世界一周のクルージング。163万円。
ナガセはそのポスターに釘付けになる。勤めている工場の年間手取りとだいたい同じ金額だと気づき、これから1年間そのお金を貯めて世界一周をしようと決める。
パワハラで前職を辞めたあとしばらく働けなかったナガセは、現在、余計なことを考える時間を作らないように、働くことで時間を埋めている。
昼間は工場のラインで、夜は友人・ヨシカの経営するカフェで、そして週末は高齢者向けのパソコン教室で。
腕に『今がいちばんの働き盛り』と刺青をしようと本気で考えたり、世界一周を目指したり、何かしらそういうのがないと、心もとない収入と不安定な生活に押しつぶされそうになるのだ。
大学時代の友人・りつ子が娘を連れてナガセの家に居候したり、想定外の出来事が起きて、節約生活はなかなか計画通りには進まない中、1年が経って・・・
一気読み。
おもしろい、というと語弊があるけれど、私の好きな感じの小説なんだな。それぞれがいろんなことを抱えて、いろんなことを拠り所にして、その日その日を暮らしているということがシンプルに描かれているのがいい。
同時収録の「十二月の窓辺」のツガワは、ナガセなんだろうか。
それとも来週から工場に来る人がツガワなんだろうか。
私は好きだけれど、芥川賞受賞作品と知って「納得!」という感想はない。へぇぇ・・・としか思えない![]()
しばらく津村さんの作品を読んでいこう。
いい作家さんに出会えてよかった。