私がもう一度、旦那さんの向かいに座ると直ぐ、
旦那さんが口を開いた。
「俺にも言いたい事は一杯ある。
今日は、ちゃんとお互い話し合おうか。」
「そうやね。いつもお母さんがいてて、
込み入った話出来へんもんね。」
良い機会だったのかも知れないと、私も思った。
そして旦那さんが口にしたのは、
私が一番嫌う台詞だった。
「やーちゃんは、おっさんとどうしたいねん。」
「あのね、いっつも言うけど、オーちゃんよりヨウは年下なんやで。
おっさんって言う言い方は止めて!!」
「俺に取っては、おっさん以外の何者でもないけどな。」
明らかに捨て台詞だった。
旦那さんは、今になってもまだ、
私と夫婦でいるつもりなのかと思うと、無性に腹が立った。
それでも、きちんと最後まで話をしたかったので、
沸々と湧き出る怒りを懸命に抑えていると、
有ろう事か、旦那さんは、
同じ家にいても、他人の様だと言った。
何を今更・・・。
私は思わず、笑ってしまいそうになった。
そしてその思いを我慢しながら、私は言った。
私たちは、同居はしていても、常識の範囲の夫婦には戻れない事。
私から、離婚を切り出すつもりはないけど、
別れてくれと言われたら、受け入れるつもりだと言う事。
何より、旦那さんに対して、男としての愛情はもう全く無い事。
そして、今後も決して、その想いが変わる事が無い事。
例え、ヨウと別れて私が独りになったとしても、
以前の様な夫婦に戻るつもりは無い事。
旦那さんがこれから先、誰と付き合おうと、
深い仲になろうと、全然気にもならない事。
話の途中で、旦那さんが聞いて来た。
「俺がずっと浮気ばっかりして来たから、
仕返しで、お前も浮気したんか?」と。
この人は全然分かって無いな・・・。
本当にそう思った。
そして私は言った。
「それは違う。確かに何回も浮気されて、
オーちゃんに対する愛情は、もう無くなってたけど。
だから、ヨウを好きになったんやない。
彼だから、彼以外やったら、こんな仲にはなってない。
これから先も、喧嘩する事はあるかも知れへんけど、
彼とは死ぬまで付き合って行く。
でも、オーちゃんとお義母さんの生活の面倒はちゃんとみる。
その心配はせんで良い。
だから、私たちの事に土足で入り込んで来る事は止めて。
軽蔑だけはさせんといて欲しい。」
とても、妻が夫に言う言葉では無い事、分かっていた。
それでも、言わずにはいられなかった。
私がヨウを思う気持ちは、旦那さんがして来た様な、
浮気心なんかじゃない事だけは、言わなくてはいけないと思った。
そこまで言うか・・・。
暫く黙っていた旦那さんが、小さく呟いた。