ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ
(Dmitrii Dmitrievich Shostakovich / 1906-1975)の
交響曲(全15曲)を、今日から探訪していきます。

CD:ショスタコーヴィチ/交響曲第1番&15番
ウラディーミル・フェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団
Pony Canyon / POCL-00351
ショスタコーヴィチ交響曲第1&15番

一昨日にもアップしたこの写真のCDに収録されている、
ショスタコーヴィチの出世作となった<交響曲第1番>は、
レニングラード音楽院の卒業制作として作曲された作品です。

注)レニングラードは、現在のサンクトペテルブルグです。

初演は、1926年5月12日にレニングラードで、
ニコライ・マルコの指揮による
レニングラード・フィルハーモニー交響楽団によって行われ、
聴衆の熱狂的な反応を得た大成功を収めました。
「現代のモーツァルト」と喧伝され、
当時レニングラードに客演していたブルーノ・ワルターは、
1927年5月5日にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して
この交響曲の国外初演を行いました。
その他、オットー・クレンペラー、アルトゥーロ・トスカニーニ、
レオポルド・ストコフスキー、アルバン・ベルクからも賞賛され、
西側への紹介が度々行われ、弱冠19歳にして
国際音楽界に衝撃的なデビューを果たすことになったのでした。

###<交響曲第1番 ヘ短調 作品10>###

[第1楽章]
序奏をともなうソナタ形式で構成されています。
行進曲調が明確になったところからが第1主題で、
ソナタ形式主部に入っていきます。
第2主題は、ロシア風のワルツです。
ワルツの多用は、チャイコフスキー以来の
ロシアのシンフォニストの伝統的な嗜好と言えるでしょう。
規模はそれ程大きくはありませんが、
展開部後半や終結部のクライマックスへの驀進に、
後年の大作の片鱗を聴くことができます。
若くして既に十全にソナタ形式を使いこなしている
堂々たる冒頭楽章です。

YouTube / Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor
             - Part 1/4


[第2楽章]
小粒でもピリリと辛いパンチの利いたスケルツォです。
トリオがロシア民謡調の弱奏であるところが独創的です。
私見ですが、ベートーヴェン、ブルックナー、そして
ショスタコーヴィチが、三大スケルツォ作曲家だと思います。
早くも、この第1番で、
スケルツォらしいスケルツォが誕生しています。

YouTube / Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor
             - Part 2/4


[第3楽章]
この作曲家の重要な持ち味になっていく冷徹な緩徐楽章の
雛形が、早くもこの最初の交響曲で顔を現わしています。
ワーグナー作品からの引用や影響が色濃く反映されている
主要主題部分と、葬送行進曲調の昼間部から構成される
(複合)三部形式による緩徐楽章です。

YouTube / Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor
             - Part 3/4


[第4楽章]
ソナタ形式を応用した独自性の高い構成による
フィナーレと考えてよいでしょう。
悲痛な楽想による序奏から始まり、
やがて前進的な第1主題に入り、
一気にヴォルテージを上げていきます。
この辺りの筆致は、若くして既に確かなものです。
第2主題は一転して叙情的です。
また、この辺りで鮮明に聴くことができる
ピアノを効果的に使用するオーケストレーションは、
交響曲の歴史の中では珍しいもので、この作曲家独特のものです。
そして音楽は痛切なクライマックスの到達しますが、
突然進行を止めます。そして、哀歌のような変容部が始り、
やがて第1主題と第2主題を活用したクライマックスを
全曲の結尾としています。
この終盤の部分は、ソナタ形式の通常とは異なるものの
デフォルメした再現部に相当する部分と
解釈することもできるでしょう。

YouTube / Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor
             - Part 4/4


弱冠19歳にして、ベートーヴェン、シューマン、
ブラームス、チャイコフスキー、マーラー、
シベリウス、プロコフィエフ、等の先達の交響曲第1番に
勝るとも劣らない作品を発表したショスタコーヴィチは、
やはり只者ではなかったのです。