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🐮 ⑨京成関屋と牛田の微妙な関係
ほとんど誰も歩いていない地味な住宅街を抜けると、いきなり無数の車が行き交い、背後にタワーマンションが聳える大都会の風景に変わった
こんな唐突に風景のテイストが変化してしまうのは、オリンピックに便乗した再開発だらけの東京ならではの光景であろう
あまりの変化の激しさに、一瞬、自分がどこにいるのか認識できなくなり、思わずGoogleマップを開くと墨堤通りの反対側のセブンイレブンの奥に駅があるようだ
大きな交差点の信号をわたり、セブンイレブンの裏手を右に曲がる
すると、東武か京成かどっちなのかよくわからない高架線のガードがあり（京成だったようだ）、いくらも行かないうちに、なんとなく店が並ぶ商店街のような雰囲気になってきた
が、商店街の入り口には、営業しているような店は見当たらず、最初に目に入った現役っぽい店は「笑いち」という居酒屋だったが、クソ馬鹿ばかしい例の緊急なんちゃらの影響で、休業中といった雰囲気である
休業中のような居酒屋の手前には、東京の下町ではお馴染みになってしまった、建物を解体した跡地の駐車場があったけれど、その反対側は……
今、まさに、建物が取り壊されている真っ最中で
この感じだと残された「笑いち」も取り壊して、マンションでも建てるのかもしれない
その先からようやく営業している店が並びはじめるが、やはり閉まった店が多いような印象を受けた
この地味な商店街のようなものがはじまると、そのすぐ先に東武線と京成線の駅があるのだが、その関係が他では見られないユニークというか、おかしなことになっている
地図を見ればわかるように京成関屋の駅と牛田駅は、わずかな距離で向かい合っているのにも関わらず、連絡していないばかりか駅名が違うのだ
乗り換えに５分以上歩かされる武蔵小杉だって同じ駅名なのに、徒歩40秒程度しか離れていないのに、それぞれが違う駅名を主張しているのは、なんとも奇妙な光景である
京成関屋の駅は僕が歩いてきた商店街の通りから、家２軒ぶんほど引っ込んだ位置にあるのが不可解だ
この立ち位置からファミリーマートをパンするように左にカメラを向けると……
そこには牛田駅の改札口が！ この程度の距離ならば同じ駅名にして連絡通路で繋いだほうが、何倍も便利だろうに、なぜかそうならない
調べてみると、これは昭和のはじめ頃、当時の東京の中心地だった浅草に起点の駅を設置するため、東武と京成が路線を巡って対立していた名残で、つまり単なる意地の張り合いが百年近く続いているという、じつに馬鹿らしい理由のようだ
この鉄道会社の対立というのはよくある話で東急と国鉄などは、交差する場所でどちらが避けるのか、お互いに一歩も譲らず、開業した当時、南武線と東横線が武蔵小杉で平面交差していたのは有名なエピソードだ
そういえば町田駅という名称も昔は小田急だけで、JR、というか国鉄は原町田という駅名だったり、武蔵野線は西武池袋線と交差しているところから、わざわざ離れた場所に駅を設置している
もっともこの武蔵野線と西武池袋線が離れているおかげで、秋津と新秋津を結ぶ商店街は成り立っているので、商店街としては現状維持が望ましいのだろうが、こちらの京成関屋と牛田の場合は……
ご覧のようにとくに商店街が盛り上がっているわけではなく、乗り換えにかかる時間は一瞬なので、店に立ち寄るひとも少ないだろうし、あまり駅名を別にしているメリットがない
ということは、やはり百年前のいがみ合いが、今も後を引くという、じつに馬鹿らしい理由が真相のような気がする
などと、向かい合っているのに違う駅名という不思議に時間を取られてしまったが、次回はいよいよ北千住に最後に残された未踏の地に突入するけれど……
じつは、そのあたりの町にはあまり期待しておらず、本命は千住柳原だったりしたのだが、思わぬ物件を発見することになる
続く
†PIAS†
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