アメリカやらヨーロッパやらエイジアやらボストンやら、地名をそのままバンド名にしちゃったバンドは数多くいらっしゃいますが、今回取り上げるのはデビュー前にカンサス州を拠点に活動していたこの人たち。
その名もカンサス。もうちょっと他になかったものかカンサス。
さて、『Point Of Know Return』(邦題:暗黒への曳航)というアルバム。
自分が産まれる前の古い音楽を聴くようになって間もない頃に購入したやつですが、なぜこれを買おうと思ったのかは覚えておりません。ジャケ買いだったか、あるいはカンサスという歴史的バンドの情報くらいは持っていたかも。
しかしその内容の素晴らしさは死ぬまで忘れない、個人的永遠の名盤として生涯大事に持っておこうと決めているアルバムのひとつです。
まず目を奪うはジャケットの美しさ。
カンサスの音楽性と見事に調和する世界観。ひとつの絵画としても持っておきたいと思わせる想像力を掻き立てる理想的なデザイン。
そして今改めて思うのは知らずに聴いたらとてもアメリカ出身のバンドとは思わないであろうこと。
彼等のやっているプログレッシヴ・ロックというのは元々イギリスで生まれたもので、イエスやピンク・フロイドに代表されるような、知的で絵画的でどこか陰のある世界観を持つのが特徴なのですが、カンサスにしてもその幻想的な世界観だったりグルーヴよりもメロディに重点を置いているところなど、やはりイギリス産プログレの影響を大いに受けていることから、イギリスあるいは欧州のどっかしら出身っぽい感じがするのです。
とはいえヴォーカルのスティーヴ・ウォルシュの声質は音楽性とは裏腹に明るく突き抜けるような開放感があり、ストレートなパワー・ポップなんかも似合いそうで、そのあたりはアメリカ的と言えるかも知れません。
とにもかくにもこの『Point Of Know Return』。大ヒットした『Dust In The Wind』はじめ楽曲はどれもキャッチーでとっつきにくさもなく、またコンセプト・アルバムという名目ではないですがアルバム全体の統一感が凄まじく、タイトルやジャケットの通り壮大な海原を船に乗って旅しているかのような感覚を味わえる、ある意味ストレス社会に生きる現代の人々にはうってつけの現実逃避型の名盤です。
だから買っちゃいなよ。