ベルギーでの仕事がなくなって、ぼおっとしている。
朝は10時に起きる。
コーヒーを沸かすためのお湯のスイッチを入れて、
カサブランカの雄しべを切る。
そして匂いを嗅ぐ。
コーヒーをゆっくり淹れる。
寒いなぁとおもう。
好きだ好きだと男が書いてきた長い文章をもう一度見る。
中原中也の詩を読む。
黒田三郎、金子光晴、茨城のり子を読む。

詩とは命だ。

涙はらはら溢れる。

もう一度男からの恋文を読み、捨てる。

私は私でいることが好きだ。
人を好きでいることも好きだ。
それなのに人に好かれることはとても疲れる。

こんな干からびたような私でも
好きだなんてありがたい。
ほんとうにありがたいのだ。


女はみな結婚をしたくて
焦っているという話が皆好きだ。
結婚に焦ったふりをするのは、ここだけの話だがとても便利なので
つい私も薄っぺらい会話をしてしまう。
老後の貯金も家も家庭もないし、子供だってもう産めない歳になりつつあるのに、
自由で、楽しくて好きなように生きているというのは、変だ、不幸じゃないなんて変だ。
不幸じゃないなんて、あなただめよ。
あなたは不幸なのに気づいてないだけ、と言いたげな人もいて
それならばと、張り切って不幸ですよー、としょぼしょぼしてみたりする。

その、世の中でいう不幸を背負って生きていく方が、私には生きやすいのだと思う。

私を好きだという人。
ごめんなさい。

私はだめなやつなんですよ。ほっといていて欲しいんです。
私をほんとうに好きならばほっといて欲しいんです。
勝手にどっかで思っていてください。
と、書く。

私とは結婚不適合者なんですから。いまのところ。



ほんとうに暗い穴の方に向かってどんどん進みたいような気がする。



それは音楽のもっと先なのかもしれないし
人間のもっと先なのかもしれない。

もしかしたらただのぽっかりした虫歯の穴の中と気付かずに

穴を掘り続けているだけなのかもしれないけれど。

光を見つけに行く。行くんだ。

そこは母がいる場所だと信じて。