ファイテンルームスタッフブログ

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ハリウッド映画の中で、旅から帰ってきた住人が家のなかで最初にする事として、家具にかぶせられた白い布を取っていくシーンを見た事がある方も多いのではないでしょうか。


その白い布は、家具にホコリがつかないための予防策ということはお分かりと思います。


では、「旅に出なければホコリは家具に落ちないのか?」というと、人がいるのといないのとではホコリの落ちる量は圧倒的に違いが出ます。


これが空気のなせる技です。


空気には重さがあります。

1リットルあたり1.293g


これと比較しやすいのは水の重さです。

1リットルあたり1000g


ちなみに水の中で手を動かすと、かなりの抵抗があります。

その抵抗に負けずにがんばると、小さな渦が出来て、泳ぐための推進力になったりします。


ということは、私たちは生活の中で無意識のうちに、水に対して1.293/1000の微弱な力で空気を動かしている…という事になります。


密閉された空間(部屋)では、実はこの人間動作の威力は凄まじく、狭い廊下を歩いていると突き当たりのドアがいきなり閉じた、などの記憶がある方もいらっしゃると思います。


私たちのほんの小さな仕草で、部屋の空気はダイナミックに動きます。


例えば、ヘリウムガスの風船を家に一つ飛ばしておくとします。


その風船は朝、出かけた場所と帰ってきた場所とでは、まったく違う部屋に居る事が時々あります。


これは日差しが当たる事による気温の変化…

人の動いた名残…

玄関の扉を閉めた時の圧力…


これらなどで生まれた空気の流れが、風船を運んでいく事例です。


皆さんももし良ければ、試しに風船を飛ばしてみてください。


これはある意味、強制対流の一種といえます。


ブロアーなどの電気仕掛けほどではありませんが、人が存在するだけで空気は動き続けます。

呼吸だけでも効果があります。


日本では昔から、「人の住んでいない家は空気が死ぬから長持ちしない。」などと表現される事があります。


人が住み、生活を営む事が、もっとも合理的な換気システムであることの良い表現だと思います。


ちなみに私が室内に風船を飛ばすきっかけになった書籍があります。


「空気の発見」三宅泰雄著


若い頃、学校をサボって読みふけた本です。


子供の化学書として書かれたものですが、いまだに私の室内環境学の知識は、この本レベルから卒業できていません。

ティファニーのエントランスでは、路面沿いに必ず小さな正方形ディスプレイショーケースが並んでいて、それがティファニーブティックの象徴となっています。


その存在は、マーケティングとしては「のぞきみ効果」を思い存分発揮していますし、ブランディングとしては、その小さな穴があのエメラルドブルーのパッケージと同じくらいに社員や顧客に愛されています。


ブティックを訪れた顧客の大半は、ショーケースがどのように並んでいたかより、どんな椅子に座っていたかより、この小さな穴が最も記憶に残っている存在となっている事と思います。


インテリアとか建築などを記憶として残す時、東京都庁舎とか金閣寺とか外観の形が印象に残る場合と、茶室やデパートなど平面構成や空気感が記憶として残る場合などがあります。


そしてティファニーの小さなショーケースの存在は、記憶という点からは高層ビルと互角の勝負をする価値観があります。


実はこの小さな四角形と比較するとスケール的には全く違いますが、記憶に残る大きな四角形が日本にあります。


あくまで私個人の感想ですが…


日本には「借景」という文化があります。


日本の伝統建造物には窓がありません。

そのかわり柱と敷居、鴨居で枠取りされたスペースが必ず外部に向かってあります。


その枠組から見える風景を、よそ様の土地をお借りして風流な美を楽しむのが「借景」です。


これを取り入れている名建築は何度訪れても間取りの流れに興味を覚えないし、エントランスの構えも記憶に残りません。


ただただ、木材でできたフレームに囲まれた雄大な風景に、今でいう3D映画(風も感じますから4D)以上の醍醐味を記憶として刻まれます。


京都では円通寺が有名です。


都市化の流れの中、お借りしている比叡山の風景が美しさを維持できなくなってきています。


興味のある方は、早めに訪れられる事をお勧めします。

バロック時代と呼ばれる頃、絵画の世界で強烈な陰影をつけて、あるポイントだけに光を当てのたかの様に見せる技法が使われ始めます。→「バロック絵画」


「カラヴァッジョ」という画家が発明したとも言われています。


この絵画技法を美術館の解説などで見ると「スポットライト効果」と書かれたりしています。

(当時はキアロスクーロ技法と呼ばれていました。)


もちろん当時は、電気の発明まで数百年待たなければいけない時代でしたので、彼らは照明器具を知る事もなく、むろん名付けた訳でもなく、現代の批評家の誰かがまるでスポットライトに照らされているかの様な表現方法ということで、使いだしたであろう事は想像できます。


この技法を単なる観賞用で終わらせず、3次元の世界で表現したいと心底思い続けた人々がいました。


バロックの時代に光の強弱によって目立たせたい対象が、ドラマティックにアピールできる事を2次元の中で証明しました。


しかし、電気ランプの無い時代に、小さな穴から朝の光を当てる仕組みでは制約(時間、場所)が多すぎる…。


大量の蝋燭(ロウソク)を使っても物足りない。

そんな事を試行錯誤しながら、まったくの空想の光を…

新しい価値の伝達能力を…

具体化する試みを続けてきました。


その人々は商業を営む人たちでした。


バロックの時代から、産業革命をえて電気ランプが生まれるまで、みんな指をくわえて200年以上、待ち続けたことになります。


スポットライトが生まれ(電球に傘がついた程度ですが…)、ようやく商人の夢がかないました。


路に面した陽のあたる場所だけでしか、商いができなかった時代から、建物の奥でも商品が光り輝き、劇的に価値の伝達ができるようになりました。

もちろん、太陽が沈んだ夜でも。


その時から、大型商業施設が生まれます。

「ブライツライツシティ」と呼ばれる大商業都市によって、国家形体すら変わっていきます。


数百年前、バロック時代の画家が空想した技術を機械仕掛けで可能にした時代の流れは、その機械仕掛けによって今、バロック絵画を美術館で照らしています。


スポットライトは今では住宅でも使われ始めています。

大切な物、買ったばかりの絵などに光を当てる時、バロック画家の思いに浸ってみてはいかがでしょうか。