よろこびの歌 / 宮下奈都 | 趣味は読書です

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ひたすら読んだ本たちの記録

よろこびの歌 (実業之日本社文庫)/実業之日本社
¥価格不明
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著名なヴァイオリニストの娘で

声楽を志す御木元玲は、

音大附属高校の受験に失敗、

新設女子高の普通科に進む。

挫折感から同級生との交わりを拒み、

母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。

しかし、校内合唱コンクールを機に、

頑なだった玲の心に変化が生まれる――。

見えない未来に惑う少女たちが、

歌をきっかけに心を通わせ、成長する姿を

美しく紡ぎ出した傑作。






スコーレNo.4 」で、おおっ!と思った、

宮下奈都さんをまた読んでみました!

今回もめっちゃよかったです。

なぜか、すごく共感できるんですよね。

特に、玲の受験失敗からの新天地で、という境遇に

個人的にぐっときてしまいました。

瀬尾まいこさんとかが描く中学生の物語が大好きですが、

高校生の物語は、中学生のものとはまた違った

良さがありますね。

後は、誰だってそれぞれの事情を抱えていて・・

みんな自分なりに生きてるんだ、

という考え方が大好きです。

なので、こことかぐっときました。


「あきれているはずなのに、胸がじんとしている。

千夏の素直なパワーはどこから来るんだろう。

もしかして、この子にはぐるぐるはないんだろうか。

いや、と私はブレーキを踏む。

たぶん、ぐるぐるのない人なんていない。

それを忘れちゃいけない。

ぐるぐるぐるぐる、きっと悩んでいる。

楽譜が読めないというのがほんとうだとしたら、

ずいぶん勇気が要ったことだろう。

同級生に初歩から歌を習うなんて。

これから合唱部に入ろうなんて。

そういう気持ち、すごいと思う。」


「ただ自分の志望校ではなかったというだけで、

高校を否定し、自分のいる現在を否定し、

そうして未来も否定していたのだと思う。

クラスメイトたちがどんな思いでこの高校を選んだのか

考えることもなかった。

みんな、選んでここへ来た。私も明泉を選んで入学した。

今となってはそうとしか思えない。

私はこの高校を選んだのだ。

そして運良く私もこの高校に選ばれた。

よくぞこんな私を選んでくれたものだ。

あのままだったら――もしも

明泉に来ていなかったら――駄目になっていただろう。

自己憐憫の塊で、母を恨み、

自分を理解しなかった音大附属高校の先生を恨み、

それってつまりすべてを人のせいにして、

見くびっていたってことだ。

歌も、音楽も、そして自分の人生も。」


後は、カレーうどんのくだりが好きでした。

「こつこつと仕事をすることに誇りを持つ人ほど

強い人はいないと思う。」

って最強の一文でしょ。


宮下さんは、

本屋大賞をとった「羊と鋼の森 」もそうですが

音楽系の物語が得意ですよね。

こんな文もありましたよ。

「音楽家ってしあわせな職業だ。

人生にひとつも無駄なところがない。

つらかったことも、悲しかったりさびしかったりしたことも、

人を恨んだことさえも、みんな血肉になる。

いいところも、悪いところも、私は私で、

私から生まれる音楽はどう転んでも私の音楽だ。

立派なところだけじゃなく、駄目なところも含めて、

どう生きてきたか、どう生きていくか。」


この本、続編があります!

終わらない歌 」です。

何と、玲や千夏が20歳になっているようです。

楽しみ!




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