっている。(デザイン的には民主党のマニフェストやみんなの党のアジェンダに似ていなくもない。)

 高田候補の主張のポイントは明確で、人口の減少を市の経済環境の悪化や財政負担の増加の根源であるとし、女性の市民税減税を中心とした100億円規模の消費刺激策で商業、産業の活性化を目指すというもの。言ってみれば女性に主眼を置いた政策となっているということである。

 女性の市民税減税、政策集の冒頭には「女性市民税ゼロ」と明記されていおり、減税というより免税ということだが、その分の財源をどう確保するのかが問題となる。これについては、市の歳出の見直しにより可能であるとしている。発想としては、無駄の排除や特別会計の「埋蔵金」により消費税率引上げを不要としたみんなの党の考え方に似ている。

 後はこれをどう実行に移していこうと高田候補は考えているのか、その辺りがポイントとなろう。

 最後に松浦候補。こちらは政策集的なものは見つからなかった。おそらく選挙のビラとして配布はしているのだろうが、静岡にいない者にとっては入手は不可能である。したがって同候補については静岡新聞の記事を中心にその政策を見ていく。
 
 松浦候補の主張は単純で、ハコモノ優先、大規模開発といったものではなく、住民の福祉にお金を使うべきといったもの。そして、松浦候補の政策は静岡についてというよりも、ある意味で共産党の政策に沿ったもののようにも見える。したがって、松浦候補の政策と静岡の課題をどう結びつけられるかがポイントとなろう。

 以上のように、3候補は良くも悪くも、その政策には特徴が見られ、その点で有権者としては選びやすいのではないかと思われる。一方で、静岡に行けば、田辺候補は何もしない市長で、八方美人で決断力がないといった批判、高田候補は選挙のやり方が云々といった政策とは関係ない悪口、そういったものが聞かれる。

 実際のところは各有権者に確かめていただくとして、今回の市長選で選択を誤れば、静岡市の衰退を加速化させることにつながりかねない。有権者には自らの未来に直結することとして、良識ある判断を期待したい。