振り返らなくても

姿が見えなくても

声を聞かなくたって

おかぁさんだ♪

すぐわかる

 

夕方になって

辺りが暗くなりはじめる頃

お風呂を浴びた母


浴衣の襟をちょっとだけ抜いて

手うちわをしながら

素足で部屋に入って来る

 

「気持ち良いわよ…入ったら?」

私に声をかける

 

襟足にシッカロールの白

母のうなじのきめ細やかさ

 

ふわぁ~と漂う香り

この香りが好きだった

 

オシロイバナの咲くころになると

あでやかな装いをしていなくても

特別なことは何もしていなくても

 

幼い私のこころに

何か特別な感情が湧いて来たのを

懐かしく思い出します

 

遠くて近い私の思い出