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🚃 ③不可解な長屋と見落としていた古民家 

 

 

 

 

 

王子駅を降りて飛鳥山に沿った坂道を登ると……

 

都電が一般道路を自動車と並走するという、かつては東京じゅうで見られた光景だが、今となってはそれを見ることができる都内で唯一の地点に出る

 

 

 

 

 

 

 

 

(前回の散策、2017年撮影)

 

 

要するにこんな感じで、王子駅から飛鳥山の前を直角に曲がる場所までは、都電が一般道路上を走っているわけだ

 

 

坂道を登ったところは本郷通りで、南東の方向にゆくとすぐに有名な古河庭園があり、その先に前シリーズで散策した「しもふり銀座」の入り口がある

 

僕はその本郷通りをわたり路地に入って「東京歯科衛生専門学校」の向かい側にある2棟の戦前物件の無事を確認した

 

 

といっても、地元民以外には“ちんぷんかんぷん”だと思うので地図で説明する

 

 

 

 

 

 

 

 

2棟の戦前物件があったのは地図の左上、「東京歯科衛生専門学校(TDH)」の斜め前で、この路地はやや広い通りとV字に交わっている

 

東京歯科衛生専門学校の路地がV字に交わっている地点のすぐ上に「田村豆腐店」という豆腐屋があるが、そのすぐ隣には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見るからに老舗の佇まいを見せるクリーニング店があった

 

前回の記事で、このあたりは首都高速中央環状線に分断されてしまう以前は、前シリーズで発見した「馬場商店街」と繋がるようなかたちの商業地区だったと推測したが、豆腐屋、クリーニング店があったことから、その推測は確信に変わった

 

 

このクリーニング店の隣には、やはり以前は商家、もしくは家内制手工業の町工場だったような妻入のモルタル外壁の建物があり、その建物の隣には

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな古民家が残っている。この古民家も6年ほど前に散策したときに発見した物件であるが、広い通りに面しているため解体されてしまっているかと思っていたが、無事な姿を見て胸を撫で下ろす

 

 

この物件は一見、下町でよく見かけるような平入切妻のごく平凡な建物に見えるが、よく見ると少しばかり不可解な構造であることに気がつく

 

どこが不可解なのか、おわかりになっただろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物の玄関をよく見てほしい。このような長屋形式の住宅は、下町ではポピュラーな仕様であるが、この物件、向かって左側の部分だけ玄関が左にオフセットされているのだ

 

と、ここまではとくに不可解ではないが、驚いたことに、よく観察してみると左側と同じように右側の建物の玄関も左にオフセットされて、それが左側に食い込むかたちになっているではないか

 

 

これを見た瞬間「んんんっ???」と、疑問符が脳内を乱舞した

 

ちょっと待て。て、ことは左の建物は、この右側の建物の玄関のぶんだけ屋内が狭くなっているのか?

 

 

あまりにも不可解なので、しばらくまじまじと観察したら、二軒長屋の真ん中には若干のデッドスペースがあることに気がついた

 

そのことから類推すると、おそらく玄関を入ったところには、タタキと框があり、その脇に2階に上がるための階段が設えられているのではないだろうか?

 

 

つまり左側の玄関がオフセットされているのは、その玄関スペースをかせぐためで、右側はデッドスペースの部分が、階段になっているのではないか?

 

--と、僕は推理したが、こればかりは屋内に入ってみないと解答は得られず、どういう構造になっているのか、できれば内部を見学してみたいものだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「東京歯科衛生専門学校」と前回の2棟の戦前物件は、V字の左側の細い路地裏にあったが、こちらの長屋はV字の右側の広い通りに面している

 

こういった不自然に広い道路は、たいてい近年になって拡幅されたものがほとんどで、町並みを破壊する最大の元凶である

 

 

道路のこちら側に戦前物件があったということは、拡幅によって反対側の建物は立ち退かされたのか?

 

そういえば、反対側には古い建物が見当たらない。しかし、念のため過去のストリートビューで道路の反対側をチェックしてみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

驚いたことに、僕が前回の散策をする直前まで、こんな素晴らしいブリキ波板の錆び錆び看板建築が残っていたことが判明した

 

残念ながらこの建物は、2015年頃に解体されて、現在はどうでもいい建物に建て替えられてしまっている

 

 

戦後になってからの建造物だとは思うが、建築様式からして昭和40年代以降の建造ということは、まずあるまい。ということは、この広い道路はかなり古い時代に拡幅されたのだろう

 

したがって、他にも古い建物があるのではないかと考えて、こちら側の路地裏もチェックしてみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、やっぱりあった。こういった凝った造りの平屋建て住宅は、間違っても昭和中期以降などということはあるまい

 

この古民家から少し路地裏に入ったところにも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな素敵な平屋建て住宅が残っていた

 

それにしても見事な様式美の建物で、窓の格子から手前にある柵、植栽まで一部の隙もなく一定の美意識によって統一されている

 

今どきの出来損ないの玩具のようなサイディングボードの住宅には、逆立ちしても出来ない芸当である

 

 

 

 

 

 

 

 

2棟の古民家と住居仕様に改装された看板建築「東京歯科衛生専門学校」のある路地と広い道路が交わる地点には、いかにも古そうな道祖神のようなものが祀られていた

 

これで僕が直感的に感じた「江戸時代から続いている古道」というのが的中していたことが判明した

 

 

 

 

 

 

 

 

オレンジの「←」が西ヶ原四丁目の電停、紫の「←」が辻の場所。まだ滝野川区があった終戦直後の地図を見ても、この辻はしっかり記載されている

 

興味深いのは明治通りはその名のとおり明治時代に敷設された新道なので、この時代からかなり広い道路であることがわかるのと、当時は白山通りと本郷通りにも都電が走っていることであろう

 

 

この先はGoogleマップからキャプチャした地図にあるように、道路の右側には広大な敷地面積の天理教会があるため、とくに見るべきものはないが、都電の西ヶ原四丁目電停の手前を右に曲がったところにも……

 

 

 

 

 

 

 

 

モルタルが葺かれてしまっていて、わかりにくいけれど出桁造り商家が2棟並んで残っていた

 

この場所は、前回(7年前)の散策のときには、今回とは反対方向からアプローチしたため、この物件は振り向かねば見えない死角にあったので、完全に見逃していた

 

 

以前、一度は通過したことがある場所で、新たに物件を発見する。こんな素敵な出来事があるから、行き当たりばったりのテキトーな散策はやめられない

 

ということで次回は、この建物を観察したあと、いよいよ本丸である迷宮のような滝野川の核心部に向かうのだが、その前にちょっと寄り道をして、ある物件の無事を確認しにゆくが、思わぬ事態に直面することになる

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

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