ファンの間で話題になっている「SMAPと、とあるファンの物語(乗田 綾子著・双葉社)」を読み終えました。読んでよかったなと思います。もともとルポやドキュメンタリーを読むのが好きなのだけれど、自分がファンという事を抜きにしても、一つのアイドル史としてとても読み応えがありました。

SMAPって、ただ踊らされるアイドルではなく、最初から自分たち自身で考えて、自己プロデュースをしてきたイメージがあります。でもやっぱりそこには一つ一つきっかけがあり、そういう考えに至る流れがあって、メンバーがインタビューやラジオで語った言葉によってそれが浮かび上がってくるのが興味深い。

 

私がSMAPメンバーのラジオを聞きはじめたのは去年の秋も過ぎた頃で、ほぼSMAPの楽しい話は聞けていなかったので、彼らはこんなに自分たちのこと話してるんだ!と驚き。中居くんなんて、今のサムガのぐだぐだ話からは考えられない(笑)

長年続けてきたことで、ラジオが生きた資料としてすごく重要な役割を担っているなあ、と。


彼らが語った言葉がすべて正直な発言だったかはわかりません。ラジオはともかく、雑誌のインタビューなどは特に。それでも、この本では丹念に資料をあたって全発言の根拠を示し、限りなく真実に近いSMAPの姿を映し出していると思います。

断片的には覚えていても、時系列で改めて追うことでようやく腑に落ちたこともありました。木村君の結婚があっての吾郎ちゃんの事件なのね、とか。舞台・聖闘士星矢での爆睡エピや、森君脱退のときの札幌脱出事件の話などは知ってはいたものの、具体的な描写で初めて読んで、なるほどーこうだったのね!と。文章も読みやすくて、すごくおもしろかったです。

著者の乗田さんの人生を重ね合わせているけれど、それはあくまで別のシートを上からのせたような重ね方で、決してアイドルである彼らを主観でどうこう語るような内容ではないところに好感が持てたし、生活の変化に戸惑ったり傷ついたりする彼女自身にも感情移入してしまったり。アイドルって思い入れのある時期の濃淡がどうしてもあると思うけど、著者の記述はご自身の幼少時から始まって現在に至るまで満遍なく網羅しています。そして30年近くもの間、1冊の本で語れるだけの分量の活動をコンスタントに積み重ねてきたSMAPも、改めてすごい。


こうやって活動の歴史や社会的背景を振り返りつつ、まとめて読んでみると、SMAPって「いかに続けていくか」が30年近くもの間、常に至上命題としてあったように思えるのです。そしてたぶん、それは5人の中で今も続いている。メンバーがバラバラになることに、多くのファンが違和感を感じて当然のように思えます。

 

読み終えて感じたことは、コンサートに行ったことはないけれど、私もずっとSMAPが好きだったなということ。そして、数々の試練を自分たち自身の力で乗り越えてきたSMAPのことだから、メンバーの5(6)人には輝く未来がまたきっと来る、ということ。その時にはまた、彼らの進む道に、無数のファンの人生が重なっていくのだと思います。