チャイコフスキーの初めての交響曲は、
1866年に作曲されました。
演奏時間は約45分に及ぶ堂々たる風格を備えた
雄大な作品となっています。
第4番~第6番の三大交響曲には
旋律の印象で一歩を譲りますが、
なかなか素晴らしい交響曲です。

第1楽章に「冬の日の幻想」という副題が付されているので
しばしば交響曲第1番「冬の日の幻想」と呼ばれますが、
正式には単純に交響曲第1番で良いようです。

1866年と67年に行われた部分的な初演は
不評だったらしいですが、1868年に行われた
全曲初演は大成功を収めたそうです。

その後、1874年に改訂がなされ(第3稿)、
今日ではその版が使用されています。


###チャイコフスキー/交響曲第1番 ト短調 作品13###

第一楽章は、ソナタ形式です。
「冬の日の幻想」という副題ご添えられています。
淡々と始まる第一主題がやがてヴォルテージを上げて、
クライマックスに到達した後に柔らかな第二主題に移行する
音楽の運びには、既に三大交響曲に向けての萌芽が見られます。
第一主題の主要動機を執拗に反復使用して
展開部や終結部の発展的な楽想を紡いでいるところに、
実はこの作曲家が構造的であることの一端が示されています。

第二楽章は、緩徐楽章です。
「陰気な土地、霧の土地」という副題が添えられています。
弦による哀愁漂う序奏の後、ABABAと
二つの主題が交代するロンド形式的な構成の主要部が続き、
最後にコーダで結ばれます。
主要主題(A)は、1回目がオーボエ、2回目がチェロ、
3回目がホルンで、高らかに歌われます。
チャイコフスキーのメロディー・メイカーとしての
面目躍如といった楽章です。

第三楽章は、トリオを持つ(複合)三部形式による
スケルツォ楽章です。
チャイコフスキーらしい、ロシア風のワルツが
スケルツォ楽章に顔を出すという特徴が、
早くもこの作品でも認められます。
お聴きになってお判りのように、
トリオ(中間部)がワルツになっています。
コーダでもその楽想が回帰します。

第四楽章は、幾分長い序奏を持つ
ソナタ形式による終楽章です。
ロシア南部のカザン地方(タタール地方)の民謡に基づく
哀愁を帯びた旋律が奏でられた後、
次第にヴォルテージを上げて第一主題が高らかに歌われます。
その後直ちにフーガ的な発展も交えて、
第一主題が展開的に扱われるあたりも、
チャイコフスキーが構造的な作曲家であることを
如実に物語っています。
第二主題は序奏を行進曲調に変奏したものです。
序奏の楽想から始まる展開部は、
やがて第一主題の動機を中心に発展を見せて
クライマックスに昇り詰めたところで
そのまま再現部に突入します。
このダイナミックなドライヴは、
その後のチャイコフスキーのソナタ形式の扱い、
特に終楽章での扱いの典型として定着していきます。
第二主題はかなり圧縮された再現部を終えた後、
序奏の楽想が回帰して一旦落ち着いた音楽から
再びヴォルテージを上げて壮大な結尾に向かっていく
終結部は、聴き応え充分で正に圧巻です。

YouTube / Tchaikovsky :
Symphony No. 1 in G minor, Op.13 " Winter Dreams "
Bernard Haitink
Royal Concertgebouw Orchestra

I
滾々と湧き出てくる情緒豊かな旋律の数々に
聴き惚れてしまうことになるチャイコフスキーの音楽ですが、
じっくり聴き込むと、動機の展開やソナタ形式の構成に
細心の注意と創意が盛り込まれていて、
実は構造的な作曲家であることが
理解していただけることと思います。

私の仕事場のライブラリーには、このCDが在ります。

チャイコフスキー/交響曲第1番(冬の日の幻想)
         スラブ行進曲
ミハイル・プレトニョフ指揮
ロシア・ナショナル管弦楽団
PENTATONE / PTC 5186381

チャイコフスキー/交響曲第1番CD