「本当にすみませんでした」
 涼太が目の前で石のようにかたまり、土下座して謝っている。

 俺のマンションからモノを盗んだのは、これで二度目。
 前回は、脅したり、なだめたり、とにかくモノは返してもらったが、今回は人のモノを勝手に売って現金化している。悪質だ!

 前回の事件が起こったとき

 「もう二度としない」と涼太は誓ったはずなのに。

 この土下座は真実、心から謝罪しているのか、それとも演技なのか俺にはわからない……。

 涼太の気持ちがわからない。

 「キャバ嬢が客からプレゼントでもらったブランド品を質屋に売るのと、人のモノを盗み質屋に売るのは、どちらも気持ちを踏みにじっているのは同じ。ただ後者は犯罪だ!」
 俺は涼太に言ったが、こいつは理解できてるんだろうか? 新宿歌舞伎町でホストをやったこともあるというから区別はつくと思うんだが。

 俺の知り合いの財布から金を抜き取ったことも聞いている。涼太は18歳で家出してから、そうやってこれまで生きてきたんだろう。ただ、こいつも20歳。周りも甘くは見てくれない。これがエスカレートすれば、本当の犯罪者になるだろう。いつか実名でニュースに流れ涼太の両親やきょうだいにも迷惑をかけてしまうかもしれない。

 「涼太、もういい。顔を上げてくれ」
 土下座する涼太を引き起こそうとしたが、頑として動かない。その姿を見ていると、何だか俺も涙が頬を伝わってくる。

 俺が悲しいのは、すでに涼太と決別することを決めたからだ。俺の心は傷ついている。
 そして俺には涼太が持っている心の闇がわからない。涼太の心の闇をこじ開けていく自信がない。

 とにかく涼太の両親には、この出来事を報告する必要があるだろう。本人もそれを恐れている。涼太の将来を考えると、ここでペナルティーが必要だ。

 俺はうずくまる涼太を力ずくで引き起こし、座らせた。


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