『航空戦史妄想ノート』 その1 「月光編」
好評につき(本当は反響はほとんど無い・・・のですが)、装いを改め、またまた、妄想です。
「Tさん、今日はお尋ねしたいことがあるのですが?」
「おう、なんでも聞けよ」
「月光」とロッキードP‐38「ライトニング」双発双胴戦闘機が闘ったら、どっちが勝ちますかね?」
「それりゃ「月光」が勝つだろう」(きっぱり)
「えー、そうですかねぇー」
「あれー、お前疑ってるなー。「月光」てのは夜間戦闘機に正式採用された時の命名で、本当は十三試双発陸上戦闘機ってえんだ。そいでもって、そいつの試作機と零戦が模擬空中戦をやった訳だ。3、4旋回で零戦が後ろについた。当然だぁな、旋回戦では世界最強の零戦が勝つに決まってらー」
「そうですね」
「ところがな、地上に降りたパイロットの小福田少佐は、零戦が後ろについた時、先に旋回銃で撃墜したと豪語したんだ」
「えー、そんな馬鹿な?!」
「だって、7.7ミリの連装動力銃座が二つもあるんだ、弾が当たゃ勝つだろ」
「そんなー」
「だから、相手は旋回性能の悪いメザシ(筆者注:この場合P‐38の事。判らない人は自分で確認してね)だろ、自動失速防止装置つきで空戦に強い「月光」の勝ちよ」
「なんですかそれ」
「翼端スロットとフラップが空戦や着陸するときに自動で出てきて失速しないようになるやつよ」
「だから前に居りゃ前方銃で、後ろに居れば動力銃座で、ついでに旋回中には斜め銃でも附けて藪睨みで撃ちゃぁ怖いものは無いな。ガッハハハ!!」
「・・・」(呆然)
「まあ、これは横方向の空戦の話で、縦方向だと話は別だぜ」
「どう云う訳ですか」
「なんせ、速度差があり過ぎだろー。月光は504㌔、P‐38はL型だと667㌔だ。つまり差が160㌔以上もある」
「その上、パワーがないから上昇力は劣る訳だろう、それじゃ縦方向では負けだよ。きれいにループを描けない、まあ、この速度差は決定的だな」
「はあ」
「つまり、相手が横方向の巴戦に乗ってこねえ限り、勝負にならねぇ訳よ。たとえ、後ろを取っても速度差が有り過ぎるから、すぐ離されちまう」
「じゃあ、月光の負けじゃないですか?」
「まあな。そこで、月光の「栄」21型発動機を別の馬力のある発動機に換装するんだ。なにせ、「月光」は重量が6㌧以上あるからな!(P‐38Lは8㌧近くもあるのだが・・・)馬力が必要だ」
「エンジン換えるんですか?」
「おうよ。じゃあ、発動機を何にするのか? 「誉」では面白くない。なんでもかんでも発動機を「誉」にして海軍は痛い目にあっているからな。「国敗れて銀河あり」とか、「紫電」や「烈風」なんて使えない戦闘機もあったなー」
「そうですねー」
「そこで、P‐38に対抗して同じ液冷発動機「熱田」に換装するという愚挙に出るのだ。その上、冷却用ラジエーターをスピットファイアのグリフォンのように翼面につける。これでかなり空気抵抗も減り、速度アップが図れる。何?、発動機重すぎやしないかって?。まあ、良いだろう。堅い事は言うなよ。当然、何の役にも立たない動力銃座は取っちまう。そして、複座ではなく単座にする。それから、突出型の風防は止めて、機首に操縦席を持ってきて、陸軍の百式司令部偵察機Ⅲ型のような形にするんだ。これでかなり機体を軽くできるだろう」
「はあ~、でも「熱田」じゃ、「誉」より稼働率が低いんじゃないですか?」
「ほう、お前は「誉」にするのかぇ?それじゃ「銀河」と同じじゃねえか?駄目だよ、それじゃぁー。「熱田」は前面投影面積が小さいだろー。それだけ空気抵抗が減って良いんだよ。まあ、俺の無責任で何の根拠も無い算定では、これで650㌔出せる!。どうだ、これだけ出せりゃ、何とか戦えるだろう」
「そうかなー、大丈夫ですかね~?」
「お前、以外と疑い深いなー。そうか、それじゃー、まだ有るぞ!武装は操縦席の下から20㍉機銃2丁と13㍉4丁が甲、13㍉機銃8丁が乙、または7.7ミリ機銃16丁が丙の各型がある。すべて銃口が機首より飛び出すようなかたちとなる。凄いだろ!凶悪だぞー。うーんオドロオドロしい。しかし、かなりのトップヘビーとなるなー」
「そんなに機銃を積むんですか?」
「お前、丙型なんてロールを打ちながら機銃を発射すると巨大なバルカン砲になるではないか!!弾はどう積んでるかや、照準は?なんて野暮なことは考えちゃ駄目だぜ」
「その上、弾丸は全部曵痕弾にするんだ。凄いだろうー、火の玉みたいに弾が飛んでくぞ!」
「もう、無茶苦茶ですね~」
「そうかー?。だってお前、何百発って火の玉が自分に向かって飛んでくるんだよー。ビックリして逃げてくだろー」
「それじゃ、勝った事に成らないじゃないですか?」
「良いじゃねーか!誰も死ななくて!!」
「う~ん、聞くんじゃなかった・・・」
「殺し合いなんか止めて、戦争ってもんを、如何に相手をビックリさせるか、で勝敗決めりゃいいんだけどなー」(と、遠くを見つめる)
「でも、本当にそうですねー。それならTさんは強いでしょうねー」
「馬鹿野郎!!強いってもんじゃねーよ。世界最強よ!世界中の連中をいくらでも驚かしてやるぜ!!」
「・・・」(再び、呆然)